VoIPとテザリングをどう扱うのか

Skype for iPhoneが通信事業者に投げかける課題

2009/04/03

 ドイツ最大の通信会社ドイツテレコムが「Skype for iPhone」を閉め出したことでネット業界と通信業界に波紋が広がっている。2009年3月31日、SkypeテクノロジーズはiPhone/iPod touch向けで長らく待望されていたiPhone向けクライアントをリリースした。

 Skype for iPhoneはリリース後1日で60万ダウンロード、2日目で合計100万ダウンロードを記録。Skypeユーザーが約4億人いることやiPhone 3Gの出荷台数が全世界で1500万台を超えていることを考えると順当かもしれないが、それでも驚くべきスピードだ。

 Skype for iPhoneを利用することで、Skype利用者同士は無料で通話が可能だ。一般の固定電話や携帯電話への通話も格安でできるVoIPサービスが使えるようになった。これは音声通話サービスから多額の収益を上げている通信事業者には悪夢かもしれない。ただ、インスタントメッセンジャーとしての利用をのぞいて、通話に関してはWi-Fi接続が必須であるなど通信キャリアとの事前折衝済みとも見られたが、実際にはドイツテレコムは3GネットワークだけでなくWi-FiホットスポットからのSkype for iPhoneの利用は契約上も物理的にもブロックするとアナウンスして驚かせた。

 これに対してSkype顧問弁護士のロバート・ミラー氏は「ドイツテレコムはドイツ国内のSkypeユーザーを犠牲にしてエイプリルフール遊びでもしているのか?」と厳しく非難。ドイツテレコムが技術的問題を理由にSkype for iPhoneの利用を制限していることに対して無根拠だとしている。ドイツテレコムと同様の利用制限はカナダでも報告されている。ミラー氏はEUやドイツが国として何かできるものではないとしながらも、政治家たちに対して行動を起こすよう呼びかけている。

Androidのテザリングアプリケーションを巡る騒動

 ほぼ任意のアプリケーションが走るiPhoneやAndroidのようなデバイスは、通信キャリアにとっては扱いが難しいプラットフォームだ。iPhone向けのSkypeだけでなく、Androidプラットフォームでも通信事業者にとって“都合の悪い”アプリケーションを巡って騒動が続いている。3GとWi-Fiの双方を持つAndroid端末をルーターにして無線アクセスポイントとして利用する“テザリング”(tethering)と呼ばれる使い方がある。従来、Windows Mobile向けでそうしたアプリケーションは存在したが、AndroidやiPhoneで、テザリングが可能となるかどうかは微妙な情勢だ。

 GPLv3のライセンスで開発・提供されているAndroid向けのテザリング・アプリケーション、「Wifi Tether for Root Users」の開発者の1人、セス・レモンズ(Seth Lemons)氏は自身の3月31日付けのブログで、開発者配布契約に違反したとの理由からAndroid Marketへの登録を拒否されたことを明かしている。これはT-Mobileの利用規約に基づくものだったが、レモンズ氏はAndroidは個別キャリアとは直接関係しない“オープン”なプラットフォームだという理由で反論している。これに対してグーグルはアメリカのT-Mobileユーザーに限って、このテザリング・アプリケーションのダウンロードを許可する決定をレモンズ氏に通知している

 技術系ブログメディアのArs Technicaが3月24日に伝えるところによれば、iPhone OS 3.0でもテザリングは技術的には可能という。

 VoIPもテザリングも、スマートフォンにおいてはユーザーのニーズが高いアプリケーションだろう。となれば、これは料金体系と利用可能な帯域というビジネスモデルの問題と言えそうだ。携帯電話キャリアは現在も音声サービスを収益の柱にしているケースが多く、急激にビジネスモデルを転換できないだろう。テザリングに関してはオプション料金で利用を明示的に許可するキャリアもあるが、都市部など人口過密地域では3Gネットワークの帯域では足りないのではないかという問題も出てくる。3Gネットワークは1対1の通信速度の理論値は高いが、1つの基地局がカバーする同一セル中にいるほかの利用者とも帯域を分け合うため、誰もがiPhoneやAndroidでノートPCをネットに接続してしまうと、速度低下や輻輳が起こりかねない。話がビジネスモデルであれば転換のしようもあるが、売るモノ(帯域)がなければ売りようがない。

 Skype for iPhoneやテザリング・アプリケーションの人気と、それを閉め出す通信キャリアという構図は、高速無線通信を使ったモバイル・インターネットの課題を浮き彫りにしている。

(@IT 西村賢)

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