ガートナーのフェローが2社を分析

グーグル対マイクロソフト、「非対称な戦争」とは

2009/11/13

 「これまでのグーグルとマイクロソフトの間の競争に関する解釈はほとんど間違っている。これまでグーグルがマイクロソフトを追いかけていると思われてきたが、現実はその逆だ。グーグルのコアビジネスに足を踏み入れることによってこの戦争を始めたのはマイクロソフトだ」。米ガートナーのリサーチバイスプレジデント兼ガートナーフェローのデビッド・スミス(David Smith)氏は11月12日、Gartner Symposium/ITxpo Tokyoのメディア限定セッション、「クラウド時代の新しい戦争:グーグル VS マイクロソフト」でこう話した。

 これは、まったく気質の異なる2企業の間の戦いであるとスミス氏は説明した。2者とも「民主化」をテーマとしているが、グーグルが情報の民主化を目指す一方、マイクロソフトはテクノロジの民主化を目指している。

gartner01.jpg 米ガートナー リサーチバイスプレジデント兼ガートナーフェロー デビッド・スミス氏

 スミス氏の分析によると、グーグルは「次の20億人」のユーザーを狙い、だれからも自社の運命を左右されることを嫌い、ラディカルな革新とクラウドを指向する。その努力はコンシューマ市場に向けられ、エンタープライズ市場へのメッセージも企業内個人を通じて行っている。対照的に、マイクロソフトは確立された企業として、次世代のアプリケーションのためのプログラミング・プラットフォームを提供している。コンシューマとエンタープライズ双方の市場で、クラウドだけではなくオンプレミス(企業やユーザーが自ら保有する製品)のビジネスに力を入れてきた。

 しかし、マイクロソフトはクラウドに関し、これまでにない覚悟で取り組み始めている、とスミス氏はいう。「オンプレミス、オフプレミス、サードパーティと、ありとあらゆる側面からクラウドを攻めようとしている」。検索を通じた広告を明確に事業分野として認識し、すでに従来以上の成功をおさめているとする。

 「(しかし広告分野での)グーグルのリードはあまりにも大きい。マイクロソフトはとりあえずナンバー2の座を狙うことになる」。

 グーグルは売り上げの97.5%を広告に依存している。同社のビジネスのベースとなっているのは、情報の民主化をさまざまな方法でマネタイズするという考え方だ。「グーグルは、どんな人が何を、どこで検索しているかをデータマイニングして売り上げに結び付けることができる」。

 そのかたわら、検索という自社のコアビジネスにマイクロソフトが足を踏み入れてきたことへの反撃として、グーグルはマイクロソフトに対して「asymmetric warfare」(非対称な戦争)を仕掛けているとスミス氏は指摘する。グーグルが1ドル費やすごとに、マイクロソフトが売り上げを10ドル失うようなことを意識的に行って自社を守ろうとしているというのだ。「例えばエンタープライズ分野のように、グーグルが有効なビジネスプランを持っていない分野で、こうした動きが目立つ」。グーグルの売り上げにつながらなくとも、同社は今後継続的に“非対称な戦争”を仕掛けていくだろうという。

 「グーグルがChrome OSを出してきたのは、Windows OSの価値を低減させることが主な目的だと考えるか」という@ITの質問に、スミス氏はそうだと答えた。「OSがプラットフォームではなく、ネットワークがプラットフォームだという、別の局面に持っていこうとしている」。ネットワークにアプリケーションあるいはサービスが存在すれば、端末はそれを利用するだけの存在で構わない。コストの掛かる高機能なOSは不要という考えが成立し得る。こうした考えのもとに、無料のOSをネットブックに提供することで、Windows OSにプレッシャーをかけるのが目的だとスミス氏はいう。

 Chrome OSはWebブラウザですべてのアプリケーションを動かすことを前提としている。つまり、OS上で直接さまざまなアプリケーションを動かすことを目的としていない。その意味で、プラットフォームではない初めてのOSだとスミス氏は形容する。

 「多くの人は、なぜグーグルは(AndroidとChrome OSの)2つのOSを出してきたのかと質問する。答えは、Chrome OSはプラットフォームではなく、Androidはプラットフォームだということだ。モバイルの世界では、まだOSの上で直接アプリケーションを動かせなければならないとグーグルは考えている」。

 スミス氏は、2社がそれぞれ別の大きな課題を抱えていると指摘した。マイクロソフトは、価格的なプレッシャーにさらされながらも、ネットブック絡みの(OSの)売り上げをあきらめることはできない。明確に成長をもたらす収益源も見つかっていない。モバイルへの対応も遅れている。そして検索と広告においても、一貫した進展が求められていると話す。

 一方、グーグルはどうか。大きな課題はエンタープライズ分野をどう開拓するかにあるとスミス氏は指摘する。「グーグルはエンタープライズに対しておもねるような行動はしない。グーグルが企業ニーズに対応できるのかではなく、企業がグーグル(の考え)に対応できるのかという状況だ」。しかしGoogleドキュメントなどがMicrosoft Officeの代替になりそうだとはいい難い。広告以外の大きな収益源が必要だという事実も変わらない。WebブラウザChromeのシェアも、飛躍的に高める必要があるとスミス氏は指摘した。

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(@IT 三木泉)

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