[Analysis]

Windows Vista一般向け発売の陰で

2007/01/23

 1月30日、マイクロソフトはWindows Vistaを一般向けに発売するのと同時に、消費者向けのセキュリティ/パフォーマンス向上ソフトウェア「Windows Live OneCare」を発売する。マイクロソフトにとって初めてのウイルス対策ソフトウェアを含むパッケージソフトウェアだ。

 マイクロソフトに対し、既存のウイルス対策ソフトウェアベンダが危機感を覚えるのは当然だ。ウイルス対策ソフトウェアは確立された市場であり、成熟期に入っている。製品の差別化も困難さを増しているといえ、新たなベンダとして参入するマイクロソフトは、意外に短期間で簡単に大きなシェアを獲得してしまうかもしれない。少なくとも消費者向けの市場においては。

 しかし、ウイルス対策ベンダでもない記者の私も、マイクロソフトによるウイルス対策ソフトウェア市場への参入に違和感を覚えてしまう。それはなぜなのだろうか。既に大もうけしている企業が、さらにもうけようとしているのが妬ましいのではない。OSベンダはプラットフォーム屋として「公平」にほかのベンダを扱う義務を負うと思っているわけでもない。おそらくPC利用環境がますますマイクロソフト1社に握られてしまう可能性が出てきたことに対し、あまり確たる理由もなく居心地の悪さを感じるのだろう。

 ある米国ITベンダの副社長に「マイクロソフトのウイルス対策ソフト市場参入についてどう思うか」と聞いてみた。するとその米国人は「(競合ベンダは)マイクロソフトに対しては2つのことしかできない。“adapt”(適応すること)、そして“expand”(市場を広げていくこと)だ」という。マイクロソフトにはできないこと、例えば企業におけるクロスプラットフォーム市場に注力することなどで活路を見出すしかないというのだ。

 「つまるところ、Windows Vistaだって目玉はセキュリティじゃないか」とその米国人は続けた。例えばマルウェア対策ソフト「Windows Defender」はWindows Vistaの最下位バージョンである「Home Basic」にも備わる基本機能だ(Windows Defenderにはウイルス対策機能は含まれていない)。新OSを売るための機能としてセキュリティを外せなくなってきたとすれば、ウイルス対策ソフトも別販売の有償製品ではなく、OSの機能として組み込まれる日が、いつか来るのではないか。

 実際には、ウイルス対策ソフトウェアの機能を維持していくにはベンダとしてもコストがかかり、これをOSのおまけとして扱うのは困難なのかもしれない。OS自体の購読モデルへの移行など、何らかのビジネスモデルが見つからないかぎり実現できないのかもしれない。しかしもしその日が来たとしたら、われわれは居心地の悪さを感じながらもウイルス対策をマイクロソフトに委ねるようになるのだろうか。

(@IT 三木泉)

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