エコにITはどこまで貢献できるのか[Analysis]

» 2008年01月28日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 1月18日、産官学連携のパートナーシップである「グリーンIT推進協議会」が2月1日に設立されることが発表された。日本は2002年に京都議定書に批准し、「2008年から2012年における温室効果ガス排出量を1990年比で6%削減する」と公約している。しかし、2005年の日本の温室効果ガス排出量は13.6億トンで基準年比7.8%増であり、とてもこの公約を実現できそうにない。そのような状況で、「ITの省エネ」と「ITを活用した省エネ」を推進するために検討するのが同協議会だ。

 そもそも、現在の日本の温室効果ガスの排出量はどのような状態なのだろうか。経済産業省などが公表している資料によると、2005年における日本の温室効果ガス排出量はCO2換算で12.93億トンで、世界全体における排出量265億トンの約4.8%を占めている。これを基準年である1990年と比較するとCO2は13.1%増、そのほかに指定されているメタン(CH4)や一酸化ニ窒素(N2O)は減少しているので、すべてを合計すると基準年比7.8%増だ。従って日本は公約を守れそうにない。このことから、昨年末には日本政府がハンガリー政府から温室効果ガスの1000万トン分の排出権を購入すると報じられた。

日本の温室効果ガス排出量グラフ 日本の温室効果ガス排出量の推移(経済産業省より)

 では、このように世界的に温室効果ガス排出量削減への取り組みが拡大していく中、ITがどの程度貢献できるのだろうか。経済産業省が中心となって実施している「グリーンITイニシアティブ会議」で発表された資料によると、2006年度の国内のIT機器の電力消費量は総発電量の約5%を占めており、これはCO2換算で乗用車約800万台に相当する。さらに、現在のペースでIT機器が増加していった場合、総発電量の約15〜20%に達すると予測している。

 このように、電力消費におけるITの割合は増える一方だ。その理由を、IIJ 専務取締役 営業本部長 保条英司氏は、「ブロードバンドの普及により、動画配信などが活発化し、ネットワーク上のデータ流通量が増すと同時に、サーバの処理能力もピーク時に合わせた構成にせざるを得なくなっている。例えば、1995年には1ラック当たりの電源容量は1.5kVA程度で設計していたが、現在では5〜6kVA、米国では10kVAになっているケースもあるという。さらにサーバの熱量が増加していることから、1kVA相当のラックを冷やすのに0.7〜1.0kVA相当の冷却設備が必要になってきている。現状のようにピーク時に合わせてサーバを設計していけば、今後も消費電力は増え続けるだろう。SaaSなどの活用により、分散させることが重要になってくる」と説明している。

 このような状況下、グリーンIT推進協議会では「2025年には社会で扱う情報量は約200倍になる」と予測。これに対応してIT機器の台数や機器ごとの情報処理量は増加するため、IT機器自身の省エネは重要な課題だとした。また、IT・エレクトロ技術は生産や流通・業務の効率化を通じて、あらゆる経済・社会活動の生産性を向上させることで、全体的な環境負荷削減への貢献を目指している。

 保条氏は「メールなど便利なツールが増えて生産性は大幅に向上したが、無駄なCCやBCCも増えているのではないか。メールは情報を浴びせ合っているだけの部分もある。そういった一業務から見直すことも重要だ」とコメントしている。ITによる環境負荷軽減も重要だが、われわれの業務の仕方も少し見直すだけで環境に貢献できる部分がありそうだ。

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