USP(ゆーえすぴー)情報システム用語事典

unique selling proposition / unique selling point / ユニーク・セリング・プロポジション

» 2009年12月08日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 その製品やサービスの“売り”となる独自の訴求ポイントのこと。顧客に対して集中的・徹底的に提案すべき、“その商品の特徴”である。

 マーケティングコミュニケーション活動を行う際、製品やサービスの利点を顧客(見込み客)にできるだけ多く伝えようとして、いろいろな機能や要素をあれこれ列挙しがちである。しかし、過剰な情報を与えられた顧客はかえって混乱してしまい、「よく分からない商品」という認知しか得られない場合が少なくない。

 こうした事態を避けるには、製品・サービスの特徴となる点を1つに絞り込んで、そこだけを徹底的に訴求することが有効となる。USPは、マーケティングや宣伝広告活動の軸となるような売り込みの切り口であり、キャッチコピーやタグラインとして表現される。

 USPの具体例としてしばしば取り上げられるのが、ドミノピザの「30分以内に届かなければ無料」である。味・量・価格といったビザそのものの商品性とは無関係な点にフォーカスしてマーケティング活動を行い、市場で独自の地位(マインドシェア)を獲得した。

 USPは顧客がその商品を選ぶ理由となるようなものであり、顧客にとってメリットやベネフィットがあるものでなければならない。当然ながらその顧客ベネフィットは自社(製品やサービス)が提供できるものであり、さらに競合他社に容易にまねできないものであることが望ましい。

 USPの考え方を生み出したのは、米国の広告代理店 テッド・ベイツ&カンパニー(現ベイツ141)である。同社は1940年代初期に市場調査を行い、成功した広告キャンペーンにはすべて一貫した主張があることを発見した。同社でコピーライター、コピー主任、副社長、取締役会長などを務め、伝説の広告マンとして知られたロッサー・リーブス(Rosser Reeves)はそれをUSPと名付け、1950年代にテレビ広告で実践して大きな効果をあげた。

 リーブスははUSPについて、その著書『Reality in Advertising』(1961年)で「すべての広告は消費者に対して具体的な利点を提案するものでなければならない」「その提案は競争相手が主張できないか、主張しようとしてもできないものでなければならない」「その提案は大衆に影響を与えるものでなければらない」と条件付けをしており、リーブスのUSPは大規模な広告キャンペーンを念頭に置いたものであった。

 しかし、1960年代になると面白い広告や美しい広告が注目されるようになり(いわゆるクリエイティブ革命)、リーブスの理論は否定的な評価を受けるようになる。さらにリーブス自身が広告界を退いたこともあり、USPはしばし忘れ去られていたが、21世紀になって米国の著名なマーケターであるジェイ・エイブラハム(Jay Abraham)に取り上げられ、再び広められることになった。

参考文献

▼『宣伝術』 ロッサー・リーブス=著/箕浦弘二=訳/新潮社/1963年11月(『Reality in Advertising』の邦訳)

▼『テレビの夢から覚めるまで――アメリカ1950年代テレビ文化社会史』 有馬哲夫=著/国文社/1997年3月

▼『お金をかけずにお金を稼ぐ方法――全米no.1マーケティング・コンサルタントのノウハウ』 ジェイ・エイブラハム=著/平仲成敏=訳/PHP研究所/2001年7月(『Getting everything you can out of all you've got』の邦訳)


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