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会計専門家について活用状況の開示義務付けも

「企業財務会計士」が2013年試験から開始、受験生の生活設計に影響も

2011/01/21

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 金融庁は1月21日、同日開催した「公認会計士制度に関する懇談会」で、公認会計士資格制度の見直し案を公表した。論文式試験に合格しても就職できず、公認会計士資格の取得に必要な実務経験を積めない待機合格者の解消を目指し、「企業財務会計士」を創設することが柱。金融庁は通常国会への法案提出を目指していて、成立した場合、2013年(平成25年)試験から適用する。

 パブリックコメントを受けて2010年7月に公表した同懇談会の中間報告を修正したが、資格制度改正の大筋は中間報告と変わっていない。試験は短答式(現行の年2回から年1回への変更を検討する)、論文式、修了考査の3つで現行と同じ。論文式試験に合格し、一定の会計実務・教育経験、または監査補助、一定の会計専門職大学院の修了があると「企業財務会計士」の資格登録ができる。中間報告では「財務会計士」としたが「位置付けが不明」などの反発が多く、「企業財務会計士」と変更した。

 企業財務会計士は「監査業務を行わない会計プロフェッショナル」の位置付けで、業務内容は(1)財務書類の調製、財務に関する調査・立案・相談、(2)監査業務の補助。

 企業財務会計士のポイントは、その資格要件として2年間の実務経験を求めることだ。監査補助、会計専門職大学院修了の他、今回の案では「企業における一定の会計実務」を実務経験として挙げている。実務経験は論文式試験合格の前後、どちらでもよく、受験生の早期の就職を促す。会計実務を積める企業としては、公認会計士の資格要件が定める資本金5億円以上の企業の他、資本金1億円以上の企業でも認める。

jicpa01.jpg 資格制度の概要(金融庁資料から、クリックで拡大)

 企業財務会計士はその後、実務補修と追加の実務経験、修了考査をパスすると公認会計士資格を登録できる。公認会計士の資格要件も変更し、大学等高等教育機関での一定の科目履修を求める他、実務経験の要経験年数を現行の2年から3年に変更する。公認会計士資格についても実務経験となる業務要件を緩和し、資本金5億円未満の企業であっても、上場企業の会計実務であれば実務経験として認める。公認会計士資格の実務経験も試験合格の前後は問わない。実務補習は監査・税実務に重点を置き、eラーニングの拡大も図る。

 現行制度における待機合格者は2年の会計実務経験があれば、そのまま新制度の企業財務会計士に登録できるようにするという。

勤める企業によって会計士までの道筋に変化

 論文式試験合格後、企業財務会計士登録をせずにそのまま公認会計士を目指すパスも残す。公認会計士登録の実務要件である監査の補助、資本金5億円以上の企業、または上場企業での会計実務の従事(いずれも3年)と、実務補習を受け、修了考査に合格すれば公認会計士登録ができる。

 複雑なのは資本金1億円以上、5億円未満の非上場の企業で実務経験を積んだ企業財務会計士が公認会計士登録を目指す場合だ。その場合、通常の実務補習と修了考査の他に、追加の実務経験が求められる。金融庁はこの場合、「公認会計士になるには追加で3年の資本金5億円以上の企業での会計実務が必要」としていて、場合によっては転職が必要になる。資本金5億円以上の企業、または資本金1億円以上の上場企業で会計実務を2年間積んでいれば、その後1年働けば(合計3年として)公認会計士登録のための実務経験と認められる。最終的に公認会計士となるまでの道筋が自らが勤める会社によって変わることになり、受験生は難しい選択を迫られるだろう。

受験浪人生に厳しく、社会人に優しく

jicpa02.jpg 懇談会で挨拶した金融庁 副大臣の東祥三氏。懇談会終了後には、受験生、合格者と思われる傍聴者が懇談会の委員や金融庁職員に詰め寄る場面も見られた

 また今回の改正案によって明らかになったのは、会計士資格を「受験浪人生に厳しく、社会人に優しく」する方針だ。短答式試験の合格、論文式試験の科目合格について、その有効期間を現行の2年から1年に短縮する。受験生が就職しないまま長期間受験し続けて、就職が難しい年齢になることを避ける。

 一方、資本金1億円以上の企業で働く社会人(経理の他、財務、人事、法務などの実務担当を想定)については短答式試験の合格、論文式試験の科目合格の有効期間を5年間に延長する(上記の1年の有効期間と合わせると合計6年間となる)。つまり、短答式試験、または論文式試験のある科目に合格しても、就職しないと1年でその有効性は消えるが、就職すれば有効期間が5年間延びるという仕組みだ。

 金融庁は「(論文式試験の科目が合計5科目となることから)1年に1科目ずつ合格すれば5年で試験合格できる」としている。新制度では、現行のように論文式試験合格後に就職するのではなく、就職している人が論文式試験を受験・合格することを想定している。この考えが広がれば、確かに合格者の就職難は減るだろう。一方、受験生は会計士登録までの生活設計を考え直す必要があるかもしれない。

2011年試験の合格者数は1500人程度

 また、今回の案では上場企業に対して、公認会計士や企業財務会計士、その他の会計専門家の企業内での活用状況について開示を義務付ける規定を金融商品取引法に盛り込むことも示されている。適用は2013年の予定。金融庁は「企業財務会計士、公認会計士の企業での採用増大を期待する」としている。

 金融庁は同日、2011年の公認会計士資格試験の合格者数を1500人程度にする方針を示した。同日公表した資料では「当面、1500人程度から2000人程度を目安」としているが、待機合格者数や監査法人の経営状況を考えると、2011年は1500人程度が適当との考えだ。

関連リンク

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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