[Analysis]

「Google Docs&Spreadsheets」を使える企業、使えない企業

2007/02/26

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 グーグルはオフィスソフトウェア、メール、チャット、カレンダーなどをオンラインで利用する法人向けサービス「Google Apps Premier Edition」の正式サービスを国内で開始した(参考記事)。組み合わせたサービスはいずれもすでに提供しているサービスだが、社内システムとの統合が可能で、シングルサインオンなどを実現できる。利用料は1ユーザーアカウントあたり年額6300円だ。

 Google Appsの中で個人的に注目しているのはオフィスソフトウェアの「Google Docs&Spreadsheets」だ。オフィスソフトウェアはマイクロソフトがほぼ独占している市場。そこにSaaS形式のGoogle Docs&Spreadsheetsが入り込めれば面白いことになる。バージョンアップごとに機能が追加され、最新版のOffice 2007ではインターフェイスも変更された。そろそろ別のソフトウェアも試してみたいというユーザーが多いのではないだろうか。Google Appsも正式に提供開始されたこともあり、Google Docs&Spreadsheetsが日本の実際の仕事で使えるのか試してみた。

「言われたオフィスソフト」を使うユーザー

 記者が一般企業に勤めるサラリーマンで、ITにそれほど詳しくないとしたらどのようなオフィスソフトウェアを使うだろうか。それは「上司やIT部門から言われたソフトウェア」だ。ITに関心が強い人なら使い勝手がよくて企業の環境に互換性があるソフトウェアを試すかもしれない。しかし、ツールとしてのみソフトウェアを使う人は、提供されるソフトウェアを疑いも持たずに使うだろう。

 その意味で考えると、Google Docs&Spreadsheetsは不利な点がある。まったくの新しいドキュメントやスプレッドシートを作成するなら、Webブラウザだけで動作し、ネット上に保存できるGoogle Docs&Spreadsheetsは最高だ。しかし、多くのビジネスパーソンの作業は、既存ドキュメントやスプレッドシートを加工、編集することではないだろうか。そしてその既存のファイルはローカルPCや部門のファイルサーバにある。

 問題はITに関心がないユーザーがローカルPCやファイルサーバのファイルをわざわざGoogle Docs&Spreadsheetsにアップロードして編集するかということだ。おそらくしないのではないだろうか? 彼らが行うのはローカルやファイルサーバのファイルをダブルクリックすることだ。そして立ち上がるのは、Microsoft Officeだったりする。

ダブルクリックで開く簡便さが必要

 Google Docs&Spreadsheetsに必要なのはファイルをダブルクリックで開く簡便さだ。もちろん、グーグルはその点が分かっていて、解決策を用意している。Mozilla FirefoxとGoogle Toolbar 3を組み合わせれば、ファイルをダブルクリックするだけでGoogle Docs&Spreadsheetsにアクセスし、ファイルを編集できるようになる。しかし、対応するFirefoxは英語版だけで、敷居が高い。また、日本語版のFirefoxでGoogle Docs&Spreadsheetsに対応するTipsもあるが、設定ファイルを編集する必要があり、やはりITに関心がないユーザーには敷居が高いのではないだろうか(そもそも記者の環境ではうまく行かなかった……)。

 ただ、あのグーグルだ。これらの問題点は当然承知していて対応してくるのではないだろうか。グーグルの技術力を評価する記者はグーグルがこれらの問題を解決することを前提に、業務で使うドキュメントやスプレッドシートをGoogle Docs&Spreadsheetsにアップロードすることにした。

 で、やってみたのだが、うまく行かない……。問題はアップロードするファイルの容量だ。Google Docs&Spreadsheetsはアップロードできる1ファイルの容量を500KBまでに制限している。Microsoft Excelで作成したファイルはマクロを組み込んだり、複数のシートを使ったりすると簡単に1MBを超えてしまう。日本企業はExcel大好きで、どんな文書でもExcelで作ってしまうといわれる。そして複雑なマクロを組み込んで、計算処理の自動化を図る。その結果、ファイルサイズが大きくなってしまうのだ。

残るマクロ問題

 ファイル容量の問題はグーグルが遠からず解決するだろう。しかし、マクロの問題は残る。Excelにおけるマクロは、互換性の管理が難しく、Google Docs&Spreadsheetsだけでなく「OpenOffice.org」など別のオフィスソフトウェアに移行する際の大きな障害になるだろう。

 Google Docs&Spreadsheetsを最も生かすことができる仕事環境はどんなものだろうか。業務ファイルも含めてすべてのリソースがWeb上にあり、データの共有やレビュー、承認ワークフローもWeb上で行えるような環境だ。もちろん、電子メールはGmailで、グループウェアとしてGoogle CalendarやGoogle Talkを使う。既存のワークフローをWeb上に移行するのは企業にとって大きな決断になる。やはり、規模が小さい中小企業やスタートアップ企業などから導入が始まるのではないか。これからワークフローを構築するならローカルにデータを保管せずにGoogle Appsにすべてを委ねるのも選択になるだろう。

(@IT 垣内郁栄)

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