連載
» 2016年12月20日 05時00分 UPDATE

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(35):プロジェクトが頓挫したので、18億円請求します (2/3)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]

損害賠償の範囲が争点になった裁判の例

 基本契約と個別契約の「解釈」を巡って、ユーザーとベンダーが争うケースが増えてきた。例えば、ベンダーが原因でプロジェクトが頓挫してしまったときだ。

 ベンダーの損害賠償の責任は、基本契約に基づいた「プロジェクト全体」に及ぶのか、それとも「個別契約の範囲内」に収まるか。裁判例で見てみよう。

東京地方裁判所 平成28年4月28日判決から

ある化学メーカーが、海外ERPパッケージの導入をベンダーに依頼した。メーカーとベンダーは、基本契約を締結した上で、プロジェクトを以下の6つのフェーズに分け、それぞれ個別契約を締結した。

  1. 方針策定と業務設計
  2. 業務要件とシステム要件の確定
  3. システム全体の設計
  4. 業務詳細化とアドオン開発からシステムテスト
  5. 実績運用テストとマスター整備
  6. 保守・運用

プロジェクトは、1〜4まで実施され、その分の検収と代金支払いが行われたが、その後、パッケージソフトの権限管理やアドオン開発部分の品質が不十分であるとして、メーカーはプロジェクトの中止を決定し、ベンダーに損害賠償額の上限である18億円(※)を請求した。

※ メーカーはベンダーに、1〜4までの支出合計「40億円」に加え、その他の損害も賠償してほしいと考えていた。しかし当初の契約で「損害賠償額の上限は18億円」と定められていたので、限度額を請求した

 18億円はベンダーが既に支払いを受けた代金以上、つまり赤字になる。

個別契約ごとに検収を受けていたが……

 ユーザーは、個別に検収していても、「プロジェクト全体が完遂していないのなら、ベンダーは仕事をしなかった。だから払ったお金も含めて全部返してほしい」と考えた。

 対してベンダーは、費用と期限、成果物を明確に書いている個別契約がおのおの有効であり、全ての作業が完遂していなくても、検収を受けたものは払ってもらえるはずだと訴えた。

 結果はどうだったのか。判決文から抜粋してみよう。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

TechTargetジャパン

この記事に関連するホワイトペーパー

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。