伊藤忠、グローバル人事データベースをクラウド化米サクセスファクターズのSaaS型パフォーマンス管理製品を採用

» 2010年08月26日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 伊藤忠商事は世界人材戦略の取り組みの一環として、グローバル人事データベースを新たに構築。その際、米国を中心に急激にユーザーを増やしているSaaS型パフォーマンス管理サービス「SuccessFactors」を採用した。伊藤忠商事 人事部 世界人材戦略室長代行 佐藤泰美氏は、「伊藤忠として、初めてのクラウド導入だったので、特にセキュリティ面はIT部門とともに慎重に精査した。導入の決め手となったのは、導入期間の短さと自社制作に比べてコストが4分の1になる点だった」と語った。

 米サクセスファクターズは2001年創業のベンダで、SaaS形式で社員のパフォーマンス管理・最適化サービス「SuccessFactors」を提供している。185カ国、31言語にまたがり、3100社以上で810万ユーザーが利用中だという。2009年度の売上高は1億5310万ドル。ワールドワイドでは、独シーメンスが最大のユーザーで現在40万ユーザーが利用中だという。日本では、リクルートや伊藤忠、武田薬品工業など160社、1万8000ユーザーが利用中。

ラーソン氏写真 米サクセスファクターズ ワールドワイドセールス担当副社長 ジェイ・ラーソン氏

 米サクセスファクターズ ワールドワイドセールス担当副社長 ジェイ・ラーソン(James Larson)氏は、「810万ユーザーにSaaSを提供しているのは、世界最大だろう。salesforce.comでさえ180万ユーザーだ。セキュリティ面でも、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングを防御する独自の特許技術を導入し、強化している。当社のような『ビジネスの実行』に注力した市場は潜在的に360億ドルと試算されている非常に大きな可能性を秘めた市場だ。リーマンショック以降の不景気もあり、企業は人材パフォーマンスの最適化や効率化にいま非常に注目している」と説明した。

 SuccessFactorsは、企業戦略の実行に必要な「目標」「コミュニケーション」「パフォーマンス管理」「後継者計画」などの機能を提供するスイート製品。外部連携では、「SOAP 1.1」「SOAP 1.2」に準拠しているほか、50種類以上の他製品とのデータコネクタを用意。さらに外部アプリケーションとSuccessFactorsのワークフローを連携するAPIも用意されている。「現在のところ、顧客の75%が大企業だが、中小企業も利用中だ。多くの企業が最初はパフォーマンス管理、ゴール設定など3つ程度の機能から利用を始め、そこからモジュールを増やしていく傾向が強い」(ラーソン氏)。

自社開発に比べて4分の1のコストで人事データベースを構築

 伊藤忠は2007年4月に中期経営計画「Frontier+ 2008」を策定。真のグローバル展開を目指すこととなった。それに伴い、北米、欧州、アジアなど世界6拠点に世界人材・開発センター(GTEC)を、東京に本部・事務局を設置した。GTECでは、世界人材戦略を推進するため、いままで各地で異なっていた人材管理方法・基準をグローバルで統一。そのデータベースとして、グローバル人事データベースの構築を決めた。

佐藤氏写真 自社の導入事例を語る伊藤忠商事 人事部 世界人材戦略室長代行 佐藤泰美氏

 グローバル人事データベースでは、氏名や肩書といった人材基礎情報や最終学歴、資格/研修受講履歴、キャリア計画、処遇、評価など全65項目の管理項目を管理。北米や欧州、アジア、中国、日本など世界6拠点に点在する独自データベースから、これらの管理項目を収集し、グローバル人事データベースで一元管理する。

 グローバル人事データベース構築に当たって、同社では「自社システム開発」「他社クラウド型システム」「SuccessFactors」の3種類で検討。SuccessFactorsは、導入コンサルフィーと年間使用料を含めた構築・ランニングコストで、自社開発と比較して4分の1程度のコストになったという。また、自社開発の場合、導入期間が最短6カ月〜1年間なのに比べて、SuccessFactorsでは最大3カ月で導入できる点もポイントだった。

 佐藤氏は、「2010年5月に導入を開始し、7月末にはほぼシステムが完成し、データの流し込みなども含めて8月中旬には構築が完了した。コスト削減に加えて、この導入の早さは非常に魅力的だった。当社はクラウドサービスを本格導入するのは初めてで、さらに“人事情報”という最もセンシティブなデータをクラウド化するのにはさまざまな意見も噴出したが、社内システム部と慎重に検討した結果、問題ないことが判明。メリットを考えて導入に踏み切った」と導入の理由を説明した。

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