[Analysis]

未踏スーパークリエータの横顔

2005/05/17

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 情報処理推進機構(IPA)がソフトウェア開発者の発掘と支援を目的に行っている「未踏ソフトウェア創造事業」。IPAは5月10日、公募で選ばれた開発者の中から特に新規性、開発能力、将来の可能性などを評価した2004年度上期の「天才プログラマー/スーパークリエータ」の15人を発表した。彼らの横顔とは。

 今回のスーパークリエータの中で目を引くのは経歴の多彩さ。理系の大学/大学院に在学中、もしくはソフトウェア開発企業に在籍というスーパークリエータもいるが、ソフトウェアとは一見関係がない分野の開発者も多い。「エンドホストにおける汎用ネットワーク制御機構の研究開発」をテーマにした奥村貴史氏は、慶応大総合政策学部を卒業、慶応大大学院の社会学研究科を経て、米ピッツバーグ大のコンピュータ・サイエンス学科に進学。現在は同大の博士課程に在籍したまま、旭川医科大の医学部5年にも在籍している。ソフトウェア開発を行う医師だ。

 奥村氏は「この4月から、医学生として朝から晩まで病院にて過ごしつつ、計算機科学の大学院生として夜から朝まで研究に打ち込む予定でしたが、さすがにこれは体が持たないことに気が付きました。そこで最近は、体力づくりのためできる限りラグビー部の練習にも出ることにしています」とコメントしている。IPAの担当者も「普通は考えられない生活だ」と舌を巻く。

 スーパークリエータには、高林哲氏奥一穂氏近藤秀和氏ら著名な開発者のほかに、朝倉民枝氏のようにソフトウェア開発を専門としない開発者も選ばれた。「幼児向けインタラクティブWebソフトの開発」を行った朝倉氏はコンピュータ・グラフィックスのデザイナー。だが、プロジェクト・マネージャの原田康徳氏は「朝倉氏の書くシナリオは、ほとんどプログラムの記述と言ってよい」と評価した。また、「(朝倉氏のシナリオを)直接実行できるシステムは世の中には存在しない」として「大きな課題をソフトウェア研究者に投げかけた」とした。

 2004年度上半期の未踏ソフトウェア創造事業には328件の応募があり、39件が採択。15人がスーパークリエータに選ばれた。IPAのソフトウェア開発支援部長 巽俊一郎氏は「今年はかなりスーパークリエータへの関門が狭かった」と述べた。この15人が今後どのようなソフトウェア開発を行うのか。さまざまな場面で彼らの名前を聞く機会が今後もあるだろう。

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