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» 2017年05月08日 05時00分 UPDATE

Interop Tokyo 2017 特集:総務省 情報通信国際戦略局に聞く、IoT時代のSDN/NFV、個人情報、デジタルビジネスの在り方 (1/2)

「日本再興戦略2016」には、日本主導による第4次産業革命の実現を目標に掲げ、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットといった技術を軸にした具体的な施策が記載されている。この成長戦略を牽引する省庁の1つである総務省、情報通信国際戦略局で、第4次産業革命の最前線に身を置く谷脇康彦局長に話を聞いた。

[山崎潤一郎,@IT]
総務省 情報通信国際戦略局長 谷脇康彦氏(大の音楽好きを公言しており、中でもプログレッシブロックに造詣が深い)

 2016年、政府は、名目GDP600兆円の実現に向けた成長戦略「日本再興戦略2016」を閣議決定した。そこには、日本主導による第4次産業革命の実現を目標に掲げ、IoT(Internet of Things)・ビッグデータ・AI(人工知能)・ロボットといった技術を軸にした具体的な施策が記載されている。ただ、文章でびっちりと網羅的に書かれた政策や施策を一読しただけでは、いまひとつピンと来ない。

 そこで、この成長戦略を牽引する省庁の1つである総務省、情報通信国際戦略局で、第4次産業革命の最前線に身を置く谷脇康彦局長に話を聞いた。

 なお谷脇氏は、Interop Tokyo 2017において「データ主導社会とIoT戦略」というセッションで登壇予定だ。

IoT機器が吐き出すデータは、デジタルエコノミーの血液

 谷脇氏が説明のために提示した資料の中で真っ先に目を引いたのが「データ主導社会の実現に向けて」という文言である。

図1 PDCAサイクルのような形でIoTデータのフィードバックループを形成し、さまざまな課題の解決につなげようという「データ主導社会」の実現に向けて

 「IoTの時代になると、ネットに接続されたあらゆる“モノ”が大量のデータを吐き出します。それを、クラウドにビッグデータとして蓄積すると同時にAIで解析し、その結果を現実世界にフィードバックすることでさまざまな課題を解決します。このようにデータが血液のように循環し、社会を活性化させる世界を『データ主導社会』と定義しました」

 ただ、「データの循環」とひと言で言っても漠然とした印象で現実感に欠ける。具体的に、どのようなデータを循環させることで、どのようなメリットが生まれるのだろうか。

 「データは、大きく4つに分類できます。1つ目は、国あるいは地方公共団体が持っているあらゆるデータを機械判読可能な形でデジタル化し、民間でも利用可能にする『オープンデータ』という取り組みです」

 「オープンデータ」に関しては、既に全国でさまざまな取り組みが実施されている。例えば、福岡市のベンチャー企業ウェルモは、福岡市が提供する介護施設などのデータを利用して「ミルモ」という介護職に携わる人向けの情報サービスを提供している。オープンデータの活用による介護現場のIT化を実現し、介護業務の効率的な遂行を補助している。行政側がデータをオープンにすることで、福祉分野に「民」の活力を導入した例である。「官」の負担軽減も期待できる。

 2つ目は、「暗黙知のデータ化」だ。「例えば農業分野では、従事者の高齢化によって失われつつある叡知を何とかしなければなりません」。田畑にセンサーをばらまくことで、日照量、風向、気温など、外的環境のデータを採取。同時に、農家の人の行動をデータ化し、この2つのデータを掛け合わせることで、長年の経験や勘といった“暗黙知”をデータ化することができる。これまで勘に頼っていた農作業のあらゆる部分をデータドリブンで実行することで、付加価値の高い新しい農業が期待できるという。

 「3つ目は、高度化したM2M(Machine to Machine)の領域です。1箇所、2箇所といった話ではなく、機器のあらゆる部品、至るところに取り付けられたセンサーからデータを採取することで情報の粒度を極度に高くすることができます。それをクラウドのAIで解析すれば、現実世界のありようをサイバー空間で的確に把握でき、都市経営の効率化や最適化に生かすことができます」

 4つ目は、パーソナルデータだ。2017年5月には改正個人情報保護法が施行され、匿名化された個人情報をビジネスに活用できるようになる。IoTから取得した膨大なパーソナルデータを生かし、新たなビジネスモデルや産業を興すことも可能になるという(後述)。

 このように、現実世界から取得したあらゆるデータをクラウドのAIで解析することで、今まで見えてこなかった側面が見えてくることもあるというのだ。それを素に、現実世界の課題解決に結び付けるのが「データ主導社会」ということになる。

異なるIoTシステムを結ぶ認証基盤を構築

 ただ、ここで1つの疑問が生じる。課題解決のためにPDCAサイクルのような形でIoTデータのフィードバックループを形成するのは、大いに理解できるのだが、特定の領域や企業内など閉じた形でループを回していたのでは、従来ある、FA(Factory Automation)、OA(Office Automation)、M2Mといった、業務の効率化やコストダウンを図るための手法と変わらないと思うのだ。そこに新たな付加価値を生み出す余地はあるのだろうか。

図2 IoT総合戦略:具体的施策の全体像(無数のIoTシステムが連携することで、単なる効率化・コストダウンの域を超えた新たな付加価値の創出を目指す)

 「新しい付加価値を生み出すために『System of SystemsとしてのIoT』という考え方を提唱しています。図2は、IoTシステム全体の構造を概念化したものです。上の『サービス(データ流通)層』から下の『端末層』まで4つのレイヤーに分かれています。縦の点線で囲った部分が特定の分野や企業が構築したIoTシステムと考えてください。System of Systemsは、無数に登場するであろう、これらIoTシステム同士が相互に連携(赤い矢印)する様子を表します」

 つまり谷脇氏は、特定分野や企業のIoTシステムを、閉じた形で運用していたのでは従来型のIT投資の域を出ないが、IoTシステムが相互連携を行い異領域・異分野のデータをやりとりすることで、単なる効率化、コストダウンの域を超えた新たな付加価値の創出、つまりIoT時代ならではのビジネスの実現が可能になると予測しているのだ。そこで、このSystem of Systemsの要となるのが、4つのレイヤーの上から2番目の「プラットフォーム層」である。

 「プラットフォーム層に情報連携の要となる認証基盤を構築し、IoTシステム間でのデータのやりとりを可能にする土台とします。この認証基盤は、大手企業だけではなく、ベンチャー企業にも開放することで多種多様なプレイヤーを呼び込み、人跡未踏のIoTビジネスが生まれるインキュベーターの役割を担うようになると思います。認証基盤は、官民が連携して構築するイメージです。そのためには、IoTデータのフォーマットやアノテーションを共通化する作業も必要になります」

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