米SAS、「分析の速さ、広さが競争優位獲得の条件」米SAS経営幹部らが説く「ビッグデータ活用の意義」

» 2012年07月13日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 SAS Institute Japanは7月13日、グランドハイアット東京で顧客向けイベントを開催した。米SAS CEOのジム・グッドナイト氏をはじめ、米国本社の経営幹部らが登壇し、ビッグデータの意義を解説。超高速分析を実現する同社の主力製品群「SAS High-Performance Analytics」のデモを交え、「サンプリングデータではない、利用可能な全データを基にした“ファクトベースの意思決定”がビジネスの在り方を大きく変える」と訴えた。

データは“データのまま”では意味がない

 ビッグデータという言葉が社会に広く浸透し、多くの企業がデータの分析・活用に関心を寄せている。だがその一方で、一定の定義がないことも手伝い、ビッグデータ活用の真価を理解し、“次のアクション”に有効に活用できているケースはまだ少ない。特に、日々生成されるデータの収集・蓄積に追われ、活用するフェイズには至っていない企業が多いのが現実だ。

写真 SAS Institute Japan代表取締役社長 吉田仁志氏

 最初に登壇したSAS Institute Japan代表取締役社長 吉田仁志氏は、「これまで多くの企業が業務データの見える化に取り組んできたが、具体的な成果につながらなかった例が多い。データを生かすためには、分析によってデータを“ビジネスに役立つ情報に変える”ことが大切だ。そうして得た洞察をタイムリーに意思決定に反映していくことで“ビッグデータ”は役に立つ」と解説。

 続いて登壇した米SAS ゼネラルマネージャのシェイカー・アイヤー氏も、「市場動向変化の加速により、半年程度の遅れがビジネスにとって致命傷になり得る」と述べ、高速分析によるタイムリーな意思決定が多くの企業にとって喫緊の課題であることを指摘。分析基盤整備に向けてユーザーらの背中を押した。

BIとBAの違い

 ただ、「分析」というと、昨今ツール市場が活性化しているBIを想起する向きが多いが、分析を実現するツールには大きく分けて2つの種類がある。同社シニアバイスプレジデントのジム・デイビス氏は、その点を挙げ、「ビジネスで成果を上げるためには、将来を“予測”するBA(Business Analytics)が不可欠だ」と解説。

 「BIは過去と現在を分析して『今、自社に何が起きているのか』を知るためのもの、BAはビジネスの状況をモニタリングして予測モデルを作り、プロアクティブな意思決定に役立てるもの」であるとして、BIとBAの違いを明確化した。むろん、BIで現状を知ることも重要だが、BAで将来を予測し、市場の動きを一歩先んじたアクションを取ることが、収益向上やコスト削減に多大なインパクトをもたらすのだという。

写真 米SAS シニアバイスプレジデントのジム・デイビス氏

 実際、欧米の先進的な企業ではBIとBAを併用するケースが増えており、SASでもBIとBAの両方を用意している。まず、BAに当たるのが同社の超高速分析基盤「SAS High-Performance Analytics」だ。TeradataもしくはEMC Greenplumのデータベース・アプライアンス上で、テラバイト単位のデータをほぼリアルタイムに処理し、SASの分析エンジンに処理結果を渡すことで分析処理の超高速化を実現している。同製品は、分散システム環境下でSASのソフトウェアを実行して高速処理を実現する「SAS Grid Computing」、汎用データベース内でSASの処理を実行する「SAS In-Database」、分析対象のデータを専用ハードウェアのメモリ上に展開・処理することで高速処理を実現する「SAS In-Memory Analytics」で構成しており、“ビッグデータ”から瞬時に分析結果を抽出できるという。

 一方、BIに当たるのがSAS High-Performance Analytics製品群の最新製品、「SAS Visual Analytics」だ。大量データをインメモリで高速処理し、目的に応じて表組み、棒グラフ、バブル、ヒストグラムなど、多彩なビジュアルで表現できる。さまざまなデータ項目のドリルダウン、相関分析なども自在に行える他、iPadなどのモバイルデバイスにも対応し、現場層も含めてあらゆるデータを日常的に閲覧し、任意の切り口で現状を把握できる点を特徴としている。

サンプリングせず、全てのデータを分析対象に

 なお、このSAS Visual Analyticsは新開発の超高速分析エンジン、「SAS LASR Analytic Server」に対応した製品であり、低コストの業界標準ブレードサーバを複数台使用し、Hadoopを使って各サーバのメモリ上にデータを均等に分散、並列分散処理を行って超高速分析を行う点を特徴としている。

写真 米SAS CEO ジム・グッドナイト氏

 同社CEO ジム・グッドナイト氏は、「必要に応じてブレードサーバを追加するスケールアウト型のアーキテクチャの採用により、データ量の増大にも効率的に対応できる」ことを強調。「コモディティ化し、価格も低下しているメモリを有効に使うことで、社内の全データを分析対象にして、従来なら数時間から数日かかっていた分析を数分、数秒以内で実行できる」と解説した。

 続いて登壇した、同社エグゼクティブバイスプレジデントのミカエル・ハグストローム氏も、「データを一部抽出したり、サンプリングしたりすることなく、利用可能な全データを対象に分析できる」点が同社製品の特徴であることを強調。

写真 米SAS エグゼクティブバイスプレジデント ミカエル・ハグストローム氏

 「“従来よりも多くの事実”から抽出した、高精度な分析結果をリアルタイムに得ることで、ファクトベースの意思決定をプロアクティブに行える点がビッグデータ活用のメリットだ」と述べ、「分析のスピード」「分析対象の広さ」という同社製品の特徴を通じて、従来のデータ活用とビッグデータ活用の違いを明確化した。

 いまだ曖昧模糊としたイメージもつきまとう“ビッグデータ”だが、すでに活用に成功している企業もある。最後に、シェイカー・アイヤー氏は「社内の全データを基にスピーディに分析できることは、それだけビジネスに集中できる時間が増すことでもある。競争優位を獲得する上で、多くの企業にとってビッグデータ戦略策定は必須だ」として、“ビッグデータ活用の要件”を押さえた分析基盤整備の重要性を訴えた。

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