[Analysis]

東証でシステム障害が続くのはなぜ?

2005/12/13

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 東京証券取引所のシステム障害で巨額の損失が発生した。東証をめぐっては11月1日にもシステム障害で不具合が発生し、全銘柄の取引が半日停止した。相次ぐシステム障害の裏には、東証と東証のシステム部門、情報システム子会社、システム開発の委託先に関連する構造的な問題があるとみるのが自然だろう。

 問題の発端は、みずほ証券が12月8日に新規上場した人材派遣会社ジェイコムの株式を「61万円で1株」と注文を出すところを、「1円で61万株」と誤って発注したこと。同証券は買い戻しを進めたが10万株程度に買い手がついたとみられ、同証券の損失は300億円以上になる可能性がある。同証券は誤発注に気づいた後、注文の取り消しを複数回行った。しかし、東証のシステム障害によって取り消しができずに、損失が膨らんだ。

 東証によると初値が決定した新規上場銘柄の株式に対して制限値幅を超える注文があると、制限値段が「みなし処理」として実行される。ジェイコム株に対しては1円61万株の発注によって57万2000円としてみなし処理が行われた。この状況で同証券が注文の取り消しを行ったが「注文が発注された時点で約定処理中であった場合に対象注文が取り消しされないという不具合が発生」(東証)し、取り消すことができなかった。東証は当初、同証券が注文を取り消しできなかった理由を「57万2000円で取り消し注文を出すところを1円で注文していたから」などと説明していた。

 今回の東証のシステム障害は、「新規上場する銘柄の場合で、かつ、今回のケースのように、特別買気配が表示中に気配の差引数量を超え、初値決定後も売注文が残るほどの大量の注文がみなし処理の対象となるような値段で発注されたような場合」(東証)に起きるといい、まれな事象ともいえる。もちろん、今回の問題の主因はみずほ証券にある。しかし、システム的には要件定義の漏れであり、テストが不十分だったといえる。

 東証はシステムを開発した富士通と協力し、原因の分析をするとしている。東証とシステム子会社、富士通の間でシステムの設計がどのように行われ、どのようにテストされたのかという開発の入口、出口の検証が重要になるだろう。

 相次ぐシステム障害の責任を取り、東証の代表取締役社長 鶴島琢夫氏は辞任する考えを示している。

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