伸びるDynamoDB、広がるAmazon RDS

AWSのデータベース戦略は「すべての顧客のすべてのニーズに」

2012/07/19

 “One size does not fit all.” Amazon Web Services(AWS)のデータベースサービスについて@ITに説明した、米AWSのデータベースサービス担当バイスプレジデント、ラジュ・グラバーニ(Raju Gulabani)氏はこう表現した。

 「これまでのサービス提供で学んできたことの1つは、すべての顧客のすべてのニーズを満たすデータベースソリューションはない、つまりOne size does not fit allということ。このためすべてのユースケースに対応するサービスをそろえてきた」。

 AWSは、リレーショナルデータベースではAmazon RDSに加えMemcached互換のキャッシングサービスであるElastiCacheを提供、RDBについても一定レベルのスケーラビリティを確保している。「だが、大幅なスケーラビリティが唯一の重要な要件となる場面も増えてきている」。これに応えるべく、長年にわたる研究成果を投入したのがAmazon DynamoDBだとグラバーニ氏は説明した。

aws01.jpg 米AWSのバイスプレジデント、ラジュ・グラバーニ氏

 ビッグデータのためのデータベースサービスが、DynamoDBだ。RDBでは一定規模を超えると、シャーディングでしのがなければならない。これを回避して膨大なスケーラビリティを実現するデータベースの仕組みに関する論文を、アマゾンはかなり前に、Dynamoとして発表していた。SmugMugのCEOであるドン・マカースキル(Don MacAskill)氏は「シャーディングの仕方は知っているし、やってもいるが、やりたくない。私の写真共有サービスビジネスの価値を高めることはないからだ」と話し、DynamoDBのサービス化に大きく貢献したと、グラバーニ氏は説明した。

aws02.jpg グラバーニ氏が示した講談社のデジタルコンテンツサービスの例。この例では、DynamoDBをはじめ、AWSのサービスを広範に利用している

 DynamoDBは海外でも、ソーシャルゲームの企業が多い日本でも、すでに広く利用されている。グラバーニ氏は、スマートフォンアプリShazamによるSuper Bowlのテレビ中継でのキャンペーン例を説明した。今年のSuper Bowlは米国時間2月5日に行われた。テレビ中継の視聴者がCMをShazamでタギングすると、トヨタなど広告主が提供するプレゼントキャンペーンへの応募のための情報が表示されるというものだ。ほかにも試合中にShazamのタギングで統計情報を見たり、FacebookやTwitterで体験を友だちと共有したりできるようになっていた。ShazamではこのSuper Bowl対応にDynamoDBを採用。100万単位のタギングを処理したという。

 驚くのは実装の早さだ。AWSがDynamoDBを提供開始したのは1月18日。その時点でSuper Bowlまで半月しかなかった。米AWSのCTO、ヴァーナー・ヴォーゲルス(Werner Vogels)氏の6月下旬のブログポストによると、設計段階から本番実装まで、3日で完了したという。

 ヴォーゲルス氏はこのブログポストで、「DynamoDBはAWSの歴史のなかで、最も急速に伸びているサービスだ」と記している。

オープンソースだけじゃない、OracleもSQL Serverも

 AWSというと、全般的にオープンソース系の製品を使ったサービスに力点が置かれているというイメージがある。しかし、特にデータベースサービスでは、商用のRDBMSを使える選択肢が大きく広がっている。

 グラバーニ氏は、AWSのデータベースサービスの原点を、こう説明する。「われわれがマネージドサービスを提供することにより、顧客は必要に迫られて行わなければならない作業、バックアップ/リカバリ、ストレージ管理、アップグレードなどに費やす時間を節約できる。そして顧客自身の付加価値を高めるためのアプリケーション開発に集中できる。これが当社のすべてのサービスの前提となるテーマだ」。

 本記事の冒頭に引用したOne size does not fit allの考え方に照らせば、付加価値をもたらさない運用管理作業を減らしたいのは、オープンソース技術を使いこなすサービス事業者だけでない、だから商用データベースもサービスとして提供するのは当然だ、ということになる。

 AWSのRDBサービスであるAmazon RDBは、2009年にMySQLをデータベースエンジンとして開始されたが、2011年にはOracle Database、そして2012年にはSQL Server 2008 R2が選択肢として加わった。SQL Server版のAmazon RDS提供について、グラバーニ氏はWindows Azureを意識した動きとの見方を否定した。

 「Oracleは日本で非常に人気がある。Oracleを2番目のデータベースエンジンに選んだ理由の一部はここにある。また、Windows顧客はわれわれにとって非常に重要だ。AWSをかなり使ってくれている。彼らはマイクロソフト製品のスタック全体を使う傾向がある。SQL Serverもその1つ。このためわれわれは最近SQL Serverサービスを投入した。米国と日本で同時にローンチした。日本市場が非常に重要だからだ」。

 SQL Server 2008 R2といっても細かなバージョンがあるが、それらすべてをサポートしているという。SQL Server 2012も、「ほどなく」提供開始するとグラバーニ氏は話した。

 「バージョンアップについてもマネージドサービスとして、MySQLでやってきたのと同様、顧客がバージョンを選択でき、顧客が望むときにわれわれがアップグレードを行う。メンテナンスウィンドウとして、顧客がアップデートやパッチの時間帯を指定できる。アップグレードを急ぐ必要はない。顧客は十分にテストを行い、確認してからアップグレードを指示できる。アップグレードやパッチでサーバをリブートしなければならない場合は、われわれがこれを防ぐことはできない。われわれができることは、『今後数週間のうちに、われわれは運用に影響を与える可能性のあるパッチ適用を行います』と知らせることだ。顧客にとって重要なのは透明性だ。パッチだけでなく、何らかの問題が発生することもあるが、われわれは積極的に顧客に情報を提供するように努めている」。

Amazon RDSの積極的なメリットは管理負荷軽減だけでない

 グラバーニ氏は、Amazon RDSには管理作業の負荷軽減だけでなく、スケーラビリティと耐障害性の向上というメリットがあることを強調した。

 「従来、高価なハードウェアでデータベースを運用し、スケールアップもスケールダウンもできなかった。クラウドにおける新たなスタイルは、小さく始めて、必要になったらすぐスケールアップでき、必要でなくなったらスケールダウンできるというもの。Amazon.comのような季節的要因に大きく左右されるビジネスには、特にこの点が重要だ。AWSがAmazon RDSで提供するプッシュボタン・スケーラビリティでは(運用開始後に)インスタンスのサイズをアップグレードできる一方、ストレージ容量も10GBからテラバイトレベルまで拡張できる」。

 ではストレージI/Oについてはどうか。これについては容量の増加に応じてより多数のハードディスクにストライピングするため、自動的に性能が向上するという。「多くの顧客が、データベースを社内で運用するのに比べ、AWSで動かしたほうがパフォーマンスは大きく向上すると言っている」。

 Amazon RDSではまた、Memcached互換のサービスであるElastiCacheの併用、そして非同期のリードレプリカ機能(MySQLのみ)によって、読み出しパフォーマンスの向上や読み出し負荷の分散を図っている。

aws03.jpg Amazon RDSは管理負荷軽減に加え、スケーラビリティや耐障害性の向上など、オンプレミスでの運用よりも有利と主張する

 障害対策についても、「顧客自身がやろうとしても難しいことが、Amazon RDSでは簡単にできる」とグラバーニ氏は強調した。

 AWSのサービスにおける基本的な可用性向上手法は、複数のAvailability Zone(AZ)にまたがる運用だ。「顧客には(AWSの)このユニークな特徴を活用し、アプリケーションを複数AZ対応してほしいと勧めている」。

 Amazon RDSでも、別のAZにスタンバイ・レプリカを置き、情報を常時同期(スタンバイ・レプリカへの書き込みが終了してはじめてトランザクションが完了する)させ、障害時には即座に待機系で自動的に再起動できるようにしている。この機能は当初MySQLで提供され、今年5月よりOracleでも使えるようになっている。レプリカ運用による遅延は2ms程度だという。「この機能は世界中でよく使われているが、特に日本の顧客には人気がある。耐障害性や災害対策に対する関心の表われだと思う」。

(@IT 三木泉)

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