米SASは10月27日(現地時間)、米国ラスベガスで年次イベント「THE PREMIER BUSINESS LEADERSHIP SERIES」を開幕。会期中、米SAS CEOのジム・グッドナイト(Jim Goodnight)氏に話を聞く機会を得た。
グッドナイト氏は、1976年にSASを設立した創業者の1人。以後、34年間に渡って同社を増収増益に導き続けている。また、同社は米フォーチュン誌が毎年行っている「最も働きがいのある会社ベスト100」において、2010年度には第1位を獲得するなど、福利厚生面での評価も高い。
まず、グッドナイト氏は現在の世界経済について「現在、世界経済は厳しい状況にあるが、厳しいときこそ分析をきちんと行わなければならない」と説く。
例えば、マーケティングキャンペーンを実施するうえでは、“自社に最も利益をもたらすユーザー”を見つけることが最も重要な目的となる。そして、この目的を達成するうえで分析は非常に重要だというのだ。なぜなら、上記の場合、過去の傾向データなどから分析を行って目的の顧客を絞り込んだうえでマーケティングを行えば、コスト削減効果も見込める。このように、厳しい環境下でこそ、分析をきちんと行い、最適な行動を選択することが、結果としてコスト削減に有効だと説明した。
一方で、昨今経済関係者の一部で流行している「ニューノーマル(New Normal)」については、「経済成長が著しく低く、例えば製造業においては一度生産を止めると再開できないような状況」と同氏は定義。このようなニューノーマルな環境下においては、労働集約的な仕事は人件費の安い新興国と競合することが難しいため、米国や日本などはノウハウや知識を活用することがより重要になっていくと分析した。
続いて、今後注力・投資していく分野には「ソーシャルネットワーク/メディア分析」と「HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)」を挙げた。
SASは、2009年にソーシャルネットワークやソーシャルメディアを分析し、顧客心理の理解や不正防止に活動できる製品「SAS Social Network Analysis」と「SAS Fraud Framework for Banking」をリリース。Social Network Analysisは、ブログやTwitterなどのソーシャルメディアにおける書き込みを分析し、特定の企業や製品などへの評判を分析する。Fraud Framework for Bankingは、顧客間のやり取りから不正パターンを検出し、不正取引を防止できるというものだ。
グッドナイト氏は、「ソーシャルメディア分析は、顧客を持つすべての会社に影響のあるソリューション。特に製品販売を行う企業にとっては非常に重要なものになるだろう。また、ソーシャルメディアが広がることで、詐欺などのリスクも高まっていることからこの分野への投資も重要だ」と説明した。
また、リアルタイム分析を実現するHPCへの投資も重要だと説く。昨今のコンピュータパフォーマンスの向上で、従来では考えられなかったようなことがビジネス分析で可能になった。
例えば、米カタリナ・マーケティングは食材や食品のクーポンを提供している企業。その同社では5年間のクーポン利用履歴を残し、このデータを基にさまざまな分析を実施しているという。「このような事例は、まさにHPCのパフォーマンス向上の恩恵を受けた結果だ。従来サーバのパフォーマンスでは不可能だった。香港の金融大手HBSCも同社のクレジットカードトランザクションをリアルタイム分析しているが、このような膨大なデータをリアルタイムで分析できるようになったのもパフォーマンス向上のおかげだ。このように、コンピュータパフォーマンス向上によって、昔は不可能だった分析が可能になったことに非常にエキサイティングしている」(グッドナイト氏)。
実際、SASではHPCへの投資の一環として、HPのブレードサーバ向けの最適化を実施しており、今後も投資を継続していくという。
グッドナイト氏は、ビジネス分析で重視している点について「いつも大切にしているのは、『顧客が何を考えているか』だ。顧客が考えていることが分かるような分析に投資することが非常に重要。顧客が考えていることが分かれば、必然的にこちらのやることも見えてくる」と説明する。
そして、同氏がユーザーに対して常に言っていることは、「○○という機能を実装したいからAという製品を入れる。□□ができるからBを買う。ではなく、SASを導入すればいろいろなことが可能になるという視点を説明している。むしろ、『ビジネス上の課題や問題を解決するために、必要なものは何か?』を考え、それの結果としてSASを導入してほしい。システムありきではなく、ビジネスの視点が重要だ」という点だ。そして、そのためにグッドナイト氏は、この点をCIOよりも経営者に訴求していきたいという。
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