マイクロソフトやシスコと協業
業界は「共通の開発プロセス」を持つべき、米RSA
2009/04/22
セキュリティをテーマとしたカンファレンス「RSA Conference 2009」が米国サンフランシスコで4月20日から開催されている。もともとは暗号学者による議論から始まったカンファレンスだが、いまでは認証やネットワークセキュリティ、不正アクセス防御、さらには国家安全保障に至るまで、セキュリティにまつわる事柄を幅広くカバーしている。
現地時間21日の基調講演には、米EMCのエグゼクティブバイスプレジデント兼RSAセキュリティのプレジデントを務めるアート・コビエロ氏が登場。コラボレーションを進める犯罪者に対抗していくために、堅牢なセキュリティエコシステムの構築に向けた「共通の開発プロセス」が必要だと訴えた。
コビエロ氏は昨今の状況を振り返り、脅威の増大や経済危機、さらには仮想化やソーシャルネットワーキング、クラウドコンピューティングといった新たなテクノロジの登場によって、セキュリティ業界は、情報インフラの再構築という課題とチャンスに直面することになったと述べた。しかし、複数のベンダがばらばらに取り組んでいる状態ではギャップが生じてしまう。「現在のものよりもずっとセキュアな情報インフラを作り出すために、共通の開発プロセスが必要だ」(同氏)
このビジョンを推進するためRSAセキュリティは、「RSA Share Project」という名称で、ソフトウェア開発者に向け同社のセキュリティ技術を公開することを発表した。第1弾として、暗号化ツールキットの「RSA BSAFE」を無償で公開する。
また、業界エコシステムを構築し、独創的なコラボレーションを推進していくという狙いの下、テクノロジの統合を推進。具体的な取り組みとして、マイクロソフトおよびシスコシステムズとの協業を発表している。こうした協業によって、「インフラの中にコントロールポイントを組み込んでいくことができる」(同氏)とした。
コビエロ氏は、開発プロセスや技術の共有、テクノロジの統合によって、犯罪者らよりも強固なエコシステムを実現し、革新的なコラボレーションを進めていくべきだと述べ、講演を締めくくった。
資格に基づくMSの認証システム「Geneva」
また、同じく基調講演に登壇した米マイクロソフトのTrustwothy Computing担当プレジデント、スコット・チャーニー氏は、「インターネット上で活動する人の数が増えるにつれ、犯罪者もそこに押し寄せるようになった。いまやここが非常においしいターゲットになっている」と指摘した。
同社ではこれまで、安全なソフトウェアを開発するための「SDL(セキュリティ開発ライフサイクル)」や「多層防御(Defense In Depth)」といった取り組みを進めてきた。またInternet Explorer 8の「Smart Screenフィルタ」やWindows Vista/7で実装されるTPM、アプリケーションの実行をロックする「AppLocker」など、新たなセキュリティ機能も追加している。
こうした取り組みによって、インターネットは以前に比べれば安全になってきた。しかし「まだ許容可能なレベルには至っていない」と同氏は言う。
チャーニー氏は今後の取り組みとして、次期「Forefront」や認証プラットフォームの「Geneva」を紹介した。このうちGenevaは、「クレームベース」の認証システムで、各ユーザーが信頼できる範囲で情報を開示できるようにする。状況に応じて属性情報を活用することで、ユーザーがどこにいようと、ポリシーやプライバシーに反しない範囲で必要な情報にアクセスできるようにする。すでにワシントン州のLake Washington School Districtで、児童やその保護者、教師のアクセス制御用に試験導入が行われているという。
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