元幹部が語る

マイクロソフトは「革新力のなさ」と「内紛」で衰退している

2010/02/08

 2010会計年度第2四半期に好調な業績を記録したにもかかわらず、マイクロソフトは「衰退している」と同社の元幹部は語る。その理由は、マイクロソフトには革新が起こせないから、そして、ヒットの可能性があるプロジェクトが内紛でつぶれてしまう傾向があるからだ――と、約10年前にタブレットPCなどのプロジェクトに携わっていたというこの幹部は話している。

 「われわれが2001年にタブレットPCを開発していたとき、当時Officeを担当していた副社長がこのコンセプトを気に入らないと考えた」と1997〜2004年にマイクロソフト副社長だったディック・ブラス氏は2月4日、New York Timesのコラムで述べた。「タブレットにはスタイラスが必要だった。彼はペンよりもキーボードの方が好きだったし、われわれの取り組みは失敗すると思っていた」

 オンラインで話題になったブラス氏のコラムによると、Office担当副社長は、「人気のOfficeアプリケーションを、タブレットとうまく連係するように改造することを拒んだ。このため、スプレッドシートに数字を入力したり、電子メールの内容を修正するのに、特別なポップアップボックスに書き込んで、それをOfficeに転送しなければならなかった」。このプロセスは面倒だったとブラス氏は語る。そして今日に至るまで、「まだタブレットPC上で直接Officeを使うことはできない」という。

 ブラス氏が言うには、アップルがタブレットPCを開発しているという「確信」があったのにもかかわらず、マイクロソフトのタブレット部門は最終的に閉鎖された。だが、マイクロソフトのここ数年の問題のすべてが内紛によるものというわけではないと同氏は言う。「問題の一部は、マイクロソフトが従来(リスクの高い)ハードをやらずに(利益率の高い)ソフトを開発することを好んできた点にある」

 このスタンスは1975年ならば理にかなっていたかもしれないが、「今は、iPhoneやTiVoのような緊密に統合され、美しくデザインされた製品を作り出すのを極めて難しくしている」とブラス氏は付け加えている。

 マイクロソフトはブラス氏のコメントに前向きに応えようとしている。2月4日のOfficial Microsoft Blogで、広報担当のコーポレート副社長フランク・シャウ氏は次のように述べている。「元マイクロソフト社員のディック・ブラスがNYTのコラムで、マイクロソフトのいい時代は過ぎ去ったと主張している。彼は自分の在籍時の例を挙げて、マイクロソフトはもはや競争も革新もできないと言っている。明らかに同意できない」

 シャウ氏は、マイクロソフトにとって最も重要なのは、「広範な影響」を持つ技術を提供できる能力だと主張している。このパラダイムは、スピードよりも市場への普及に依存するという。「今になって、『あれをもっと早くやるべきだった』と言うことはできる。時にはそうするべきだったこともある。だが、非常に多くの人々に接する製品を提供する企業にとっては、スピードある革新ではなく、スケールのある革新が重要なのだ」

 特にアップルのiPad立ち上げが予想されていたことから、マイクロソフトはタブレットPCが近い将来ハードの世界を変える可能性があると認識したのだろう。そのため同社は1月のConsumer Electronics Show(CES)でタブレットPCを推進してきた。1月6日の基調講演で、スティーブ・バルマーCEOはHewlett-Packard(HP)製のタブレットPCを披露した。マイクロソフトと提携するほかのメーカーも、同イベントでマルチタッチスクリーンを搭載したタブレットPCやタブレットに変形するノートPCを展示していた。

 「携帯電話のように持ち運びできるが、Windows 7搭載PC並みにパワフルだ」とバルマー氏はHP製タブレットPCを聴衆に向けて掲げながら説明した。「この新しいカテゴリーのPCは、タッチ機能と携帯性を生かすはずだ」。このHPデバイスはWebサーフィンや電子書籍の閲覧、マルチメディアコンテンツ再生ができ、2010年中にリリースされる予定だ。

 ブラス氏はまた、マイクロソフトの電子書籍リーダー技術開発を、革新の失敗と内紛の例として挙げている。

 「私がマイクロソフトに在籍していた初期のころ、われわれの部門の聡明なグラフィックスの専門家らが、ClearTypeという文字の表示法を発明した。液晶ディスプレイのカラードットを使い、画面上で文字を読みやすくする技術だった。われわれはこの技術を電子書籍の販売を支援するために組み込んだが、これはディスプレイを搭載したすべてのデバイスで、マイクロソフトに大きなアドバンテージを与える可能性があった。だが、ほかのマイクロソフトの部門がわれわれの成功に脅威を感じ、この技術に腹を立てた」

 具体的には、ほかの部門のエンジニアや幹部が「ClearTypeは特定の色を使ったときに表示がめちゃくちゃになるとか、文字がぼやけて頭痛を引き起こすと嘘の主張をしたり」、プロジェクトを乗っ取ろうとしたりしたという。「結果、ClearTypeは世間では好評を得たし、社内でも推進され、特許も取ったが、完全に使えるバージョンがWindowsに載るまでに10年かかった」とブラス氏は言う。

 シャウ氏は、マイクロソフトは最終的にClearTypeを製品に統合したと主張している。ただ今のところ、電子書籍分野はAmazonなどのほかの企業に掌握されているが。「ディック(ブラス氏)は自身の主張を通すために、主にClearTypeを取り上げ、同技術は既存の事業部門によって『つぶされた』と言っている。(だが)ClearTypeは現在、すべてのWindowsに搭載されており、世界中で約10億台のPCにインストールされている。これは影響力のある革新、スケールのある革新のいい例だ」

 マイクロソフトはPC向けの電子書籍閲覧ソフトでAmazonなどの企業と提携しているが、Amazon、ソニーなどの電子書籍リーダーと競合する読書デバイスの開発には関心を示していない。

 バルマー氏は2009年10月に蘭エラスムス大学で、「われわれには読書のためのデバイスがある。世界中で最も人気のあるデバイスだ。それはPCだ。われわれ独自の電子書籍リーダーには興味がない」と語ったとReutersは伝えている。

原文へのリンク

(eWEEK Nicholas Kolakowski)

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