複数人で画面を物理的に共有する新しい用途に期待

デカくて速いiPhone!? iPadを使ってみた

2010/04/06

 米国で発売されたばかりのiPadは滑り出しは上々のようで、すでに4〜6月期の販売台数を82万5000台と見積もるアナリストもいる。国内でもビジネス的に勝負をかけている人々は手に入れているし、気の早いアーリーアダプター層も、こぞってハワイなどから人手で持ち込まれるiPadを受け取っているようだ。

 そうしたアーリーアダプター層の1人にiPadを触らせてもらえる機会があったので、ここで動画を交えつつ、読者の皆さんとファーストインプレッションをシェアしたい。

ipad01.jpg iPhone、Kindle2、iPadを並べて見ると、それぞれのサイズの違いが分かる

第一印象:「デカくて速いiPhoneだ!」

 前評判や動画で知っていた通り、iPadを操作してみた最初の感想は「デカくて速いiPhoneだ!」というものだ。ただ、これには結構驚くべき逆の感想が控えていて、しばらくiPadを使った後にiPhoneに戻ると「なんだ、このちびっこいiPadは!」と、その画面の狭さやアイコンのひしめき具合に驚くということが起こる。もしWebサーフィンをiPadで日常的に続けるようになれば、どこかの時点でiPhoneを不自由に感じるのかもしれないな、という予感がある。





意外に重たいし、かさばる

 私はiPadのサイズには懐疑的だ。

 特に電子書籍リーダーとしてみると、ちょっと重すぎるように思う。重量680グラムというのは、よく比較対象とされていたKindle2(国際版と呼ばれているもの)の292グラムと比べると、2倍以上の重さだ。私は過去半年ぐらいにわたってKindle2で本を読んでいるが、両者を直接的に比べるのは自転車とバイクを比べるようなものだと思う。Kindle2が、軽さ、いい意味での安っぽさ、落としてもまあ大丈夫という安心感、電源を切っていても何かを表示している電子ペーパーの特性から来る印象といい、本当に紙に近い存在に感じられるのに対して、iPadはずっしりと中身の詰まったハイテクデバイスそのものという印象だ。長時間触れたわけではないので分からないが、iPadは片手で長時間もつにはツラそうだ。

 実はモバイルインターネットがもっとも活用されている場所の1つ、「寝床」での利用シーンにおいては、iPadのサイズと重さでは実はiPhoneに勝てないのではないか、というふうにも感じる。

 私はiPadに触れる前には、むしろKindleのような電子ペーパーデバイスにはあまり未来がないかなと思っていたが、iPadを手にしてその「重さ」を感じてみて、ちょっと考えが変わった。Kindleのようなデバイスが、読書人を中心に人気を維持することはあり得るのではないだろうか。

 フォームファクタや能力的にみて電子書籍端末としてもiPadが有力と思っていたのだが、どうも疑問に感じるようになった。そもそも、Kindleサービスを利用するのにもっとも適したデバイスは、実はiPhoneではないかと個人的には思っている。KindleはPCでもiPhoneでも電子ペーパーでも同じように読めるのだが、取り出しやすくて軽く、スクロールもスムーズという理由から、iPhoneでの読書時間が一番長い。

ブラウザが快適!

 Webブラウザの体感的な速度やスムーズさは、ネットブックのような非力なPCを超えた感がある。画面サイズは十分で、ほとんどのWebサイトはリサイズせずに表示できるし、スクロールやズームは極めてスムーズだ。

 Webブラザを使っていて1つ驚いたのは、Safariを使ってYouTubeで動画を表示したとき、サムネイルでそのまま再生が始まったことと、リバース・ピンチ操作でいきなり全画面表示で再生されたことだ。

新聞誌面もバッチリ再現

 産経新聞がiPhone向けに提供している専用アプリを使ってみると、画面サイズが変わることで質的な変化が起こり得るのだということがハッキリと分かる。iPhoneでは小さな窓から新聞を無理やり覗き込んでいて、すぐに自分がどこを見ているのか分からなくなる感覚があるが、iPadぐらいのサイズになると新聞っぽくなってくる。現在のような新聞のレイアウトが、今後のメディアのあるべき姿であるとはあまり思わないが、長年培われたレイアウトのノウハウは今でも有効だと改めて認識する。

 ポイントは、新聞を読むために空港やレストランでPCは開かないが、iPadなら開くかもしれないと思わせる何かがあるところだ。電源を入れたらすぐに起動することや、ラーメンが来たらすぐにプツリと電源を落とせること、こうした手軽さは圧倒的だ。

2ペイン表示のGmailや設定画面が便利

 Gmailに限らないが、画面が広いということは左右にナビゲーションのためのメニューを常時表示しておけるということだ。HTML版のGmailを使うと、左側にメール一覧、右側に一連のメールのやり取りが2ペインで表示される。

 iPad全体の環境設定メニューのような項目でも、iPhoneであれば階層を降りたり登ったりするところが、メニューから項目をクリックするだけで設定画面が右側に見えて直接設定可能というのが使いやすい。

手書きコミュニケーション復活の予感

 簡単な手書きによるペイントアプリケーションを試してみて感じたのは、手書きコミュニケーション復活の予感だ。

 例えば、さらさらと指で絵を描いてメールやTwitterに投げるということがiPadなら簡単にできる。上の動画では「Draw」というアプリケーションを使っている様子もあるが、同じ画面上で絵をいじりながら何かができて、それをそのままネットに送れるというのは新しい使い方を予感させるのに十分だ。

 何かを人に説明するときに、ちょっとした図を描くとコミュニケーションの手助けになることがある。そうした用途でも、iPadは活躍しそうだ。

キーボードは外付けならメモ程度は可能

 iPadではサイズの大きなソフトウェアキーボードが利用できるが、iPhone以上に文章が打ちやすいということはない、というのが私の感想だ。もともとiPhoneのフリック入力なら、あまりストレスなく長文を書ける。Bluetooth接続の外部キーボードも試したが、これは快適だ。メモ用途なら十分と言える。

 ちなみに、デバイスの話でいえば、バッテリ持続時間は結構十分という印象だ。合計3時間以上も通信や動画再生を行っていたが、バッテリ残量は70%以上。むしろ、通信に使ったイー・モバイルのPocket WiFiが先にバッテリ切れとなりそうだった。もう1つ、通信のことをついでに書くとiPhoneとは利用シーンが異なり、iPadは割と腰を落ち着けて使うことが多いだろうから、WiFiルータ系のデバイスとの相性がいいかもしれない。

iPadでPC(パーソナル)からソーシャルなコンピュータへ

 iPadがこれまでの端末ともっとも異なる点は、周囲にいる人たちと画面を共有できるというところだと思う。PCにしろiPhoneにしろ“パーソナル”なコンピュータとして発展してきたものが、iPadではじめてソーシャルになるのではないかと思う。

 例えば、私はよくiPhoneで地図を表示してタクシーの運転手に見せるのだが、老眼の運転手だと申し訳ない気持ちになるぐらい小さい。しかしこれがiPadなら、十分に大きく、同じものを見ながら指で示したり、実際にスクロールさせながら、「ああ、そっちじゃなくて、ここです」というようなやりとりができそうだ。

 あるいはこういう例もあるだろう。パソコン2台をちゃぶ台に載せ、家族が対面で旅行か何かの調べ物をしているようなときに感じる、あの「壁」の邪魔さ。垂直に立ったディスプレイは話者を隔てる壁以外の何ものでもない。PCを持ち上げて180度回転させ、それで相手に画面を見せるという行為は矛盾に満ちている。かといって2人で1台のPCの画面を見ていると、後ろで見ている人がもどかしく感じることになる。「そうじゃなくて、もっと画面のこっちの……、いやいや、こっち、そっちじゃなくて、もうーっ! ちょっとやらせて! 」。iPadならすぐに渡して操作も任せられる。PCのようにわざわざ席を譲る必要がないし、iPhoneのように渡したが最後、もう自分には見えないということにもならない。

 iPhoneは写真アルバムを人に見せるのに優れたデバイスだと思っていたが、その閲覧体験自体はやはり準パーソナルという感じだった。「これ、この前のパーティーの写真なんだけど見てごらん」とデバイスを誰かに渡す。すると、デバイスを渡された人は写真を次々に繰って基本的にはそれを1人で見る。それがiPadであれば、デバイスの周囲にいる人すべてが同じものを見ることができる。PCでは液晶デバイスのアングルや視野角の問題から、PCを操作している人の背後に扇状に人々が集まる形になり、それぞれが横を向かないと人の顔が見えない。テーブルに置いたiPadなら、それを囲む人々は丸くなるだろう。食事などでは、もともと対面で座っていることが多いから、そのままの状態で画面が共有できる。こうした違いは大きいと思う。

上の動画でも、新聞アプリの操作方法を巡って実は2人のユーザーが同時に画面を見て操作しているが、それが実に自然に起こっているのが分かると思う。

 仕事の打ち合わせや顧客との商談ではどうだろうか。オフィス文書の打ち出しを持っていくよりも、画面を見せて「どうですか」とやればいいし、その場で編集も可能だろう。こうした利用の仕方なら、Google Docsようなクラウド型のサービスが非常に強い説得力を持ってくる。もちろん、Keynote、Numbers、Pagesといったアップル製のオフィスもある(これらは素晴らしいUIを実現している)。

 物理的な画面共有という点で、iPadは今までのPCやスマートフォンとは異なる何かだという印象を受ける。

 もしiPadが巨大なiPhoneでしかないとすれば、われわれのライフスタイルにどう入ってくるのかよく分からないところがある。しかし一方、われわれはまだタッチで操作可能なタブレット型ネットワーク・コンピュータというものの可能性や、その落ち着きどころを知らないのではないかとも感じる。それはもしかすると、グーグルのChrome OSやマイクロソフトのCourierといったタブレット型OS+デバイスが出そろい、多くの実験的アプリケーションが生み出されてからでないと分からないことなのかもしれない。

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(@IT 西村賢)

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