Spencer F. Katt

マイクロソフトが検索市場を制覇するって?

2008/06/02


 吾輩のもとには毎日多くの希望的観測筋、夢想家、陰謀史観派から、さまざまなタレコミが寄せられる。そうした裏情報を吾輩が愛してやまないのは、退屈な日常の中で少なくともクスクス笑えるひとときを提供してくれるからだ。

 なかにはとんでもないガセネタもなくはないが、そんなマユツバ情報でも、このコラムでは格好のテーマになる。しかも吾輩は、生真面目な情報提供者が深刻そうな顔つきで大げさに耳打ちしてくれる陰謀説を笑い飛ばすのが大好きだ。

 先週、そんな吾輩の耳に届いたバカげた話の1つは、マイクロソフトが創業まもない検索会社のパワーセットを買収すれば、グーグルを検索市場から追い落とすことができるだろうという分析だった。

 パワーセットは今日の多くの検索ベンダーが採用する一般キーワード検索から脱却し、先進的なセマンテック(意味論)あるいはコンテクスチュアル(文脈)検索を提供する新興検索プロバイダだ。一部の業界観測筋は、マイクロソフトがパワーセットを取り込めば、検索市場でグーグルを打ち負かすことも不可能ではないと考えている。まぁ、ナンセンスな話だとは思うが、その主張にここで少し反論してみよう。

 まず、パワーセットはWikipediaやオープンソースレポジトリであるFreebaseのコンテンツしか検索できない点を指摘したい。グーグルはもちろん、Web全体を検索できる。そうした検索技術を開発し、強化し、拡張するのに、グーグルは10年を要した。たとえマイクロソフトがベンチャー企業を買収し、莫大な資金と圧倒的なリソースでバックアップしても、グーグルを打ち負かすどころか、追いつくまでに何年もかかるだろう。パワーセットは検索市場においてマイクロソフトのシェアを多少なりとも拡大するのに貢献するかもしれない。が、グーグルの検索エンジンを利用する数百万人のユーザーを一夜にして奪うことなど不可能だ。

 また、「マイクロソフトはグーグルの息の根を止め、検索市場を独占できる”クリプトナイト”のような新技術を必ず見つけ出すはずだ」と多く人々が信じていることも、吾輩には非常に興味深いところではある。

 それはそうと、グーグルはここにきて、欧州連合(EU)と長年さまざまな問題で戦ってきたマイクロソフトと同じような状況に追い込まれそうな雲行きだ。EUのデータ保護規制当局の最高責任者がさきごろ、Google MapsのStreet View機能と衛星画像サービスが欧州で開始されたら、EUの厳格なプライバシー保護規制に抵触するだろうと警告したのである。

 欧州では、第2次世界大戦における領土侵略や軍事占領、強制退去、あるいは秘密警察による弾圧などの忌まわしい記憶から、一般市民のプライバシー保護にはきわめて敏感だ。隣家の裏庭に植えてあるトマトの実がどれほど成長したか、インターネットでのぞき見するなんてことは、誰であっても到底許されざる行為なのである。

 さて、もう1つ。5月上旬、ミネアポリスで開催されたコンペレントの「Cドライブ・ユーザーコンファレンス」でのこと。同社の創業者でCEOのフィル・ソランのコメントに吾輩は笑った。ソランはデータストレージ・ビジネスの「古きよき時代」について話した。当時、物事はすべてシンプルだった。SAN(ストレージエリアネットワーク)はまだストレージアーキテクトの瞳に映る微かな光に過ぎず、仮想化は突拍子もない理論だった。

 「そのころデータを記録する媒体はディスクとテープだけだった」とソランは振り返る。「ダイレクトアタッチドストレージは、一部の人々にとって非常に退屈なものだった。実際、彼らはそれを”スノレージ”と呼んでいたほどだ」。ストレージとスノア(いびき)を引っ掛けた言い回しだが、それを聞いた吾輩は、「おいおい、いつからそう呼ばなくなっちゃったんだい?」とヒゲ面を痙れんさせた。

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