ビッグデータは分析して情報に変えてこそ価値がある〜SAS吉田社長SASが2012年度の戦略を説明

» 2012年02月28日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 SAS Institute Japan(以下、SAS)は2月28日、同社の2012年におけるビジネス戦略発表会を開催。SAS Institute Japan 代表取締役社長兼北アジア地域統括責任者 吉田仁志氏が2011年の総括と2012年の戦略を語った。

吉田氏写真 SAS Institute Japan 代表取締役社長兼北アジア地域統括責任者 吉田仁志氏

 2011年度のSAS Instituteのグローバル売上高は、ヨーロッパの金融不安などがありながらも“ビッグデータ”のトレンドもあったことから好調を維持し、過去最高の27.2億ドル(前年比12%増)を達成。36年連続の増収増益も実現した。地域別に見ると、北米地域46%、ヨーロッパ中近東アフリカ地域42%、アジア太平洋地域12%だった。

 日本法人は3月の震災後に苦戦したが年の後半から回復し、第4四半期(10〜12月)は地銀への大規模導入などを獲得したことで、過去最高の売上高を記録したという。吉田氏は、「震災やヨーロッパの金融不安などもあるが、“危機のときこそ投資を”として分析へ投資した顧客も多かった。また、日本においては富士通とパートナーシップを結んだことが大きい。いままで直販で届かなかった顧客にまで広がりを持てるようになった。すでに共同で獲得した案件も出てきている。今後はさらに期待していきたい」と業績を振り返った。

 吉田氏が挙げる2012年のキーワードは、「グローバル化への対応」「Big Dataへの対応」「情報活用力」の3つ。グローバル化への対応については、「ヨーロッパ金融不安などは、円高などで日本に大きく影響を与えている。一部の大企業だけでなくあらゆる企業においてグローバルへの対応は必須だ。SASとしても、グローバルサポートは重要な課題として考えている」(吉田氏)とした。

 Big Dataへの対応については、「現在のBig Dataの議論は、データをどのように収集し、格納するか、というレベルにとどまっている。重要なのは、“データをどのように活用するか”であり、企業として情報活用力を高める点だ。データはデータのままでは意味がない。分析することで企業価値に変えることが重要なのだ」と説明した。情報活用力については、ガートナーの調査で「アナリティクス&BI」がビジネスの優先事項を決定するテクノロジ1位になった点や、戦略的な分析を行っている企業は相対的に高い財務パフォーマンスを示している例などを挙げ、「企業優位性を高めるためには、『スピード』『意思決定の質』『実行力』が必要。大量データによって、“より多い事実から判断できるようになる”ことは非常に重要だ」とした。

 続いて、SAS Institute Japanの2012年の戦略は「Information Management」「High Performance Analytics」「Global Solution and Practice」の3つを核にするとした。「Information Management」とは、企業内に氾濫しているデータを“使える情報”に変えるプロセスが必要だとし、データを収集、統合、管理するだけではなく、分析プロセス、意思決定プロセスを情報基盤に組み込むものだという。

 「High Performance Analytics」はスピード感を求められる企業のための情報分析基盤で、分散システム環境下でSASのソフトウェアを実行して高速処理を実現する「SAS Grid Computing」、汎用データベース内でSASの処理を実行する「SAS In-Database」、分析対象のデータを専用ハードウェアのメモリ上に展開・処理することで高速処理を実現する「SAS In-Memory Analytics」で構成される。

 「Global Solution and Practice」では、グローバルリスクに対応するソリューションを強化する。具体的には、SASのソリューションをオンプレミスとクラウド環境の両方で提供するほか、世界各地で行う調達のために原価の評価分析や調達確保分析といった収益分析をサポートする。また、構造化/非構造化を問わずマルチ言語サポート、グローバル規模の導入事例の紹介など、さまざまなサポートサービスを提供することで、これらのニーズに応えていくとした。

 吉田氏は、「ハード/ソフトウェアの発展で圧倒的スピードでの分析が可能になった。大手金融のRBSはローン審査などのリスク分析で3カ月かかっていたものを55秒にした。また、シンガポールの金融機関であるUOBはグリッド活用によって11日間かかっていた分析が3分になった。さらに、ある製薬会社は世界各国で行っている研究結果をクラウドで集約し、まとめて分析した後にまた戻す、といった手法を取り入れて効率化・高速化している。このように、Big Dataやデータ分析の市場や環境は急激に変化している。この市場で当社はさらなる価値を提供していく」と抱負を語った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ