SAP、「2014年にはユーザーを10億人にする」スカウターでデータを取得し、業務の戦闘力をアップ!?

» 2010年04月01日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 SAPジャパンは4月1日、同社R&D部門による研究開発の最新動向について説明会を行った。従来は、ERPやSCM、CRMなど、企業のバックエンドを支えるシステムの機能向上に注力してきたが、今後はそれらの利用シーンを拡大する方向性を加え、「現在グローバルで3500万人のユーザーを、2014年には10億人に増やす」構えだという。

バックエンドの機能を、もっとユーザーに近付けたい

 同社のR&D部門には、全社員5万人のうち1万5000人が在籍し、研究開発に毎年約2500億円の投資を行っている。R&D部門はDevelopment Center、Research Center、Co-Innovation Labsの3つに分かれており、中でも現在、特に重要な役割を担っているのが企業や自治体など、社外との協働プロジェクトとして参加型研究開発を進めるCo-Innovation Labsの活動だという。Co-Innovation Labs Tokyo イノベーションデザイン&デベロップメント担当の馬場渉氏は次のように解説する。

写真 Co-Innovation Labs Tokyo イノベーションデザイン&デベロップメント担当の馬場氏

 「SAPはERPをはじめバックエンドの業務システムが支持されている半面、2〜3年周期で変化する技術動向、ユーザー動向に追従するのはうまくないというイメージが強い。しかし90年代のERP、2000年代のSOAなど、10年周期で訪れる抜本的な変革は確実にキャッチアップしてきた歴史がある。そして、現在もそうした新しい周期を迎えつつあり、弊社では“On Demand,On Device”をキーワードとして掲げている。ユーザーが必要なときに、必要な機能を、即座に利用できる環境――現在のバックエンドの機能を、もっとユーザーに近付けて利用シーンを拡大し、より直接的に貢献できる環境を整備したい考えだ」(馬場氏)

 そうした考えに基づく多数の協働事例があるという。例えば、米国の国家安全保障局との事例では、水害時の危機管理システムを開発。大きなスクリーン上に広域地図を表示し、そこに水害の状況を視覚的に表したり、軍や消防などの情報を同一の画面上で即座に把握できる仕組みを開発した。南アフリカ共和国との事例では、情報格差が大きい農村地帯の商店主にシンプルに操作できる携帯電話を配布。食品工場に携帯電話から発注したり、納期の確認などが行える仕組みを提供し、サプライチェーンをスムーズに運用できる環境を整備したという。

 また、同社は2009年11月に、入力したキーワードに最適な情報を社内システムから検索、ピックアップして表示するBI製品、「SAP Businessobjects explorer」をリリースしている。この機能をMicrosoft PowerPointと組み合わせることで、ファイル上で使われている言葉をキーワードとして認識し、それに関連深い社内情報を社内システムからピックアップ、PowerPointの画面上に表示させる機能や、「音声認識機能と組み合わせて、会議中の発言者の言葉に応じて、スライド画面に関連情報を表示する仕組みなども開発中だ」という。

写真 スカウターの画面に部品情報をタイムリーに表示する

 以上の機能を活用したダイムラーAGとの協働事例では、その工程で必要な部品の情報や、保管場所などの関連情報を自動的に表示するスカウターを開発。製造スタッフの部品のピックアップ作業を効率化する仕組みを提供した。

 「これらの事例の目的は、バックエンドの機能をユーザーにもっと近付けること。システムの機能を向上させるだけではなく、今後は“人”に焦点を当て、より直接的にユーザーの業務や日常生活に貢献できる仕組みを提供していく。コンシューマー向けの製品を開発するという意味ではなく、Twitterのようなリアルタイム性と手軽さを業務システムにも取り込んでいくという考え方だ」

2014年には“直接貢献できる”ユーザーを10億人に

 3月30日に発表した協力型意思決定支援ツール「SAP Stream Work」もその一環だという。これは同一のソフトウェアプラットフォーム上で各種文書やアプリケーションの機能、業務データなどを共有できる製品で、関係者同士の業務連携や意思決定を支援する製品だ。これにBPM機能を付加することで、意思決定に基づいて即座にビジネスプロセスを変更・改善できる機能も検討しているという。

写真 今後は多くのユーザーにとって、より日常的に使えるよう機能を強化していく

 馬場氏は、「現在、SAPのシステムが1年で処理する公益企業の請求書は全世界で25億通、毎日300億円の売り上げ処理をこなすなど、弊社システムは世界のGDP総計のうち60%にかかわっている。こうした各種処理のうち代表例としては、全世界のiTunesユーザー3億人分、電力会社の顧客7億人分、計10億人分の請求書処理が挙げられる」と解説。

 ただ、現在はこれらのユーザーに対して、システムの機能が“間接的に”貢献しているに過ぎない。そこで今後は「バックエンドの機能を“人”に近付け、より直接的に寄与できるようにする」ことを1つの目標として、「現在のライセンスベースでのユーザー数、3500万人から、2014年には10億人を“直接的に貢献できる“ユーザーとしたい」と力説した。

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