[Analysis]

SaaSの先にあるもの

2006/11/13

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 SaaS(Software as a Service)の登場がITサービス産業のビジネス構造に大きな影響を及ぼしている。野村総合研究所 技術調査部 主任研究員 城田真琴氏のレポート「胎動するSaaS 〜その本質と既存ITサービス産業への影響とは〜」を元に、SaaSの現状とSaaS後のITサービス産業の状況を予測する。

 一般的にSaaSはCRMやERPなどの業務アプリケーションを指すことが多い。それは、Salesforce.comとネットスイートといったSaaSベンダと呼ばれる企業の扱う製品が、業務アプリケーションの領域に属しているからだ。しかし、オフィスアプリケーション(ワープロ、表計算)がオンライン上でサービス化されるに及び、SaaSとは、従来ASPと言われていたサービスと同等のものだという認識が広がり始めた。

 では、ASPとSaaSは何が違うのか? 城田氏によると「基本コンセプトは同じだが、SaaSはASP2.0と呼ぶべきもの」だとする。城田氏が示すいくつかの理由を下記に紹介する。

 ASPは、クライアント/サーバ型のアプリケーションをホスティング型に切り替えただけだが、SaaSは開発当初からSaaSモデルでの提供を前提としていた。このことは、単一ソースコードの利用(シングルインスタンス)や、複数の顧客によるアプリケーション、サーバ、DBの共用(マルチテナント)を可能にした。ビジネスモデルが、似ているようで実はまったく違うのが特徴である。

 また、Web技術の劇的な進歩がASPの抱えていた課題を解決したのも大きな違いだ。SaaSには、カスタマイズツールが用意されている場合が多く、ユーザー側でプログラミングレスのカスタマイズが可能となった。ほかのアプリケーションとの連携が可能だという点もASPにはない特徴だろう。

 ビジネスモデルというポイントはSaaSの今後の市場での伸びを予測するうえで重要となる。城田氏は、SaaSのビジネスモデルとアマゾンなどのWeb2.0企業が展開するロングテールビジネスモデルを同列に論じている。Salesforce.comやネットスイートが狙うのは主に中小規模企業であり、SAPやオラクルに代表されるERPベンダの市場領域にはほとんど足を踏み入れていない。ネットスイートの日本法人が主に狙うのは、従業員30人規模の小規模企業である。低額なライセンス料金を設定し、多くの顧客数を獲得することで利益を獲得しようとするビジネスモデルはまさにロングテール狙いである。Salesforce.comは現在、2万4800社、50万1000ユーザーに利用されているという(同社Webページ)。

 一般的にSaaS=業務アプリケーションという認識が強いとはいえ、SaaSベンダが展開するサービスはCRMがほとんどである。ERPにまで踏み込んでいるのは現段階ではネットスイートのみである。SAPやオラクル、マイクロソフトのような商用アプリケーション・ベンダもSaaSに参入しているが、CRMにとどまっている。

 彼らが自社製品のSaaS展開を計画していることは確かだが、現時点ではビジネスパートナーのSaaSビジネスへの参入をサポートする方により力を注いでいるようである。城田氏はこのような動きを「単なるアプリケーションの提供から、プラットフォームの提供へ」と表現している。彼らのビジネスパートナー(システムインテグレータ)は、Salesforce.comやネットスイートなどと競合しながら、SAPやオラクル、マイクロソフトのそれぞれのプラットフォーム上でSaaSモデルのビジネスを展開していくことになる。

 SaaSの先に待つのは何なのか。「SaaSの先にあるのは、ビジネス・プロセスの遂行も外部ベンダに任せる『ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)』だ」と城田氏は予測している。ASPがWeb技術の進歩によって、SaaSとして生まれ変わったように、アウトソーシングも技術革新によって、BPOに生まれ変わるのだろうか。

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