クラウド環境実現に向けたロードマップはこう描く日本HP、クラウド活用のコンサルティングサービスをスタート

» 2010年02月24日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本ヒューレット・パッカードは2月24日、クラウドコンピューティングの実現を支援するコンサルティングサービスを提供すると発表した。6つのコンサルティングメニューを用意し、「クラウドコンピューティング」という言葉の定義の確認から、クラウド環境を実現するためのインフラ設計/構築計画の策定まで、包括的に支援するという。

クラウドのメリットを享受する3つのポイント

 仮想化技術の浸透を受けて、必要なときに、必要な機能/リソースをネットワーク経由で利用できるクラウドサービスが急速に進展しつつある。しかし、ビジネス展開のスピードアップ、コスト削減といったメリットは広く知られていながら、クラウドサービスの効率的な利用法や、クラウド環境の具体的な構築方法については浸透しているとはいえない。

写真 日本HP テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部 ソリューションビジネス推進本部 宮原猛氏

 製品・サービスの提供を通じて、クラウドコンピューティングの浸透に注力している日本HPはそうした現状を見据え、今回のサービス提供に踏み切ったという。同社 ソリューションビジネス推進本部の宮原猛氏は次のように解説する。

 「クラウドのメリットを享受するうえでは、クラウドサービスをどんな目的に応じて、どう活用するかを策定した『ITサービス戦略』、集約した密度の高いITインフラの運用管理を簡便化する『コンバージド インフラストラクチャ』、ビジネスの継続性を確保できる『セキュアなIT運用環境』という3つのポイントが不可欠となる。しかし、これらを実現するためのノウハウやナレッジは、まだ多くの企業で不足している状況だ。弊社としては、これらの要素を確実に実現に導くための、さまざまなアプローチを紹介していきたい」

 3つのポイントを実現するために必要な要素も紹介した。まず「ITサービス戦略」については、ビジネスプランに沿ったクラウド導入の実現目標や、クラウドサービスを選択する際の検討項目、判断の指針などを明確化した「クラウドコンセプトとビジネスモデル」を策定する必要があるという。

 「コンバージド インフラストラクチャ」の実現には、既存のIT利用方式全般の見直し――特に、部門ごとに最適化したサイロ型のアプリケーションやシステム基盤を見直すことと、標準化・共有化に向けたガバナンスの策定やライフサイクル管理が不可欠になる。

 そして3つ目、「セキュアなIT運用環境」については、IT部門の意識変革が必要だという。「従来はユーザーの要請に応じて個別に機能を用意する“技術を提供するスタイル”だったが、今後はあらかじめニーズの高いサービスを用意し、要望に応じて提供する“サービスプロバイダ”としての役割が求められるためだ」(宮原氏)。

クラウド環境構築に向けて、ユーザー企業の議論を支援

 ただ前述のように、多くの企業において「クラウドという言葉の定義もあいまい」な状況にあるのが実態であり、これらを実現するためのハードルはまだまだ高い。そこで同社では、クラウド環境実現に向けた施策立案を効率的に支援できるよう、セミナー/ワークショップ形式と、個別コンサルティング形式のコースをそれぞれ3つずつ、計6つのコンサルティングコースを用意した。

 セミナー/ワークショップ形式のコースとしては、クラウドコンピューティングの定義や事例、成功要因などを学ぶ「Cloud Seminar Workshop」、同社が提唱する「コンバージド インフラストラクチャ」の実現をゴールと想定し、50問の質問に答えることで、ゴールに対する自社のITインフラの成熟度を定量的に把握できる「Converged infrastructure Maturity Model」、日本HPのコンサルタントのリードの下、ワークショップ形式でクラウド導入のロードマップを議論、策定する「Cloud Discovery Workshop」の3つを提供する。

 一方、個別コンサルティング形式としては、クラウド環境を導入するための全体的な計画を策定する「プラン策定」、どのクラウドサービスをどう使うかを策定する「プロセス策定」、「リソースプール型インフラ基盤の設計・導入支援」という3つのコースを用意した。こちらは、セミナー/ワークショップ形式よりも、さらに具体的な内容まで検討することを特徴としている。

写真 クラウド環境の実現に向けた基本的なロードマップと、その策定に必要な検討事項をセミナー/ワークショップ形式、個別コンサルティング形式の計6つのコンサルティングメニューで支援する。写真下段の6つの枠が今回紹介したコンサルティングメニュー

 中でも当面の間、同社が注力するのは、ワークショップ形式でクラウド導入のロードマップを議論する「Cloud Discovery Workshop」だ。これは、日本HPのコンサルタントのリードの下、ユーザー企業の代表者、5〜8人が9つのテーマについて議論し、クラウド環境導入に向けた具体策を詰めていくというメニューだ。

 具体的には、どのようにクラウド環境を社内に展開していくのか、全体的な構想のアウトラインを検討する「Setting the Scene」、クラウドコンピューティングの定義やクラウドサービスに対する理解を共有・統一する「Cloud定義」「Cloudサービスとは?」と、基礎的な内容を確認するためのテーマを3つ用意した。

 さらに、「トランスフォーメーション・ジャーニー」というテーマでクラウド環境構築に向けたロードマップを策定したうえで、「Cloud ファイナンス/ROI」「Cloud インフラストラクチャ」「Cloudサービスマネジメント」「Cloud セキュリティと可用性」「組織とガバナンス」といったテーマについて議論することで、クラウドコンピューティングの定義の確認から、その費用対効果、インフラ構築、クラウドサービスの運用体制、インフラ標準化に向けたガバナンス面まで、クラウド環境導入に必要な検討事項を、包括的かつ効率的に議論できるよう設計している。

 ポイントは、HPが蓄積してきたクラウド環境構築・運用のノウハウ、事例などをまとめた資料パネルを各テーマに用意し、皆で資料を参考にしながら議論を進めること。また、日本HPのコンサルタントが議論をリードすることで、クラウド環境の導入目的や目指すべきゴール、そのための実現手段など、ロードマップ策定のポイントとなる項目について、効率的に意見を引き出せることにあるという。

写真 ワークショップで出された意見の要点を、日本HP側のスタッフがカードに書きとめ、クラウド環境実現に向けたロードマップを示すテーブルの上に貼り付けていく。これと資料パネルを参考に、参加者の見解の統一を図りつつ議論を活性化させ、最適な施策へと収束させていく

 日本HP側のオブザーバーが意見の要点をカードに書きとめ、ロードマップを示すテーブルに貼り付けていく点も特徴だ。資料パネルやカードを確認しながら議論を活性化させ、結論に向けて効率的に意見を収束させていくという。

 宮原氏は「グローバル単位で蓄積した、クラウド活用のナレッジ・ノウハウをまとめた資料パネルと、効率的に意見を引き出し、まとめ上げていくノウハウがこのサービスのポイント。また、ユーザー企業の最終的な目的はビジネスの効率化や収益向上にある。その最終目標を見失わず、場合によってはクラウドを導入すべきではないという結論も含めて、幅広い視点から柔軟に最適解を引き出す支援をするのが本ソリューションの特徴だ」と力説した。

 「Cloud Discovery Workshop」は、すでに製造業や金融業のユーザー企業にベータ版を提供しており、サービスとして手ごたえをつかんでいるという。価格は個別見積もりとなるが「数十万円単位」。議論した内容とそれに対する日本HP側のレコメンドをまとめるレポートサービスもオプションで用意している。

 

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