Business ByDesignでオンデマンドビジネスのリーダーにSAP CEOが基調講演、新バージョンから本格量販を開始

» 2010年05月19日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 独SAPは5月18日、ドイツ・フランクフルトで年次イベント「SAP SAPPHIRE NOW」を開催。基調講演は、2月に同社共同CEOになったジム・スナーベ(Jim Hagemann Snabe)氏とビル・マクダーモット(Bill McDermott)氏が、それぞれフランクフルトと米国オーランドでそれぞれ登壇するという珍しいケースとなった。

SAPはインメモリとモバイルで他社と差別化する

 最初に登壇したのは、オーランドのマクダーモット氏。マクダーモット氏は、現在複雑化しているビジネス戦略の問題を、SAPを中心としたエコシステムが解決していると強調。中でも、データの爆発的急増が非常に問題となっており、「データが18カ月ごとに倍増しており、急激に環境が変化し続けている」と警告。その解決に貢献するのがインメモリテクノロジであり、高速解析・分析をはじめとするさまざまなリアルタイムサービスを実現しているとした。

マクダーモット氏写真 フランクフルトの会場ではオーランドで講演するSAP 共同CEO ビル・マクダーモット氏の様子がスクリーン上で映し出された

 例えば、消費財大手の米P&Gの場合、世界180カ国で22のブランドを展開しているが、同社のCEOは毎週月曜日に世界各地のリーダーとバーチャルボールドルーム(仮想役員会議)を実施。各国の状況をリアルタイムで把握しているという。その際、インメモリテクノロジを活用した在庫管理や各種分析を実施することで、コミュニケーションを円滑化しているほか、データの透明性も確保できているとした。

 続いて同氏が強調するのが「Unwired Enterprise」。モバイルエンタープライズ分野だ。中国を代表とする新興国では、PCを持たずにモバイル端末でインターネットにアクセスするユーザーが急増。手のひらの中のモバイル端末でどこからでも、情報分析・解析する時代が訪れてきており、そのような利用形態が新しいエンタープライズビジネスを構築しているとした。

 そのような背景から、同社はモバイルビジネスのリーダーである米サイベースを5月14日に買収。すでに同社が持っているエンタープライズアプリケーションと、エンタープライズアナリティクスをモバイル上で展開することで、モバイルビジネス市場も一歩リードできると胸を張った。

Business ByDesignは現在100社が利用。これからが量販体制に

 続いて舞台はフランクフルトに移り、同じく共同CEOのジム・スナーベ氏が登壇した。スナーベ氏は、コンピューティング環境の変化に言及。レガシーシステムから始まり、その後サーバ/クライアント型へ移行。いままた転換期に入り、クラウドコンピューティングが台頭してきている、と指摘した。

 一方で、マクダーモット氏が指摘したようにデータは爆発的に増加しており、ユーザーが意思決定をするうえでの判断材料も増加。意思決定の難易度も上がっているとした。この状況を「Googleの登場によって、藁の中から針を見つけることができるようになった。そして、人々はその針で意思決定をするようになった。しかし、藁が年々大きくなっているため、針を見つけるのが難しくなっている」と例える。

 SAPはこの問題を解決するため、「On Premis(オンプレミス)」「On Demand(オンデマンド)」「On Device(オンデバイス)」の3分野でサポートするという。「On Premis」は同社の独壇場であり、ビジネスドライバーでもある。その主力製品はERP製品「SAP Business Suite 7」であり、2010年後半にはインメモリ技術を応用したエンハンストパッケージをリリースする予定だとした。

スナーベ氏氏写真 壇上ではスナーベ氏が「もう手放せない」と語るiPad上でBusiness ByDesignをデモした

 「On Demand」では、2つのアプローチで取り組んでいくという。1つ目は、比較的小さなステップで、具体的にはミッションクリティカル以外の領域、SFA/CRMの領域から取り組んでいくという。この分野における差別化ポイントは、同社の既存のオンプレミス環境とシームレスにインテグレートする点だ。この連携によって、SFAからのデータが受注や会計などの既存システムとスムーズに連携できる点は大きいという。このようなサービスを年内に発表する予定だという。

 2点目は、企業経営のすべてのプロセスをOn Demand化するアプローチだ。主にホスティング型ERPサービス「SAP Business ByDesign」が担う。

 Business ByDesignは、現在先行して6カ国で提供中で、約100社が利用中だと言及。この100社からさまざまなフィードバックを得て、2010年7月には新バージョン2.5をリリース予定だ。バージョン2.5ではiPad対応などモバイル対応を強化。「新バージョンのリリースでBusiness ByDesignも、ついに量販体制に入ったといえる。準備が完了し、量販していくことで、オンデマンドビジネス分野でも当社はリーダーになれると確信している」(スナーベ氏)と語り、オンデマンドビジネスで後発ではあるが、既存ビジネスと連携することで巻き返しが見込めることを強調した。

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