[コラム:Spencer F. Katt]
アメリカン・フットボールでワン・アウト

2004/2/18


 史上最強のハッカーとして一時は世界に名を轟かせたケビン・ミトニックだけど、最近ではセキュリティ専門家の間でさえ、その威光に陰りが見えてきたようだ。ミトニックの会社が運営するWebサーバがWebサイトの開設直後にハックされたために、彼の名声は人々の忍び笑いとともに地に落ちた……。

 吾輩は先日、シアトルのスペース・ニードルの最上階で開かれたマイクロソフトのセキュリティ・イベント「Security Appreciation」を取材した。このイベントを企画したのは、セキュリティ業界のベテランで、同社のSecurity Windows Initiativeのプログラム・マネージャ、ウィンドウ・スナイダーだ。もし彼女がマイクロソフトの社員でなかったとしたら、きっといまごろレドモンドの弁護士たちは、彼女にファーストネームの使用停止を求める警告書を送っていただろうね。

 スペース・ニードルの展望台が揺れていたのは強い酒のせいではなく、北西から吹く強い風のためだった。そんな強風の中、吾輩はシアトル空港までタクシーを飛ばし、ボストン行きの次の便に滑り込んだ。急いだのは、テレビでスーパーボウルを観戦するためだった。それにしても、ジャネットとジャスティンがハーフタイムショーで見せたとんでもない演出にはショックというよりも、むしろ戸惑いを覚えたね、吾輩の場合。なにしろ野球以外に“ワン・アウト”できるスポーツがあるとは思ってなかったから……。

 なんてことを考えていると、突然電話が鳴った。知り合いの若い女性からだった。彼女の話によると、投資業界では最近、脆弱性管理会社のファウンドストンがネットワーク・アソシエイツに買収されるというウワサで持ちきりだそうだ。

 翌日、吾輩は1人っきりのスーパーボウル・パーティで飲み干した空き瓶をまとめて友人のピートに渡した。彼は近所の小学校のためにリサイクル運動をやっているのだ。ピートがいうには、これまで吾輩が拠出した空き瓶だけで、全校にラップトップが行き渡っただけでなく、いまや生徒全員がキャデラックのSUVを1台ずつ所有するまでになったらしい。

 それはさておき、その彼が教えてくれたところによると、いくつかのYahoo!グループが同社のプライバシー・ポリシーに明記されたウェブビーコンに反発し、ユーザーにウェブビーコンは「希望しない(opt-out)」をチェックするようアドバイスしているそうだ。調べてみると、“ウェブビーコン”というのは、サイト・アクセスをカウントするためにWebページに仕込まれた小さなグラフィック、つまり早い話が“ウェブバグ”のニュースピーク(新語法)のことじゃないか。こりゃ、Yahoo! ユーザーはティモシー・リアリー()をもじって、いつも“Turn on, tune in, opt-out”って唱えなきゃいけないな……。

(*)LSDなどの麻薬使用を肯定してハーバード大学を追放された心理学者。「Turn on, tune in, drop out(ドラッグで気分を高揚させ、波長を合わせて、社会に背こう)」のスローガンで、1960年代サブカルチャーの教祖的存在となった。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
The Katt in the Black Hat

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