100ユーザーまで無料で利用できるForce.comが国内提供開始米セールスフォース・ドットコム CEOのベニオフ氏が講演

» 2009年09月15日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 セールスフォース・ドットコムは9月15日、プライベートセミナー「Cloudforce Japan」を都内で開催。米セールスフォース・ドットコム 会長兼CEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が新たに提供を始めたサービス「Service Cloud 2」や、最大100ユーザーまで無料で利用できる「Force.com Free Edition」の国内提供を始めたと発表した。

“SaaSは中小企業向き”は古いイメージ、大規模導入が増加中

ベニオフ氏写真 米セールスフォース・ドットコム 会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏

 ベニオフ氏は登壇早々「いま企業は変化を求めている。ソフトウェア大手3社が市場のかなりの部分を独占しているが、当社はこの状況を壊したい。あるベンダでは、年間保守料をソフトウェア料金の22%も請求している。当然、われわれを代表とするSaaSではこのような高額な保守料は発生しない。われわれの使命はこのようなソフトウェア市場に変化を起こすことだ」と発言。同社のsalesforce.comを代表としたアプリケーションはすでにクラウド化・SaaS化されており、それに続いてプラットフォームも同社やAmazon、Googleなどがクラウド化してきているとした。

 クラウドコンピューティングやSaaSの定着により、同社のユーザーも順調に増加。現在、ワールドワイドで6万3200社、年間売上高も11億ドルを突破し、ソフトウェアベンダTOP10に入ったという。また、大規模導入も続いている。日本郵政公社が7万ユーザー導入したのに続き、損保ジャパンが社内標準ツールとして全社導入し、東京海上日動も1万ユーザー超、日通やローソンも5000ユーザー程度導入しているという。ベニオフ氏は「当社のサービスやSaaSは“中小企業、中堅企業向き”というイメージが強かった。しかし、日本でも5000ユーザーを超える大規模ユーザーが続々と登場している。しかも、これらは従来のシステム導入に比べ、圧倒的に短期間導入を実現している点が特徴だ。短期導入であるため、導入コストも抑えることができている」と説明した。

 次に同氏はレスポンス向上をアピール。同社のForce.comでは300ミリ秒を切るレスポンスタイムを実現。可用性も前四半期の実績で99.99999%を達成しているという。「ユーザーが急激に増えている中、このレスポンスタイムは上出来だ。いまはリアルタイム性、情報のスピードが重要だ。クエリを送って数時間待ったり、夜間バッチを待ったりするのでは長すぎる。また、SaaSではインフラもアプリケーションもサーバもすべてプリインストールの状態で利用できる。つまり、ユーザーは思い立ったときに利用できる点も重要なポイントだ」(ベニオフ氏)と語り、レスポンスの速さを強調した。

久田氏写真 損害保険ジャパン IT企画部 課長代理 久田順一郎氏(左)ベニオフ氏(右)

 続いてユーザー事例として、損害保険ジャパン IT企画部 課長代理 久田順一郎氏が登壇し、同社の導入事例を紹介した。久田氏によると、損保ジャパンでは2009年下半期に同社社員2万5000人のほか、同社の代理店約5万店舗でsalesforce.comを利用する予定。salesforce.comのメリットとして「保守費用が掛からない」「開発が簡単」の2点を挙げた。

新たに「KaaS(Knowledge as a Service)」を提供開始

 ベニオフ氏は、続いて新しいカスタマーサービスソリューションである「Service Cloud 2」を発表した。Service Cloudは2009年1月に提供を開始したサービスで、従来のカスタマーサポートサービスに加え、FacebookやTwitterなどのソーシャルサービスを統合したものだ。

 本日日本で発表された新版の「Service Cloud 2」ではこれらの機能に加え、「Salesforce Knowledge」「Salesforce Answers」「Salesforce for Twitter」の3つのサービスを提供する。「Salesforce Knowledge」は、Force.com上で稼働するナレッジベース。例えば、ユーザーから「○×という製品の充電の仕方が知りたい」という質問がきた場合に、担当者がシステムに「○× 充電方法」などと入力すると、類似回答が表示されるというものだ。2009年11月以降に提供予定で、価格は顧客サービス担当者1人当たり月額50ドル。

 「Salesforce Answers」は、企業のWebサイトやFacebookのファンページのようなソーシャルコミュニティサイトにQ&Aコーナーを設置・運営するツール。日本の「OKWave」のようなQ&Aサイトを簡単に構築できるという。「Salesforce for Twitter」は、Twitter上でつぶやかれている言葉から、自社に関連する“つぶやき”をリアルタイムで検出して管理するサービス。これらのつぶやきはService Cloudに取り込まれ、必要があればテンプレート回答を行うことも可能だ。さらに、Twitter上の有用なアドバイスや解決法をナレッジベースに追加することもできる。

笠原氏写真 ミクシィ 代表取締役社長 笠原健治氏(中)ゴルフダイジェスト・オンライン 代表取締役社長 石坂信也氏(左)

 また、日本ではミクシィの「mixiアプリ」と「Salesforce CRM」と連携した企業向けサービスを開始。このサービスは、Salesforce CRMの利用企業がmixiアプリに寄せられるmixiユーザーのアイデアや意見をSalesforce CRMにリアルタイムに取り込めるというサービスだ。取り込まれた情報は、関連部署にアラートメールとして送信されるほか、ダッシュボード機能で分析することも可能だ。登壇したミクシィ 代表取締役社長 笠原健治氏は、「mixiはいままで広告収入だけに頼っていた。しかし、mixiアプリや、今回のSalesforce CRMとの連携によって、新しい収入源を得た点は大きい。今後、このサービスに期待している」とコメントした。

電子政府リニューアルプロジェクトの意見収集にSalesforceを活用

 ここでユーザー事例として、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長 前田泰宏氏が登壇。経産省は、エコポイントの管理システム構築において、Force.com Sitesを活用。短期間で開発完了し、7月1日のエコポイント実施に間に合わせることができたという。前田氏は、「クラウドコンピューティングは新しいパラダイム。経産省でも7月1日から勉強会を開催して可能性を調査している。私はクラウドコンピューティングは銀行に近いと思っている。なぜなら大事なものを預けるという点で同じだからだ。銀行は預ければ利子がもらえるが、その部分をクラウドコンピューティングではどう提供していくのかが課題だ。また、電子政府のリニューアルプロジェクトにアイデア管理ツールである『Salesforce CRM Ideas』を活用する。これにより、当省はベンダ経由ではなくユーザーからのダイレクトなコミュニケーションを主体とした電子政府プロジェクトを推進する。このプロジェクトは、11月14日までに稼働予定だ」と説明した。

前田氏写真 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長 前田泰宏氏(左)ベニオフ氏(右)

 また、セールスフォース・ドットコムは最大100ユーザーまで無料で利用できる「Force.com Free Edition」の国内での提供を開始したと発表した。Force.com Free Editionは、自社の社内システムやWebサイトなどを、開発言語「Apex」やApexの開発ツール群を使って構築できるサービス。最大100ユーザーまでであれば無料で利用できる。従来は米国のみの提供だったが、日本での提供も開始した。ただし、Free Editionでは登録できるカスタムアプリケーションが1つに制限されていたり、CRM機能が使えないなどの各種制限があるので注意が必要だ。

 続けて登壇したローソン 常務執行役員 CIO ITステーションディレクターの横溝陽一氏は、ローソンの導入事例を紹介。ローソンは、“まず試しに使ってみる”という意識の下、IT部門の案件管理機能としてsalesforce.comを導入。各種評価を行ったうえでLotus Notesからの乗り換えとして5000ユーザー規模で導入したという。同氏は「まず、いいたいのは“使ってみてほしい”ということ。使ってみなければ本当の判断はできないからだ。当社も最初は小規模導入で十分テストしたうえで大規模導入となった。セールスフォース・ドットコムのサポートもあるので、ぜひ試してみてほしい」と訴えた。

 最後にベニオフ氏は、「日本はかなりカスタム好き。salesforce.comのカスタム機能を世界で一番利用しているといえる。その点、salesforce.comはかなり詳細なカスタマイズが行える。郵便局も20以上の独自アプリケーションを開発・導入している。さらに通常のソフトウェア開発と異なり、さまざまな設定が必要ないので開発スピードを平均4.9倍にできる点も大きい。ユーザーに体験してもらうために六本木ヒルズにお客さま専用フロアを開設した。ぜひ活用してほしい」とコメントした。

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