「BCPとは予測不能な世の中でも優れたビジネスを実現すること」シトリックス、「iForum2011 持続可能なIT基盤を考える」を開催

» 2011年10月05日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 シトリックス・システムズ・ジャパンは10月4日、プライベートイベント「iForum2011 持続可能なIT基盤を考える」を開催し、キーノートに同社代表取締役社長 マイケル・キング氏、米シトリックス シニアバイスプレジデント兼 CMOのウェス・ワッソン氏、同社CTO Office シニアディレクターのマイケル・ハリス氏が登壇した。

 講演では、企業を取り巻く環境が多様化、複雑化している状況を表した造語「VUCA(Volatility:不安定/Uncertainty:不確実/Complexity:複雑/Ambiguity:あいまい)」を紹介。「BCPとは災害に備えるだけではなく、世の中やシステムを取り巻く環境がどのように変化しても柔軟に対応できる体勢を築くことだ」と訴え、シトリックスが考える5つのBCP対策を紹介した。

ワークスタイルの変革は、従業員ひいては顧客満足度を上げる 

 東日本大震災以降、BCPを見直す動きが高まっている。中でも、時間や場所を選ばずに仕事ができるデスクトップ仮想化は、出社困難時の事業継続対策として、またワークスタイルの変革、業務効率化という面からも大きな注目を集めることになった。

写真 シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長 マイケル・キング氏

 最初に登壇したシトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長 マイケル・キング氏はそうした状況を挙げて、「(自然環境、ビジネス環境ともに)世界はますます動的になっている。また、新興国の追い上げによって先進国がプレッシャーを受けるなど、全ての企業が激しい競争の下、一層の柔軟性・効率性を求められている」と指摘。

 そうした状況の中、ビジネスの遂行手段として、各種クラウドサービスやスマートフォンのような新しいデバイスも続々と登場していることを挙げ、「新しいビジネスチャンスとは、こうした状況の中でこそ生まれてくる。特に、激しい環境変化への対応と一層の効率化が求められている今、ワークスタイルを変革し、働きやすい環境を整備することは重要なポイントになるはずだ。従業員の満足度を上げることは、自社の発展とともに顧客満足度向上にもつながる」と訴え、そのための数々のソリューションを用意していることを解説。米シトリックス シニアバイスプレジデント兼 CMOのウェス・ワッソン氏に話を引き継いだ。

BCPとは災害だけではなく、どのような環境変化にも対応していくこと

 これを受けたワッソン氏は、「世界が動的になり、IT分野のデバイス、ソリューションも多様化している状況」を指す造語である「VUCA」を紹介し、「いま、安全な賭けは存在しない」と訴えた。

写真 米シトリックス シニアバイスプレジデント兼 CMOのウェス・ワッソン氏

 というのも、現在はOSをはじめ、スマートフォンなどのデバイス、プラットフォームなどにも複数の選択肢が存在する。それらを提供する新しいプレーヤーも続々と登場している。よって、従来なら企業のIT投資は「OSならWindows」といった具合に選択肢が限られていたが、現在は「どの手段が選ばれ、どのプレーヤーが勝ち残るのか、まったく予測できない――すなわち安全な賭けは存在しない」というわけだ。

 「従って、BCPは災害だけではなく、どのような世の中の変化にも対応できるものでなければならない。どのアプリ、プラットフォーム、デバイスが勝者になっても、柔軟に対応できる体制作りが必要だ」

写真 どの手段が選ばれ、どのプレーヤーが勝ち残るのか、まったく予測できない“VUCA”な世の中

 同氏はこのようにBCPを再定義し、この実現のためには「より迅速・柔軟にサービスを提供できるデータセンターの変革」「各種パブリッククラウドとの柔軟・安全な接続」「どんな環境でも快適に仕事ができるリッチなサービスに、従業員が随時アクセス可能とするパーソナルクラウド」の3つがポイントになると解説。これらを具現化する、5つのBCP実現手段を紹介した。

 1つは「あらゆる場所にいる人々のコラボレーションの実現」。これは平時の業務効率化や、災害によって交通が遮断された際の事業継続性担保の上で重要な要件となる。2つ目は「アプリケーションとデスクトップを集約し、サービスとして配信すること」。これにより、従業員はいつでもどこからでも会社のデスクトップ環境にアクセスし、オフィスにいるのと同様に業務ができるようになるほか、IT部門では、従業員の数だけバリエーションがある個々人のデスクトップ環境を一元管理可能となり、管理の確実性・効率性が高まる。

写真 動的な環境を勝ち残るために、BCPを再定義

 3つ目は「モバイルなどの(企業システムを取り巻く)あらゆるデバイスから、使い慣れたアプリケーションに容易にアクセス可能とすること」。4つ目は「あらゆるパブリッククラウドと安全かつ柔軟に接続できること」。そして最後は「(ハイブリッドクラウド環境の構築を支える)高度な基盤技術」だ。これらにより、従業員はあらゆるデバイスを使って、物理的な制約なく業務を遂行可能になるとともに、企業はより効率的かつ柔軟にIT基盤を運用できる環境が整う。

 ワッソン氏は、これらの実現手段となる同社製品も併せて紹介。「あらゆる場所にいる人々のコラボレーション」には業務用の資料をPC、iPadなどの上で出席者と同時共有しながらオンライン会議ができる製品「GoToMeeting」を、「アプリケーションとデスクトップの集約と、サービスとしての配信」にはデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」と、強固なセキュリティを担保しながらアプリケーションやクラウドサービスの配信を最適化する「Citrix NetScaler」を用意していることを解説。

 この他、XenDesktop/XenAppのクライアント側ソフトウェアである「Citrix Receiver」から社内外のSaaS/Web/Windowsアプリにシングルサインオンできる「Citrix Cloud Gateway」や、企業のデータセンターとパブリッククラウドを安全・シームレスにつなぐ「Citrix CloudBridge」、各種ハイパーバイザーに対応したクラウド構築・運用のオープンソースソフトウェア「Citrix CloudStack」などをあらためて紹介。これらにより、「ITはさらに安全で、より安価で、全ての環境変化に対して準備万端になる」と力説した。

テクノロジを予測し、変化の波に柔軟に乗っていくことが大切

 一方、最後に登壇した米シトリックス CTO Office シニアディレクターのマイケル・ハリス氏は、“VUCA”な環境がますます加速する中、「将来的には、あらゆるデバイスの有効活用、より強固なセキュリティ、コラボレーションという3つの要素が重要になる」と解説した。

写真 米シトリックス CTO Office シニアディレクターのマイケル・ハリス氏

 例えば、あらゆるモバイルデバイスが存在する今、デスクトップPCの大きなスクリーンで使用しているアプリケーションを、スマートフォンのような小さなスクリーンでも快適に使えなければならない。その点でユーザーが求める情報をコンテキストに沿って順番に表示するような配慮が求められるという。

 また、デスクトップ仮想化の導入企業の場合、各従業員は会社支給のものだけではなく個人所有のデバイスも使って自分のデスクトップ環境にアクセスする。その際、「従業員ごとに異なるアプリケーションの組み合わせを“ラッピング”し、ラッピングごとにポリシーベースのコントロールを掛けるといった配慮もますます重要になる」という。最後のコラボレーションについても、電子メール、音声、情報共有、Web会議などの連携を高度化させ、「音声(によるコミュニケーション)をもっとスマートに発展させる必要がある」。

 ハリス氏は、「これらはあらゆる環境変化に対応する、BCPの観点からも重要」と指摘。予測不能なVUCAな環境の中でも「将来のテクノロジや、そのとき求められるアプリケーションをしっかりと予測しながら、変化の波に柔軟に乗っていくことが大切だ」とキーノートをしめくくった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ