SaaS版弥生をWindows Azure上で2011年中ごろに提供開始3年間で36万社の“業務IT化”を推進

» 2010年03月26日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 弥生とマイクロソフトは3月26日、ITの導入によって中小規模事業者の業務効率化を促進する分野で協業したと発表した。両社で同分野の啓もう活動などを行うほか、「弥生SaaS(仮称)」(以下、弥生SaaS)をWindows Azure上で提供すると発表した。

協業によって、3年間で36万社の“業務IT化”を推進

 現在、日本の企業総数は420万社で、そのうち従業員300人以下の企業が99.7%を占める。弥生ユーザーは、1人の企業が38%、2〜5人の企業が38%、5〜10人の企業が11%で、10名以下が全体の87%を占めるという。

 このような中小企業の会計・経理業務は、小規模になればなるほど外部委託しているものの、20名以下の企業では75%が経理業務を何らかの形で社内処理している。しかし、その処理方法は小さい企業ほど手作業が多い。例えば、会計業務の場合、1〜19名規模の企業では39%が「手書き」で一番多く、「外部委託」27%、「市販のパソコン用業務ソフト利用」26%と続く。これが給与計算の場合、同じく「手書き」が53%、「表計算ソフトを利用」27%、「市販のパソコン用業務ソフト利用」9%だった。

 弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏は、「当社がターゲットとする20名以下企業366万社のうち、約半数がいまだに会計や給与処理を手書きで行っている。つまり、これらの企業にはまだまだ市場機会が存在する。今回の協業によって、これらの企業に対して、業務インフラ、ITインフラの両面からアプローチし、3年間で10%の36万社の“業務IT化”を促進したい」と抱負を語った。

共同セミナーなどを積極的に実施して、啓もう活動を展開

 今回の協業では、「中小企業の業務IT化推進のための啓もう活動」「中小企業の業務IT化促進のための販売促進活動」「最新プラットフォームへの対応」「弥生SaaSの提供開始」の4点を主軸とする。

 「中小企業の業務IT化推進のための啓もう活動」では、両社主催によるセミナーや他社イベントへの共同出展を行う。また、IT化の相談受付窓口として「マイクロソフトIT化支援センター」を両社で活用するほか、起業家向け「Microsoft BizSpark」とWeb開発者向け「Microsoft WebsiteSpark」を両社パートナー向けに提供していく。

 「中小企業の業務IT化促進のための販売促進活動」では、PCメーカーと協力して「PC+弥生シリーズ+マイクロソフト製品」の特別パッケージを販売するほか、家電量販店と協力して業務ソフトセミナーを開催。また、両社の既存パートナー企業のネットワークを活用してさまざまな取り組みを行っていくとした。

 「最新プラットフォームへの対応」では、弥生の最新版「弥生 10シリーズ」がすでに「Windows 7」「Windows Server 2008 R2」「SQL Server 2008」に対応しているほか、2010年前半に提供予定の「Microsoft Office 2010」にも早期に対応予定だ。

 岡本氏は、「積極的に両社でセミナーを実施して啓もう活動を行っていく。今回ターゲットにしている規模の企業では、ITの側面からのアプローチだけではだめだ。例えば、家電量販店で開催予定のパソコン教室は最大でも10人の小さい空間だ。このようにユーザーと近い位置でふれあい、地道に啓もうしていくことが非常に重要だ」と語り、地道な啓もう活動を続けていく方針を示した。

弥生SaaSは、携帯電話の利用料金程度で2011年半ばに開始

 「弥生SaaSの提供開始」では、Windows Azureを開発プラットフォームに採用。Silverlightを使ったRIA(リッチインターネットアプリケーション)を目指すとした。2010年半ばにクローズドベータテストを開始し、2011年半ばに商用展開を目指す。

 弥生SaaSは、現在の弥生シリーズとは異なる製品を目指すべく、ゼロから作り直す。最大の特徴は、従来の「弥生 会計」や「弥生 給与」など業務カットの製品体系とせず、業務を横串的に使えるような形態にする点だ。従来のパッケージ版も開発・販売は継続するが、パッケージ版とSaaS版は機能的に徐々に近づいていくという。

 岡本氏は、「ターゲットとする中小企業では、複数の役職を兼務している場合がほとんどだ。その実態を踏まえて、販売や会計などを意識せずに使えるようなスタイルにしようと考えている。例えば、現在のパッケージ版の場合、会計処理をする場合には『弥生 会計』を、給与計算する場合には『弥生 給与』を別々に立ち上げて利用しなければならない。このような状況を解決するためにこのような仕様にした。価格は、携帯電話やISPの月額利用料程度に抑えたい」と説明した。

 また、マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏は、「中小企業では、コスト削減や業務効率化のニーズが高いものの、IT化が遅れている。まだ半数の企業で手作業が残っており、ソフトウェアが生かされていない。普及へのポイントは業務への直接的な影響度や低価格で展開できることだ。この点、中小企業へはクラウドコンピューティングが非常に有効だ。その意味では、中小企業に圧倒的な影響力を持つ弥生との協業は大きなインパクトを持つ。『パッケージを買うのはなぁ……』と初期投資を悩んでいるユーザーには、弥生SaaSなどは最適だろう。今後もWindows Azureをプラットフォームとした提携を広げていきたい」とコメントし、今回の協業への期待を示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ