ユーザー主導開発導入で開発コストが3分の1にマネースクウェア・ジャパンが基幹システム刷新

» 2010年02月05日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 マネースクウェア・ジャパンは2月5日、基幹システムの刷新を実施し、その際にユーザー主導開発を取り入れて成功したと発表した。

 マネースクウェアは、2002年創業のFX(外国為替証拠品取引)専業会社。古くからFX専業で取り組み、数々の独自商品を開発してきたという。マネースクウェア・ジャパン 業務管理部 IR担当シニアマネージャー 西田大助氏によると、「現在、FX専業業者は100社ほど存在するが、そのほとんどが手数料無料でレバレッジ幅の大きい取引をウリにしている。そんな中、当社はそれらの流れと逆行し、手数料はもらい、レバレッジも低い。ただ、他社にない商品力が競争力となっている」と説明する。

 FX取引には、最初から新規注文と決済注文を入れておく「イフダン」注文がある。例えば、現在1ドル100円だとすると、「96円になったら買い、その後98円になったら売る」という注文を1度に出すというものだ。イフダンを利用することで、新規注文後相場を見ながら売り注文を出す必要がないので、忙しいユーザーなどに人気だという。

 マネースクウェアでは、これに加えて一定間隔の値幅で一定金額の新規注文を複数一括注文できる「トラップトレード」、イフダン注文が一回成立したら、その後も同じ条件で繰り返し注文できる「リピートイフダン」、さらにトラップトレードとリピートイフダンを組み合わせた「トラップリピートイフダン」といった商品を作成し、特許を取得した。

 一方、商品が複雑化したことで、システム負荷が上昇。顧客の増加とともにパフォーマンスの低下を招き、今回の基幹システム刷新の実施に踏み切ったという。「当社は、従来から基本的にすべてのシステムを自社開発する珍しい企業だった。しかし、今回のシステム刷新に当たっては、処理速度10倍を目指したため、自社のみでの開発は諦めて他社のサポートを依頼することにした」(西田氏)と背景を説明。その結果、ユーザー主導開発を提唱しているウルシステムズと共同で開発することにしたという。

 開発は、レート受信や約定処理などに必要な機能を提供する「ミドル」と呼ばれる部分で実施。従来は、ミドルからユーザーへの情報配信をプル型で行っていたものをプッシュ配信方式に変更したほか、約定取引の方法を、一定間隔で取引をする方法から約定に応じた方法に変更することにより、処理速度10倍を実現したという。人員はMAXで10人、工数は30人月程度で、4カ月で完成した。「当初、システムの全面刷新に要する期間は1年を想定しており、そのような見積もりを出したベンダもいた。しかし、事前に分析を行った結果、ミドル部分の改修だけで目的を達成できることが分かり、コストを約3分の1に抑えることができた」(西田氏)。

 ユーザー主導開発について、西田氏は「ベンダ丸投げの場合、ユーザー側で判断した方が早い問題でもベンダ側で何とかしようとして余計な時間がかかったりして、ロスが多い部分もある。一方、ユーザー主導開発の場合、ユーザーとベンダが一体になってプロジェクトを推進するため、過剰なドキュメントが要らなくなったほか、テストフェイズで業務部門のキーマンが参加するなど、ユーザーが積極的に品質向上に取り組むことがコスト削減に大きく貢献した」と語り、メリットが多い点を強調した。

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