Duke's Choice Awardの受賞者がステージに登場

JavaOne最終日、ゴスリング氏がナイスなハックを紹介

2009/06/08

 年に1度のJava開発者向けイベント「JavaOne」の最終日は、いつもサン・マイクロシステムズのバイス・プレジデント兼フェローのジェームス・ゴスリング氏が、「Duke's Choice Award」に選ばれた“ハック”の数々を紹介する「Toy Show」を行うのが慣例だ。オラクルによる買収により、単独開催としてのJavaOneは今年が最後ではないかとささやかれた2009年だが、最終日の6月5日には、もちろんToy Showがあった。ここでは特に目を引いた“ナイスなハック”を3つほどレポートしたい。

gosling.jpg 次々とカードをめくりながら登壇者とハックの内容を紹介するサン・マイクロシステムズのバイス・プレジデント兼フェローのジェームス・ゴスリング氏

複合機をJavaでマークシートリーダーに

 1つ目はリコーとサン・マイクロシステムズが共同開催したコンテスト「Ricoh&Java Developer Challenge」で優勝したハンガリーのパニオニア大学の2人、Zoltan Szabo氏とBalazs Lajer氏が作ったソフトウェア。

 リコーの複合機は早い時期から処理用ソフトウェアプラットフォームとしてJava VMを搭載していたが、これを使ってアプリケーションを実装する、というのがコンテストの趣旨だ。

 Szabo氏とLajer氏が作ったソフトウェアは、一種のマークシートリーダーだ。学校の試験などで使うことを想定しており、チェックボックスの並んだテスト用紙をスキャンすると自動的に受験者の名前と各問題の正解・不正解をスコアとともに出力する。すでに学校などに設置されている複合機を使って、教師が実際に使いそうなアプリケーションを実装した点が素晴らしい。スキャン画像を高速処理するためのコプロセッサを搭載しないと認識して処理するまで数秒待たされるとか、そもそも高機能複合機が学校にあるのかという疑問も感じるが、複合機のあの小さな画面に問題シート読み込みを行うプロセスを分かりやすくナビゲートするウィザードまで実装しているなど、プラクティカルなアイデアと、作り込みの親切さが目を引いた。

ricoh01.jpg アワード受賞者とステージ上で話ながら、受賞内容を紹介するゴスリング氏(右)。これはリコーの複合機に搭載されるJavaを使ったコンテストの優勝作品
ricoh02.jpg まず正解の場所を青くマークしたマークシートを、複合機に読み込ませる
ricoh03.jpg ウィザードを使ってシートが読み取れたことを確認
ricoh04.jpg 実際の受験者のシートを読み取って正答数を印字した結果

画像処理でガン検診を自動化

 VESUVI社の画像検索技術は、Java EEを使って書かれたソフトウェアだ。デモンストレーションの最初にスラーの点画を示して、名前を知らないと絵画のような画像は現在のインターネットの検索エンジンでは探しづらい指摘したので、Web2.0的な類似画像マッチング技術なのかと思ったら、実はずっとハードコアなアプリケーションだった。

 VESUVIのCEOのChris Boone氏によれば、同社のエンジニアは数学関係の学位を持っている人たちで、医療用で使われるようなサイズの大きな画像データに対しても高速に処理できるアルゴリズムを開発しているという。デモンストレーションでは、患者から採取したサンプルの顕微鏡写真8万9000枚の高解像度の画像に対して0.3秒でマッチング処理。既存の患者のものと一致するかどうかで、前立腺ガンなど、診断や早期発見に役立てるのだという。ガンの診断には高価であるうえに、ガンの専門医でも所見による診断が分かれることがある。こうしたことから、より客観的に、安価に診断できる技術が有用だという。ゴスリング氏は「君たちのおかげで何年か長生きすることになる人が、この部屋にも数人はいるんじゃないかと思うよ」とコメントしていた。

 デモンストレーションでは、JavaFXを使ったユーザーインターフェイス、例えばスライドバーなどで画像をズームしたり、切り替えたりしてみせた。

image.jpg 高解像度の医療用画像データベースと、患者のサンプル画像をマッチング。ガン診断を、高い精度で安価に行えるソリューションを提供するという

ミュージシャンCEOが作る“Javaジュークボックス”

 毎年Toy Showに出てくるのは、自走式潜水艦を自作してしまう超理系の高校生や、経験20年を超えるベテラン開発者といったエンジニア色の強い人が多いが、今年のToy Showに出てきたCheck1TWOのManuel Tijerino氏は、かなり毛色が違った。話し方も服装も、若者ミュージシャンなのだ。そんなTijerino氏が開発したジュークボックスは、地元に根ざした活動を行うバンドに対して、ネットワーク化されたバーという発表の場を与え、ファンと結び付けるというもの。バンドが楽曲を登録し、聞く方はアルバムやアーティスト名で検索して音楽をダウンロードする。

juke01.jpg ジュークボックスを紹介するManuel Tijerino氏は、自分自身がミュージシャン
juke02.jpg システムはSolaris OS上でJavaFXを使って構築したという。アーティストの名前や曲名で検索できるという

 これは、インディーズバンドと潜在的ファンを結び付ける一種のマーケット創生を狙っているようで、インターネットビジネスの1つの典型とも言える。まだ実績はないようだが、狙いを各地のバーにして、ジュークボックスという形態を取っているのが興味深い。

 「バーにいて酔っぱらってるときってさ、あんま頭まわんないし、文字もよく読めないからさ」と、Tijerino氏はJavaFXを使ったシンプルなインターフェイスをデモンストレーションした。ジュークボックスには現金を処理する機構も組み込んである。システムにはSolaris OSを使ったという。「ミュージシャンってさ、カネねぇからさ、ブルースクリーンが出るたびに修理に出向くなんてできないんだよ」(Tijerino氏)。

 Check1TWOは、もともとJava開発者だった誰かが思いついたり依頼されて開発したというのではなく、ミュージシャンのコミュニティに身を置く人が、自ら起業してITをツールに使ったビジネスを模索している点でも目を引かれる事例だった。

gshot01.jpg Toy Show終了後、つまりJavaOneすべてのプログラムが終了した後には、その場にいたサン・マイクロシステムズ社員がすべてステージ上に上がり、集合写真を撮っていた。私が知る限り、過去のJavaOneではこんなことはなかった。やはり最後なのかと名残惜しそうに見守る来場者もチラホラ

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(@IT 西村賢)

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