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<vol.9の内容>
「マーケットレポート:転職サイト比較調査」
前回は認知度と実際の利用の度合いの相関関係について調査したが、第2回目は、「認知経路」によって15社の各サイトの「強み」「弱み」を比較してみる
「特集:ワンダーマーケットB2C」(5回シリーズ)
人気アナリスト:荒木正人氏による日本のB2C市場に関する連載コラム。第2回目の今回は、 日本のB2Cにおける競争力という視点から、「見込み客」へのアプローチについて提示
ネットインサイダー編集部では、株式会社プロシークの協力を得て、転職サイトの利用実態を明らかにすべく、主要な15の転職サイトを対象に1万人にアンケート調査を実施し、488人の回答を得た。その結果を本誌面で4回に分けて報告する。
検索 | バナー | メール | 新聞 | 雑誌 | その他 | |||||||
全体(合計) | ***** |
50%
|
** |
22%
|
* |
16%
|
4%
|
* |
14%
|
7%
|
||
Digital B-ing | ***** |
53%
|
* |
13%
|
* |
11%
|
4%
|
*** |
31%
|
5%
|
||
Find Job | ****** |
60%
|
−
|
* |
10%
|
−
|
* |
10%
|
** |
20%
|
||
Sim-career | ***** |
50%
|
* |
15%
|
* |
19%
|
−
|
** |
27%
|
8%
|
||
ecareer | *** |
35%
|
*** |
35%
|
** |
25%
|
−
|
* |
10%
|
* |
10%
|
|
en | ***** |
53%
|
** |
25%
|
** |
28%
|
−
|
−
|
6%
|
|||
Nikkeibp-expert | ***** |
57%
|
** |
26%
|
* |
13%
|
9%
|
* |
17%
|
−
|
||
Asia-net | *** |
37%
|
* |
11%
|
** |
21%
|
5%
|
−
|
*** |
37%
|
||
JOBMAIL | ****** |
69%
|
* |
15%
|
** |
23%
|
−
|
8%
|
−
|
|||
JobJungle | **** |
46%
|
*** |
31%
|
* |
15%
|
6%
|
4%
|
6%
|
(注1)
最もよく利用する求人サイト | % | |
---|---|---|
1位 | JOB JUNGLE | 36.6 |
2位 | Digital B-ing | 29.2 |
3位 | en | 6.9 |
4位 | Sim-career | 5.5 |
5位 | Nikkeibp-expert | 4.8 |
6位 | ecareer | 4.2 |
6位 | Asia-net | 4.2 |
8位 | JOBMAIL | 2.9 |
9位 | Find Job | 2.1 |
10位 | 登龍門 | 0.8 |
10位 | JOB JOB | 0.8 |
12位 | worktank | 0.6 |
12位 | JOBWORLD | 0.6 |
14位 | Career Space BJ | 0.4 |
15位 | JOB IN JAPAN | 0.2 |
(注2)全回答数は476 |
転職サイト15社全体で認知経路を見てみると、検索エンジン、バナー広告、メール広告、新聞、雑誌の順となり、ユーザーはネット上から直接サイトにアプローチすることが多いようである。
さらに、数値を見てみると、検索エンジンが49.8%であり、2位のバナー広告(21.9%)、3位のメール広告(16.2%)を大きく引き離す結果となった。
今回の調査で『最もよく利用しているサイト』のトップであり、認知度、訪問度、応募度でも高いスコアであった「Digital B-ing」の特徴は、雑誌媒体の比率が約3割と15サイト中トップという点である。
同サイトの場合、雑誌でのプロモーションを通じて認知度を上げ、検索エンジンでは、検索結果に表示された複数のサイトの中から、高い認知度によりユーザーに選択されていくというストーリーが推測される。このことから、インターネット上のサイトといえども、既存媒体がプロモーション上、重要な役割を果たすことが理解できる。
「Sim-career」についても同じリクルートということで、「Digital B-ing」同様、雑誌プロモーションが高くなっている。「Nikkeibp-expert」についても、日経グループの持つ雑誌、新聞、ネットなど各認知経路からバランスよく認知されている。
「ecareer」「en」はメール広告、バナー広告といったネット上の広告により認知されている。「ecareer」はソフトバンクのサイトであり、グループ内の検索エンジンやメールマガジンを使って、プロモーションを実施しているようである。「en」についてもヤフーなどのサーチエンジンを中心に積極的なプロモーションを展開している。
なお、「ecareer」についてもソフトバンクのサイトということで「Digital B-ing」同様、雑誌媒体を持つが、『コンピュータ』中心のため『転職』とのシナジーが低く、雑誌媒体の認知経路は低くなったものと思われる。
「Find Job」「JOBMAIL」については、検索エンジンからの認知が6〜7割と極めて高い結果になった。この2社は「最もよく利用しているサイト」15社のうち、認知経路の対象となった9社中で8位、9位にそれぞれ位置付けられている。
このことから、この2社については、検索エンジンからの認知が高かったのではなく、ネット広告や既存媒体による広告など積極的なプロモーションを展開していないため、結果的に検索エンジンの数値が高くなったと見るべきであろう。
以上(前回の内容)がB2Cのプレーヤーの特徴であるとすれば、日本のB2Cの事業としての特徴は、主にインターネットの通信機能を活かして、ウェブサイトに来訪してきた見込客を「刈り取る」ための販売チャネルとして利用されてきたということである。「刈り取り」とは、購買の目的を持って主体的にウェブサイトに来訪してきた見込客をEメールや店舗において購買、成約まで誘導することをいう。
例えば、マンションを買いたい人が、予めウェブサイトで物件を絞り込んだ後にアクセスをしてくる場合である。この場合、マンション分譲業者は見込客の希望する物件の現場見学の日程をセットするなど、通常のちらしや展示会で集客した見込客と同様の手続きを踏む。購買意欲の高い見込客をウェブサイトで待っていて、正に「刈り取る」だけなのである。
マンションディベロッパー大手の大京は、95年12月からインターネットによるマンション販売を始めており、99年度は契約戸数で1,091戸、契約金額が396億円となり、戸数、金額共に全体の10%を上回った。マンション取得の平均年齢は約36歳と言われているが、大京のeコマースの営業戦略は35歳を過ぎた見込客のみをターゲットとした「刈り取り」である。
インターネットの最大の特徴であるコミュニケーション機能を活かした販売促進活動によって、見込客を主体的に「育成」したり「啓蒙」したりすることはほとんど行われていないと思われる。「育成」、「啓蒙」とは、短期的には顧客となる可能性の低い見込客に対して、ウェブサイトとEメールを用いて、付加価値(商品、情報、ソリューション)の提供を行なうことによって、中長期的な見込客とすることである。自社のファン作りと言える。
2000年から2001年にかけては、見込客をウェブサイトで待って「刈り取る」だけではなく、企業が見込客を吸引するようなウェブサイト作りを行なうことによって、見込客の「育成」、「啓蒙(ファン作り)」に全社的に取り組む企業がB2Cにおいて競争力を持つと思われる。
例えば、インターネットでの自動車購入支援サービスを行っているオートバイテル・ジャパン株式会社( http://www.autobytel-japan.com )は見積依頼客を呼び込むウェブサイトではなく、車好きの人間が1日に一度は来訪したくなるようなウェブサイトを意識して作ることが重要であると考える。車好きの人間は短期的にはオートバイテル・ジャパンで見積依頼をしないかもしれないが、オートバイテル・ジャパンのファンにすることによって、中長期的な見込客として育成することが可能になるからである。
大京は今後、「刈り取り」に加えて、「育成」や「啓蒙」も強化していく方針であると思われる。そのためには、大学卒業後マンション取得の平均年齢である36歳までの14年間に対応するコンテンツが必要になってくるだろう。例えば、マンション購入に際して必要な知識や資金面での相談、金融機関と提携した預金制度、あるいは、マンション生活全般に関わる情報提供などが考えられよう。
その他、取材した企業の中では、近畿日本ツーリストやラオックスなどもコミュニケーション機能を活かして、見込客の「育成」や「啓蒙」を志向している。
B2C事業において、ウェブサイトやEメールを用いたコミュニケーション機能による販売促進の強化は、ネット販売での売り上げだけではなく、リアルでの売り上げにも大きく貢献すると考える。現在でも、商品を買う前にはインターネットで検索し、企業や商品の概要をウェブサイトでチェックしてから購入を考える、あるいは店頭に行く、という行動パターンを取る見込客がいると思われる。今後、インターネット利用者数が増加するに伴って、このような行動パターンを取る見込客が益々増えていくと予想されるからである。
本稿では、B2C事業を販売事業としてではなく、ネットとリアル双方に対する販売促進事業としてとらえ、B2Cの集客および販売促進活動に焦点を当てて、それぞれの機能のポイントや、アナリストとしての立場から投資家の着目点を提示する。第3回目は認知や集客の視点から、第4回目、第5回目は販売促進活動の視点から整理する。
略 歴 | |
---|---|
1967年11月 | 香川県丸亀市に生まれる |
1991年 3月 | 東北大学経済学部卒業 |
1991年 4月 | 株式会社三和総合研究所入社 |
主に、カーディーラー、住宅販売会社、食品販売会社のマネジメントコンサルティング業務に従事 | |
1999年 3月 | 青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際ビジネス専攻課程修了 |
1999年 8月 | 株式会社一吉証券経済研究所入社 |
主に、ヤフー、インターキューなどのインターネット関連担当のアナリスト業務に従事 | |
2000年 3月 | ウィット・キャピタル証券株式会社入社 |
ヤフー、サイバーエージェント、楽天など、インターネット広告企業、Eコマース企業を中心にカバレッジ | |
2000年 4月 | 日経金融新聞の人気アナリストランキング「IT・インターネット部門」にランクイン |
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