スタートアップに1億ドルを投資

シスコが目指すのはSDNではないかもしれない

2012/04/19

 シスコシステムズは、4月17日(米国時間)より米サンディエゴで開催中の同社イベント「Cisco Partner Summit」で、SDN(Software Defined Network)に関する同社の取り組みの一端を明らかにした。会長・社長・CEOのジョン・チェンバース氏は、「スピンイン」企業のInsiemeを通じて、新たなインテリジェントネットワーク機器を開発していることを認めた。また、同週に米サンタクララで開催中のOpen Networking Summitに参加中のバイスプレジデント/SP担当チーフアーキテクト兼CTO、デビッド・ワード(David Ward)氏は、SDNに関する同社としてのおおまかな考えをブログエントリで示した。

 同イベントにおけるプレス向けQ&Aセッションで、まず米Network World誌のジム・ダフィ(Jim Duffy)氏が、3月のNew York Timesによる報道以後、噂となっているInsiemeについて聞いた。この報道では、シスコが「Insiemi」(この記事では社名のスペルを間違えている)という企業を設立し、SDNに関する新たな機器を開発しているとしていた。そしてこの企業には、以前同様にシスコをいったんやめてNuova Systemsというスタートアップを設立し、Nexusシリーズを開発してシスコによるNuova買収とともにシスコに戻ったマリオ・マッゾーラ(Mario Mazzola)氏らが関わっていると、この記事は報じていた。しかし、シスコはこれまで一度も、Insiemeとの関係について明らかにしてこなかった。ダフィ氏の質問は「Insiemeはホットなスタートアップ企業と認識されるようになってきていると思う。Insiemeに関するすべてと、シスコとの関係について話してほしい」というものだ。

sdn01.jpg シスコのジョン・チェンバース氏

 これに対するチェンバース氏の答えは次のとおり。

約1年前、われわれはプログラマビリティや、アプリケーションに連動するネットワークについて市場機会を見出し始めた。これは複数の方法で姿を現わしてきた。OpenFlowやSoftware Defined Networkingだ。しかしわれわれは、3、4種の別個の長期にわたるアプローチをしていく。典型的なハードウェアとソフトウェアによるアプローチ、仮想および物理、われわれのインテリジェントなASICとインテリジェントなソフトウェアだ。

最終的な目標は何なのかをはっきりさせたい。人々が望む最終的な目標は、まず非常に大規模なデータセンターから(顕在化するニーズとしての)プログラマビリティや柔軟性だ。(中略)現在はまさに胎児の段階だ。しかしわれわれは、ソフトウェアとハードウェア、そしてこれらに非常にインテリジェントなASICと、非常にインテリジェントなソフトウェアを組み合わせて追求していきたい。

Insiemeのチームは、われわれに素晴らしい結果をもたらしてくれたことのある人たちだ。彼らは今回と非常に似たスピンインで、同様な条件のもと、われわれがデータセンターにおけるトランジションをもたらすのを助けてくれた。Insiemeへの条件は1億ドルの投資だ。これまでの実績を見れば、このチームがワールドクラスの製品を作り上げるのは4度目だ。(中略)今度は先ほど話したようなネットワークの要素をカバーすることになる。しかし、既存の製品とのオーバーラップはあまりないと考えている。

 次に私(三木)が、多少ひねった質問をした。「OpenFlowは技術的なトピックであるとともに、ビジネス的な脅威であると考えているか。OpenFlowを推進する人たちの一部は、安価なコモディティ的スイッチによって、高度なネットワーキングニーズにも応えられるということも宣伝しようとしている」という質問だ。

 チェンバース氏は次のように答えた。

過去20年にわたって、毎年新しい競合、新しい技術、シスコのスイッチングの日用品化をもたらすとされる新しい分野などが登場してきた。毎年、われわれは競合にフォーカスするのではなく、市場のトランジションにフォーカスしてきた。そしてわれわれは健全な偏執狂的側面を持っている。しかし、ネットワークに載り、ネットワークのプログラマビリティにかかわるものはどんなものであっても、われわれのスイートスポットに当たる。したがって、これはわれわれにとっての機会となる可能性があると考えている。可能性があるという意味は、OpenFlowやSoftware Defined Networkについての定義が人によって異なるからだ、真に胎児の段階だと思う。どちらにも弱点がある。われわれはただ、われわれが利害を持つ分野について、これまでいつもそうだったように、われわれの守備範囲をカバーするということを熱心にやっていくつもりだ。1年前にあなたが同じ質問をしたとしたら、われわれはこの分野で戦略をまとめてはいないと答えたかもしれない。現在は、私は当社がどこにいこうとしているのかについて非常に安心していられるし、これは実行力の問題だとも感じている。

「SDNだけを考えているわけではない」

 前出のワード氏は、4月16日の「Is it Just Software Defined Networks (SDN)?」と題するブログポストで、SDNは素晴らしいゲームゲームチェンジャーになると書いている。しかし期待に応えて役に立つ機能を提供するには、コントロールプレーン、トランスポートプレーン、トランスファープレーンのすべてにわたって、双方向でリアルタイムに詳細な情報をやり取りできるようにし、常時フィードバックループを回せるようにしていく必要があると述べている。また、SDNに関してよく聞かれるビジネスモデルについて、次のように疑問を呈している。

SDNは、顧客やユーザーがネットワークおよび運用のリソースを効率的に使い、サービスからの売り上げを増やすのを助けることが目的だ。われわれの提供するものを、インフラコストの低減やTCOの一部の部分を改善することだけに限定するなら、小さなことしか変えられないだろう。壷の中の1セントコインをつかもうとするようなものだ。より優れた、より大きな利潤をもたらすビジネスモデルが、サービス事業者だけでなく、企業にとっても必要だ。シスコでは、顧客やパートナー、エンドユーザーに対して、よりよいことができる余地があることを知っている。

 チェンバース氏の発言とワード氏のブログポストからは、シスコがSDNに関連して複数の取り組みをしていく可能性があること、そして「SDN」には必ずしも当てはまらないことをやろうとしていることが読み取れる。そして、チェンバース氏がいうように、現在の段階でSoftware Defined Networkingには確固たる定義はない。ハードウェアに価値がないことを示すのがSDNの目的というのであれば、シスコがやろうとしていることはSDNではないかもしれない。

(@IT 三木泉)

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