[Analysis]

ユビキタスが見えた2005年

2005/12/27

rfid.gif

 2005年のIT関連注目ニュースとして「ネット企業の放送局買収提案」を挙げる人は多いだろう。そのことにまったく異論はない。だが、あれほどの派手さはないものの、今年はユビキタス・ネットワーキングが現実化するきっかけが生まれた年だということも、指摘しておきたい。

 今年秋には、ヨドバシカメラが2006年春に無線ICタグを本格導入する予定であることが明らかになった。まずは同社の物流施設における検品作業の自動化にとどまるようだが、メーカーまでを巻き込んだ動きになることのインパクトは大きい。RFID自体はIPとは関係がないが、RFIDからの情報がIPネットワーク経由で連携し、さらに標準的な手順や形式でやりとりされることで、汎用的な社会システムになることができる。

 ユビキタスなネットワーキングのためには、いろいろな場所でものをつなげられるということが重要だ。この点では今年、YOZANやライブドアの無線通信サービスが開始された。こうしたサービスが、ユビキタス・ネットワーキングのための安価で広範なインフラとして機能してくれるはずだ。

 ユビキタス・ネットワーキングで期待されるのは、既存システムの通信手段をIPに切り替えるということだけではない。IPの利用によって、情報収集ポイントの増加や多様化が実現し、さらに収集される情報の内容が変化し、あるいはリアルタイム性が向上することだ。

 国立国際医療センターでは、バーコードによって医療行為をリアルタイムで捕捉するシステムを構築、運用している。薬剤にバーコードが張り付けられ(「体をふく」などの医療行為にもそれぞれバーコードが割り当てられている)、医療従事者は、医療行為を行う際に、携帯情報端末で逐一スキャンする。その際には医療従事者の名札と患者の名札も読み取られる。これらの情報は無線LAN経由で中央データベースに記録されて照合される。医師の指示書と異なる行為が行われようとしていれば、警告が表示される。

 私がこのシステムを取材したのは約1年半前だが、構築責任者である情報システム部長の秋山昌範氏は、医療過誤防止だけが目的ではないことを強調していた。薬剤を入荷時点からバーコードで管理することにより、在庫管理が徹底して経営の合理化に貢献する。さらに医療従事者にとっては、自分の仕事が評価されるための客観的な根拠を手に入れることができる。

 これまでつながっていなかったものがつながることによって、組織の運営全般に大きなインパクトを与えられる可能性があるということを、この例ははっきりと教えてくれるように思う。

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)