企業価値向上を支援する財務戦略メディア

「時間との勝負だった」と振り返る

国内初のIFRS任意適用、日本電波工業が決算発表

2010/05/13

PR

 日本電波工業は5月13日、2010年3月期の決算を発表した。IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)を任意適用した国内企業初の決算発表で、会見した同社の専務取締役財務本部長の若林京一氏は「時間との勝負だった」と振り返った。

 同社は2002年3月期から海外向けのアニュアルレポートについては連結財務諸表をIFRSで公表している。ただ、国内については日本基準で連結、単体の財務報告を行っていた。

 同社は2010年3月期決算について、公表したIFRSベースの数値と、日本基準に組み替えた数値の2つを参考のために公表した。また、決算短信でも注記で詳しく説明している。開示に関する違いではIFRSベースの決算と、日本基準ベースの決算では営業利益が大きく変化している。日本基準の損益計算書では「営業外損益及び特別損益(金融損益をのぞく。)」を計上していたが、IFRSではこれが「その他営業損益」として営業利益の段階で計上する。これによって日本基準では48億5500万円だった営業利益が、IFRSでは39億7900万円となり、数値上は8億7600万円減る。研究開発費(発生時に費用処理)と遊休固定資産減価償却費の減少、これまで認識していなかった有給休暇費用の引き当て増加も営業利益に影響を与えているという。

ndk01.jpg 日本電波工業の専務取締役財務本部長の若林京一氏

 また、売上高を日本基準の出荷基準からIFRSの着荷基準に変更したため、日本基準で決算を行った場合と比較して、IFRSでは6000万円減少している。有形固定資産も日本基準とIFRSとの差異が大きいとされるが、同社は2010年3月期に有形固定資産の償却方法を従来の定率法から定額法に変更した。2009年3月期には主要な機械装置の耐用年数についても税法ベースから実態ベースに変更。それぞれをIFRSに合わせた。

 若林氏は「設備投資を短期間に回収できるなら定率法が向いているが、われわれが作る製品は丁寧に長く使っていただく傾向がある。そのため最初に大きく(定率法で)償却しないで、(定額法で)平準に償却する方が実態に合っている。海外の生産会社はすでに定額法を採用していて、実績のあるそちらに合わせた」と話した。

 包括利益には為替換算調整勘定や保有株式の評価差額がその他包括利益として計上され、影響を与えるが、換算損益は2009年3月期の8億4200万円のマイナスが、2010年3月期には3億100万円のマイナスになった。保有株式についても2億1600万円のプラスになった。税引後その他包括利益は1億6900万円のマイナス。当期利益が43億3700万円だったので、差し引き、当期包括利益は41億6700万円となった。

早めにスタートするのが大事

 日本電波工業が2002年3月期にIFRSによるアニュアルレポートの発行を決めた背景には、レジェンド問題がある。日本基準の財務報告では欧州の投資家や顧客の信頼を得られないと判断し、IFRSの採用を決めた。IFRSによる財務報告については8年の経験がある同社だが、国内での任意適用については「時間的余裕がなかった」(若林氏)という。

 同社は国内の単体決算を日本基準で行い、17社の連結子会社はIFRS、米国会計基準、ローカルの基準で決算を行っている。今回のIFRS任意適用では、それらの単体決算からIFRSの連結財務諸表と日本基準の連結財務諸表をほぼ同じタイミングで作成した。これまでのアニュアルレポートは日本基準の連結財務諸表を作成したあとに編成していたので、時間的な余裕があったが、IFRSの任意適用ではそれが同じタイミングになったために時間のやりくりが難しくなった。若林氏は「会社からの絶大な支援もあり、今日の発表にこぎ着けた。チームワークで乗り切った」と振り返った。

 若林氏は今後、IFRSを適用する企業に対して「事前にできるだけ準備をして早めにスタートするのが大切」とアドバイスし、「実務と理論を並行してやっていくのがいい。一方に偏ると危険だ」と指摘した。また、IFRS適用プロジェクトを引っ張る人材として「頭数だけでなく能力のある人をいかに集めるかがポイント」として「自社の財務、経理担当をきちんと育てて、ノウハウと経験を積ませることが大事。そのような人を確実に持つことがIFRS適用のベースになる」と話した。

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

情報をお寄せください:

@IT Sepcial

IFRSフォーラム メールマガジン

RSSフィード

イベントカレンダーランキング

@IT イベントカレンダーへ

利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | サイトマップ | お問い合わせ
運営会社 | 採用情報 | IR情報

ITmediaITmedia NewsプロモバITmedia エンタープライズITmedia エグゼクティブTechTargetジャパン
LifeStylePC USERMobileShopping
@IT@IT MONOist@IT自分戦略研究所
Business Media 誠誠 Biz.ID