1秒間にBlu-rayを10枚ダウンロード、新ASIC「Junos Trio」3種類のラインカードを新開発、搭載新製品も2010年にリリース

» 2009年10月30日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 米ジュニパーネットワークスは10月29日(現地時間)、米ニューヨーク・ウォールストリートにあるニューヨーク証券取引所で記者会見を実施。新しいASICチップセット「Junos Trio」を開発し、新製品「Juniper MX80」に搭載すると発表した。米ジュニパーの創業者でありCTOも務めているプラディープ・シンドゥ(Pradeep Sindhu)氏は、「Junos Trioはエッジ向けチップセットとしては世界最速」とアピールした。

 Junos Trioは、同社の第6世代に当たる新しいASIC。「ブロードバンド」「サブスクライバー」「サービスクオリティ」の3点を特に強化したという。65nmプロセスで作成した12億個のトランジスタで構成されており、低誘電率層間絶縁膜や、新しい配線技術である「銅配線」を採用して性能を向上させているという。In-Outのパフォーマンスは604Gbpsに達するという。このJunos Trioを搭載したラインカードは、1枚当たり120Gbpsを実現し、取り扱えるアドレス空間は800万、消費電力は10GE当たり37Wを実現しているとした。

筺体イメージ写真 世界で1台しかない「Juniper MX80」試作1号機。1台目であるため、筺体上部に開発者たちの記念サインが記されている

 これを従来のチップセットと比較すると、パケットフォワーディングで3.6倍、電力効率で10倍、遅延は5〜8倍改善されているという。その結果、1秒間にBlu-ray DVDを10枚分ダウンロードできるほか、HDTV相当であれば43万チャンネルを同時に閲覧可能だという。

 Junos Trioの開発に合わせてジュニパーでは、Junos Trioを搭載したラインカード3種類「16×10GbEカード」「ユニバーサルエッジカード」「100GbEモジュラー」を開発。16×10GbEカードは、10GbEを16ポート備えるラインカードで2009年12月に出荷予定。ビデオ映像やアグリゲーションなどの用途に活用できるとしている。ユニバーサルエッジカードは、ビジネスやモバイル向けのカードで、カード内の2つのモジュラーをユーザーの用途によって変更できるのが特徴だ。例えば、10GbE×4のモジュラーと1GE×20のモジュラーを組み合わせたり、両方とも10GbE×4にしたりと、柔軟に変更できる。2010年上半期にリリース予定。100GbEモジュラーは、100GbEに対応したモジュラーで、エッジルータからコアルータにアップリンクする際に有効だ。100GbEの仕様は2010年6月に策定される予定なので、出荷開始は2010年下半期になる予定だ。

trio概要 Junos Trioのスペック一覧。低誘電率層間絶縁膜や、新しい配線技術である「銅配線」を採用しているという
シンドゥ氏写真 米ジュニパー 創業者兼CTO プラディープ・シンドゥ氏

 また、同社はJunos Trioを搭載したイーサネットサービスルータの新製品「Juniper MX80」を発表した。2010年上半期に出荷開始予定。MX80は、2Uサイズの筺体で80Gbpsを実現する、レイヤ2、3をカバーしたサービスルータ。モジュラータイプと固定タイプの2種類が用意されている。MX80は、同社の人気製品である「MXシリーズ」の最小サイズの製品としてラインナップされ、「1番大きいMX960と比較して、ROIで6倍、ビジネスエッジではTCOを3分の1に圧縮できる。何よりも消費電力が10分の1になった」(シンドゥ氏)と説明した。

 なお、ジュニパーではJunos Trioを含む4種類の新ASICをまとめて「Junos Oneシリーズ」と命名。Junos Trioはこのうち下から2番目のモデルであり、シリーズ第1弾として製品化した。シンドゥ氏は、「過去20年間のルータの歴史の中で、2回の飛躍的性能の進化を遂げている。1回目はジュニパーが初めての製品M40をリリースしたときだ。そして今回が2回目であり、1回目よりもはるかに強いインパクトを与えることができるだろう」とコメントし、同製品への期待を表した。

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