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グーグルの言う「オープン性」の真の意味とは?

2009/12/24

 米グーグルで製品管理を担当するジョナサン・ローゼンバーグ上級副社長の「The Meaning of Open」(オープンの意味)という記事を読んでいただきたい。これは素晴らしい論文だ。しかし読むに当たっては、多少の予備知識も必要だ。

 まず、グーグルは多数のソフトウェアをオープンソースにしている。ローゼンバーグ氏によると、グーグルは世界最大のオープンソースコントリビューターであり、800以上のプロジェクトを通じて全部で2000万行以上のコードをオープンソースとして提供しているという。

 グーグルは、Android(モバイルOS)、Chrome(Webブラウザ)、Chrome OS、Google Wave、Google Gearsなど数多くの技術に関連したコードをApacheに寄贈した(ただしAndroidについては、グーグルはもう少しオープンであるべきだという指摘もある)。

 また同社は12月4日にAppJetを買収し、その2週間後にはAppJetのスタッフがEtherPadのコードをオープンソース化するのを支援した。

 つまりグーグルは、コードをオープンソース化する方法については、誰にも劣らずよく知っているというわけだ。だが同社はシステムをクローズドにする方法も、誰にも劣らずよく知っている。同社の検索・広告プラットフォームがクローズドであるのもそのためだ。これらのプラットフォームがグーグルの収益の源泉であるというのは偶然だろうか。ローゼンバーグ氏は次のように記している。

 「われわれは開発ツール用のコードはオープンにする方針だが、グーグルのすべての製品がオープンソースになるわけではない。われわれの目標は、インターネットをオープンなものにすることだ。それは選択肢の拡大と競争の促進につながり、ユーザーと開発者が縛られるのを防ぐことができる。コードをオープンにすることがこういった目標に貢献せず、ユーザーに迷惑を与えるケースも多い(特に当社の検索製品と広告製品の場合)。検索・広告市場では、乗り換えコストが非常に低いこともあって、すでに激しい競争になっている。このためユーザーと広告主にはすでに多くの選択肢があり、彼らは縛られていない。言うまでもなく、これらのシステムをオープンにすれば、人々がわれわれのアルゴリズムを悪用して検索や広告品質のランキングを操作することが可能になり、当社製品の品質低下を招く恐れがある」

 グーグルが検索・広告プラットフォームをクローズドにしている理由はほかにもある。グーグルがこれらのプラットフォームをオープンソースにするというリスクを決して冒さないのは、同社の最大のドル箱を壊すことになるからだ。

 資本主義という視点で見れば、グーグルが年間200億ドルを超える巨額の収入を稼ぐことを可能にしているのは、クローズドでプロプライエタリな検索・広告技術なのだ。

 「競争は1クリックの差」といったまやかしに惑わされてはいけない。

 5年分の電子メールやファイルをグーグルのGmailに置いているユーザーが、そんなことを信じるだろうか。確かに、Data Liberation Frontはユーザーがデータをエクスポートできるようにしているが、グーグルがユーザーのデータを締め出しでもしない限り、誰がそんなことをするだろう。グーグルの使い勝手の良さと無償のWebサービスは恐ろしいほど魅力的だ。ユーザーがこの検索とWebサービスのリーダーと縁を切るのは、たやすいことではない。

 オープンでフリーな製品(AndroidとChrome OS)は、グーグルに収益をもたらさない。AndroidとChrome OSは、グーグルが検索と広告市場での影響力を拡大するためのプラットフォームにすぎないのだ。簡単に言えば、これがグーグルのビジネスモデルなのだ。

 Androidなどのオープンソースプロジェクトはグーグルに直接的に収益をもたらさないが、同社に収益をもたらす場所にユーザーを導くと言っても差し支えないだろう。このことはグーグルを理解する上での基本だ。

 ローゼンバーグ氏の記事に対する米ガートナーのブライアン・プレンティス氏の指摘は興味深い。Techmemeサイトでは、このトピックに関する批判や意見が紹介されている。

 さらにローゼンバーグ氏は、グーグルが収集するユーザーに関するデータについてもオープンであることを目指す同社の取り組みを説明している。検索エンジンをはじめとするWebサービスを絶えず修正・改善するために、グーグルはユーザーのデータを必要としていると同氏は強調する。

 グーグルは多くの情報の扱いをユーザーの裁量にゆだねており、個人的には、この面での同社の取り組みだけは高く評価できる。しかしプライバシー擁護論者たちは、検索エンジンがWebリクエスト、cookie、行動ターゲティング広告などを通じてユーザーのWeb利用傾向をどのように把握しているのかを、ユーザーがGoogle Dashboard(グーグルアカウントに関連したアプリケーションデータを集約する)のようなサービスを利用して確認できることが望ましいと考えている。

 グーグルは来年、データ収集に関して情報開示の取り組みを強化する必要があるだろうか。あなたはどう考えるだろうか。

原文へのリンク

(eWEEK Clint Boulton)

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