VMworld 2010で多数の製品を発表

ヴイエムウェアは「サービスとしてのIT」で何を目指すのか

2010/09/02

 米ヴイエムウェアは8月31日(米国時間)、米国カリフォルニア州サンフランシスコで「VMworld 2010」を開幕、企業ITの改革に向けた多数の発表を行った。これらを貫くものとは何なのか。CEOのポール・マリッツ(Paul Maritz)氏、そしてCTOのスティーブ・へロッド(Steve Herrod)氏による基調講演やプレスに対する説明から、同社の意図を探る。

 今回のVMworldにおけるヴイエムウェアの数々の発表に共通する最大のテーマは“IT as a Service”(サービスとしてのIT)だ。同社の定義によれば、IT as a Serviceとは「ビジネスのための消費に向けてITのプロダクション(環境構築)を最適化する」ということ。これまで企業は、サーバ仮想化を活用してまずコスト削減/効率向上を進め、次にサービス品質の向上を図ってきた。その次のテーマは、IT as a Serviceを通じた「ビジネス価値の提供」、すなわち事業ニーズに対してIT環境を同期化することだという。具体的にいえば、これはデータセンターインフラの仮想化を次の段階に進めるとともに、新たな業務アプリケーション構築・運用環境を整備していくことを意味する。

 マリッツ氏によれば、これはヴイエムウェアだけが仕掛けていることではない。IT業界全体が進んでいる方向で、「誰もこの流れを止めることはできない」という。特にAmazon EC2やSalesforce.comに代表されるクラウドサービスは、一般企業の経営陣やユーザー部門に対し、従来とは異なるIT消費の仕方があるのだということを強力に印象付けている。これが元に戻ることはあり得ないというのだ。

vmware01.jpg 米ヴィエムウェアCEO、ポール・マリッツ氏

 そこでヴイエムウェアが今回発表したのが「VMware vCloud Director」だ。詳しくは別記事で紹介するが、サーバ仮想化環境管理ツールを超えた、仮想データセンター構築・運用ツールとして位置付けられている。このツールは、中堅から大規模な企業が、単一の物理ITインフラから、複数の仮想データセンターを切り出すことを実現する。これまでのサーバ統合/IT統合では、フラットな単一の仮想IT環境に全社のITニーズすべてを押し込もうとしてきた。これが事業部門からの反発を招くことも往々にしてあった。しかしこれではある意味で本末転倒だ。最終的な目的である「ビジネス価値の提供」のためには、事業部門あるいはグループ企業それぞれのニーズにチューニングされたIT環境を提供できなければならない。柔軟性と効率性はこの場合の絶対条件だ。単一の物理インフラを用い、サービスレベルや運用ポリシーの異なる複数の仮想データセンターを構築して、事業部門やグループ企業それぞれに割り当てることで、企業IT環境を進化させられる。

 効率性と柔軟性の追求は、クラウドサービスの臨機応変な活用につながる。企業内のクラウドインフラばかりに注力しているという印象を持たれがちなヴイエムウェアだが、社内クラウドと社外クラウドを連携させたハイブリッドクラウドを提唱してきており、今回のvCloud Director発表でこれがようやく本格的に実現できることになった。vCloud Directorは、クラウド事業者が顧客に向けたサービスの運用のために使うこともできる。また、このツールにはヴイエムウェアがクラウドAPIの標準として整備に力を入れてきたvCloud APIが実装され、企業の社内データセンターに構成された仮想データセンターと、クラウド事業者における仮想データセンターを接続する拠点間VPN機能も利用できる。これにより、クラウド事業者は、企業に自社インフラの延長として使ってもらえるITインフラ提供サービス(IaaS)を提供できる。

 ヴイエムウェアは今回、事業者によるこうしたサービスを「vCloud Datacenter Service」という名称で認定していくことを発表した。まず、ベライゾン、SingTelなど数社が提供開始予定だ。

 上記のような仮想化レイヤに加え、業務アプリケーションの構築・運用でもIT業界全体を巻き込む革新が進行中だとマリッツ氏は話した。既存のアプリケーションに加え、新世代のアプリケーション・フレームワークや言語を使った柔軟でアジャイルな業務アプリケーションが普及してくる。また、企業はすでに多くのSaaSアプリケーションを利用し始めている。これら3種の業務アプリケーションの活用を支援するアプリケーション・プラットフォームの提供は、ヴイエムウェアにおけるもう1つの重要な柱だとしている。

vmware02.jpg 既存の業務アプリを超えた新しいアプリの世界が開ける
vmware03.jpg 3種のアプリケーションが今後使われていく

 既存アプリケーションは、今後も企業の社内クラウド環境にとどまる可能性が高い。マリッツ氏は今後長きにわたり、中小企業を除いて企業の業務アプリケーションが完全に社外のクラウドサービスへ移行することはあり得ないとしている。ヴイエムウェアでは、サーバ仮想化プラットフォームのパフォーマンスや拡張性の向上により、「既存アプリケーションに新たな価値を提供している」(へロッド氏)という。

 一方で、新たなアプリケーションは、社外クラウドサービス上での運用もしやすい(あるいはクラウドで運用しやすいアプリケーションを開発できる)。ヴイエムウェアはSpringSource、Rabbit Technologies、GemStone Systemsといった企業を買収してきたが、今回これらの企業によるミドルウェア(RabbitMQ、tc server、Hyperic、Gemfire、ers)を「vFabric」製品ファミリとして一体的に提供していくと発表した(これについては別記事に掲載する)。今後、Java/Spring Frameworkに加え、Ruby/Ruby on Rails、PHP、C#など、ほかの新世代言語/フレームワークでもこれらのミドルウェアの機能がフルに活用できるようにしていきたいという。ヴイエムウェアはセールスフォースドットコムのForce.comやグーグルのGoogle App EngineといったPaaSと連携し、業務アプリケーション開発の自由度を高める活動も進めている。

 SaaSアプリケーション利用の円滑化に向けては、シングルサインオン機能、および企業の管理者がユーザーに対してオンデマンドでSaaSアプリケーションをプロビジョニングできる機能を開発中だという。管理者は、ヴイエムウェアの提供する管理ツールの画面上で、例えばGoogle Appsのユーザーを追加する作業が行える。この際にはヴイエムウェアが今回買収を発表したTriCipherの技術によってGoogle AppsのID/パスワードと企業におけるユーザーのID/パスワードが紐付けられ、シングルサインオンが自動的に設定される。そしてユーザーの仮想デスクトップ環境「VMware View」のデスクトップ画面上に、自動的にGoogle Appsへのショートカットが設定されるといった世界を目指しているという。

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(@IT 三木泉)

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