[Analysis]

自治体を補完する“バーチャル自治体”は実現するか

2002/02/26

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 電子自治体共同研究会が2001年8月より約3カ月間、全国約3300の地方自治体に対してアンケート調査を行った。それで分かったことは、電子自治体を実際に構築・運用する都道府県や市町村では、取り組み方に格差があることだ。例えば、小規模な自治体が電子自治体を運営するには、厳しい財政事情などの理由で、実際に構築・運用できないことなどが挙げられる

 同研究会の調査によると、実際合併特例法による合併を検討している全国の市町村数は、2026市町村もある。そのメリットとして、公共施設、サービスなどの効率化、行政サービスの住民生活圏の広域化への対応などを挙げる。しかし、合併の実現には、組織、情報システム、政治思想、住民感情などさまざまな課題が横たわり、実現への道は険しい。

 その課題を解決できる1つの形態が、“バーチャル広域自治体”だと、同研究会はいう。バーチャル広域自治体は、実際に合併することなく、電子自治体を共同で構築することにより、実際の市町村の合併のメリットの一部を享受することが可能になるという。生活圏の広域化に対応した各種申請、公共施設利用の対応などを自治体同士が連携することで、専門能力を持った人材の共同活用、システム機器などの共同購入によるコスト削減やシステム運用費用の低減化などを実行できるのだ。さらに、現実の合併では物理的に問題がある、離島など地理的に離れている地域でもメリットを享受できることから、都市と遠隔地との戦略的連携なども考えることができるという。

 同アンケートによると、バーチャル広域自治体構築に対して、全自治体の50%以上が関心を持っている。しかし、メリットばかりではなく、問題点もある。予算の負担割合、現状の各自治体システムの差異、リーダーシップの所在、住民の賛同などだ。

 中央官庁はバーチャル広域自治体構想に対して好意的に受け止め、その実現は意外と早いかもしれない。保守的といわれる中央官庁がバーチャル広域自治体の実現に動くのか、問題点をどうクリアするのかその動向に注目したい。

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