SAS、人と人のつながりを分析して不正検知するソリューションネットワーク分析導入で他社と差別化

» 2009年12月10日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 SAS Institute Japanは12月10日、不正利用によって詐欺行為などを働こうとするユーザーを見付けるための金融機関向け不正利用対策パッケージ「SAS Fraud Framework for Banking」の提供を開始した。通常の統計的なアラート検知に加えて、同社独自のネットワーク(関係性)分析によって、金融犯罪の検知を手助けする。出荷開始は2010年1月から、価格は応相談。

宮田氏写真 SAS Institute Japan 執行役員 ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏

 SAS Fraud Frameworkは、不正検知やアラート生成・管理などを提供する各種コンポーネントと、ネットワークを分析する「SAS Social Network Analysis」で構成されるソリューション。ネットワーク分析を行える点が他社製品との大きな差別ポイントだという。同社のいう「ネットワーク分析」とは、さまざまな情報を関連付け、その“つながり”をネットワークとして疑わしい場合にはアラートとして抽出することにより、組織的犯罪を発見する方法。

 例えば、まったく別人であるはずのAさんとBさんが、名前がまったく異なっていても、同じメールアドレスや電話番号を登録している場合、AさんとBさんは同一人物である可能性が高い。ネットワーク分析では、「Aさんは東京都に住んでいる」といった属性情報を「ハードリンク」、AさんからひんぱんにBさんに振り込まれているといった“行動”に関する情報を「ソフトリンク」として関連付け、各種データと組み合わせて分析したうえでスコアリングしていくという。

イメージ写真 SAS Fraud Frameworkのサービスイメージ図

 製品投入の背景には、不正に取得した口座で信用度を上げ、融資を受けた後に逃げる「Bust-out Fraud」や、不正に取得した個人情報を基に新しい預金カードやクレジットカードを発行させる「ATM Fraud」といった手口が横行していることが挙げられる。SAS Institute Japan 執行役員 ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏は、「日本では、振り込め詐欺が急増したことも一因だ。振り込め詐欺の被害を金融機関が補てんしなければならないため、金融機関の損害もかなり拡大している」と説明した。

 SAS Fraud Frameworkによって、疑わしいネットワークがスコアリングされアラートが上がった後は、金融機関の調査員が深刻度に応じてより詳細な調査を行う。その際、アラート詳細には、銀行全体の平均値とアラート対象取引の傾向をグラフで表示できるほか、スライダーを動かすことで、時間軸でネットワークの生成過程を調べることも可能だ。

 宮田氏は、「従来は、明確な指標や分析機能がなかったため、“何となく疑わしい”という判断材料で調査していたため、効率が悪かった。不景気の中、どれだけ効率よく正確に調査できるかがこれからは重要なポイントとなる。今回は金融機関向けだが、今後は保険業界向け、医療業界向け、官公庁向けなども開発していきたい」と今後の展望などを語った。

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