テラデータがDWH最新版や流通向けテンプレートリリース2008年にはトヨタやKDDI、近鉄百貨店などの新規顧客を獲得

» 2009年03月06日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 日本テラデータは3月6日、プライベートイベント「Teradata Universe Tokyo 2009」を開催。報道関係者向けの説明会を実施し、米テラデータ 社長兼CEOのマイク・コーラー(Michael F. Koehler)氏などが同社の戦略などを語った。

SAS Institute Japanとの協業を発表〜客先への共同訪問も開始

コーラー氏写真 米テラデータ CEO マイク・コーラー氏

 米テラデータは2007年にNCRコーポレーションから分離独立し、再上場。2008年は再上場後最初の年だった。コーラー氏によると、2008年は「後半、経済的マイナス要因がありつつも順調に成長し、前年比4%増の17億6200万ドルの売り上げを達成した。テラデータの導入企業も着実に増えている」と総括した。業績内容は、米国が総収益における割合が56%で、粗利率は57%。アジアパシフィックは総収益の18%で粗利率は48%だった。製品別に見ると、ソフトウェアとハードウェアを足した製品カテゴリが48%で、コンサルティングサービスなど導入サービスが28%、保守サービスが24%だった。「導入・保守のサービス関連で50%を超えたことは大きい。これからもコンサルティング要因を増やすなどサービスを伸ばしていきたい。日本は2008年かなり成長し、いまや世界で2番目の市場となった」(コーラー氏)と説明した。

 業種別では、通信や旅行/運輸、小売など同社が従来から強かった分野に加えて、近年では金融や製造業にも力を入れているとした。今後の投資戦略としては、コンサルティングの拡充に加え、SAP、SAS、Oracle、IBMなどのパートナー企業との連携や、製品の拡充を図っていくという。

 一方、日本市場については、日本テラデータ 代表取締役社長 吉川幸彦氏が説明した。2008年は既存ユーザーからの追加受注に加え、トヨタ自動車やKDDI、近鉄百貨店などの新規受注も実現したという。既存ユーザーでは、みずほ銀行やりそな銀行、三越伊勢丹などから活発に受注したとした。その結果、4大銀行すべてと小売トップ50社中23社にまでユーザーを拡大させた。

 2009年の戦略方針としては、新ソリューションとして「Teradata 13.0」「Teradata Extreme Data Appliance 1550」「Retail Template」などを投入するほか、業種別ソリューション提供強化として、コンサルタントや営業を増員。SAS Institute Japanや野村総合研究所(NRI)との提携を強化する。SASとの提携では、2007年の発表以来開発を進め、現在ではTeradataデータベースエンジン内でSASの分析プロセスを直接稼動できるまでになった。これにより、データの分析スピードが向上したほか、データの移動時間も大幅に短縮できるという。「また、営業やマーケティング活動も共同で行う。営業では客先へ両社の営業マンが一緒に行くようにもなるだろう」(吉川氏)とした。

 NRIとの提携では、NRIのテキストマイニング「TRUE TELLER」をTeradata上で動かすという。Teradataと連携することで、従来ネックだった1000万件を超える大容量テキストマイニングも実現したという。また、Teradataの製品検証センターを2009年4月に開設。同社のデータウェアアプライアンスを設置し、ユーザーの実地検証だけでなく、SIerやパートナーにも提供するとした。

 コーラー氏は、「OracleやIBMなどとは競業関係でもあるが、協力関係でもある。当社はデータウェアハウスではリーダーなので、当社製品を追う製品を出してくるだろうが、それとは別にパートナーとして協力関係は深めていく。不景気下こそ、データを有効活用し、的確な分析が差別化要因となるため、当社にとっては非常にチャンスだ」とコメントした。

50ペタバイトまで対応可能なデータウェアアプライアンス

 テラデータは同日、「Teradata 13.0」「Teradata Extreme Data Appliance 1550」「Retail Template」の3製品を発表した。3月9日より販売を開始する。

 Teradata 13.0は、同社のデータウェアハウス最新版。クエリの実行プランを最適化することでTeradata 12.0と比較して最大30%パフォーマンスを向上した。また、ストレージを仮想化する「Teradata Virtual Storage」(TVS)を搭載したほか、位置情報などの地理空間データタイプである「ST_GEOMETRY」を新たにサポートしたという。

デモ画面 Retail Templateのデモ画面。Flashを利用しているので見やすい

 基本機能では、75項目以上の改善を行いパフォーマンスを改善。TVSは、搭載しているストレージを仮想化することで、従来はつながっているすべてのハードディスクを同じ容量にしなければならなかったが、異なった容量のハードディスクでも設置可能になった。

 また、ストレージのパフォーマンスを自動的に識別し、重要なデータほどパフォーマンスのよいストレージに保管する機能も持つという。さらに、ハードディスクのセクタパフォーマンスも自動判別し、データの格納先を最適化する。これは、通常ハードディスクは、外周ほど高速な読み書きが可能なので、重要なデータは外周セクタに保存し、内周にはそうではないデータを保存するといった具合だ。日本テラデータ マーケティング統括部 丹隆之氏によると「これにより、さまざまなデータをその重要度に応じたドライブに保存可能になる。使用頻度の高いデータはSSDに保存することも可能だ」とした。

 Teradata Extreme Data Appliance 1550は、大容量データ分析専用のデータウェアアプライアンス。50テラバイトから最大50ペタバイトまで対応可能だ。TeradataデータベースのすべてのBI機能が利用できるほか、TeradataのEnterprise Data Warehouseとの間でデータやアプリケーションを簡単に移行できる。「小売や運輸など大容量データの分析用として最適だ。ただし、複雑な分析は苦手なので、利用するユーザー数が多い場合は5550シリーズを利用した方がよいだろう」(丹氏)と説明した。

 Retail Templateは、テラデータの10数年におよぶ流通業界へのデータウェアハウス導入実績ノウハウを凝縮したテンプレートだという。百貨店や通販会社、量販店などの業種に応じて用意している。アドビシステムズのAdobe Flexを採用して開発しているため、クライアントPCはFlash Player 9以上が入っていれば利用可能。

 テンプレートは、デシル分析やRFMセル分析、顧客抽出/DM発信管理などの「顧客テンプレート」や、売場分析やカテゴリ分析などの「商品テンプレート」を中心に提供。そのほか、個人の業務をパターン化したほか、個人ポータルやアラートによる気付き機能などを提供する。また、テンプレートのコア機能を提供するほか、必要に応じたカスタマイズにも応じるという。すでにこのテンプレートの利用を、京王百貨店が開始した。

 日本テラデータ プロフェッショナル・サービス本部 リテールテンプレート開発センター センター長の富高弘之氏によると、「サーバ側はTeradataデータベースとFlex Data Serviceがあれば動くので要件が高くない。また、クライアント側もFlash Playerだけでよいので古いPCなどでも十分動く。実際、京王百貨店ではCPUのクロックが1GHz、メモリが256メガバイトのPCで快適に使えている」とした。

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