連載
PMとコンサルタントは育ちが違う(1)


PMとコンサルタントの現状と育ちの違い

井上 実

2007/6/21

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PMとコンサルタント育成上の相違

 上記のように、PM/コンサルタントともに需要も希望者も多いが、PMはある程度の人数を育成することに成功したが、コンサルタントは十分に育成できていないというのが現状のようだ。

 その原因の1つには、職種共通の知識体系・資格の存在がある。

 PMはPMBOK(Project Management Body of Knowledge)という標準知識体系があり、これに基づく資格試験としてPMPがある。PMPを取得することでPMとしての知識が身に付いたことが証明される。そのため、SI企業は競ってPMP取得者を増加させるべくPM育成に力を注いでいる。その結果がPMに従事している人数の増加に表れている。

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 もちろん、知識だけでPMの仕事ができるわけではない。プロジェクトマネジメント上の課題を解決した経験や、交渉力、コミュニケーション能力、リーダーシップなどのヒューマンスキルもPMに欠かせない能力である。しかし、PMPを取れば、最低限の知識の保有の証明になっていることは事実だ。

 一方、コンサルタントは標準の知識体系や資格があるわけではない。中小企業診断士やITコーディネータなどコンサルタント業務を行う人向けの資格はあるが、PMPのように世界標準的なものではない。そのため、すべての企業がその取得を奨励しているわけではない。つまり、コンサルタントには知識・スキルを証明する手段がない。

 しかし、これだけがPMとコンサルタントの人数的な差を生み出しているとは考えにくい。PMとコンサルタントの育成には、何かもっと根本的な差が存在すると思われる。

PMとコンサルタントの熟達プロセス

 松尾睦著「経験からの学習」の中で、PM14名とコンサルタント10名に対するインタビューにより、それぞれの熟達プロセスを調査した結果が掲載されている(図4、5参照)。

(図4)プロジェクトマネージャの熟達プロセス

(図5)コンサルタントの熟達プロセス

 これを比較してみると、入社から5年目までの初期においては、いずれも「SEとしての部分的な仕事」や「プロジェクトのサブリーダー」として従事する中で、技術的知識を獲得しており、あまり大きな違いはない。もちろん、仕事内容の違いから、PMは「モノづくりのプロセスの理解」に関する知識を、コンサルタントは「業務知識」「会社の仕組みの理解」などの知識を獲得している点は相違している。

 大きな相違があるのは6年目から12年目の中期である。コンサルタントは「1人で成し遂げた経験」や「ゼロからの経験」により、概念スキルを獲得しているのに対し、PMは中小規模から大規模のプロジェクトを担当する中で、集団管理スキルを身に付けている。

 コンサルタントは顧客が抱える潜在的問題点を見つけだし、解決策を考え出すことを仕事としており、問題点が何かが明確ではないことが多い。このような不良定義問題に対するためには、抽象度を上げて問題点を見直す概念スキルが不可欠となる。

 一方、PMは比較的明確に定義されたプロジェクト目標に対し、プロジェクトという集団を的確に進めることが仕事である。そのため、集団を管理するスキルが最も重要なスキルとなる。

 つまり、コンサルタントは「概念スキル」が、PMは「集団管理スキル」が中核的スキルであるという相違が育成方法にも大きく影響している。

 次回は、コンサルタントとPMの中核的スキルの相違から来る育成方法の相違を明らかにし、コンサルタント育成のポイントを検討する。

参考文献

筆者プロフィール
井上 実(いのうえ みのる)
横浜市立大学文理学部理科卒。多摩大学大学院経営情報学研究科修士課程修了。グローバルナレッジネットワーク(株)勤務。人材ポートフォリオ構築、人材開発戦略立案、キャリアパス構築などに関するコンサルティングを担当。中小企業診断士、システムアナリスト、ITコーディネータ。
第4回清水晶記念マーケティング論文賞入賞。平成10年度中小企業経営診断シンポジウム中小企業診断協会賞受賞。
著書:「システムアナリスト合格対策(共著)」(経林書房)、「システムアナリスト過去問題&分析(共著)」(経林書房)、「情報処理技術者用語辞典(共著)」(日経BP社)、「ITソリューション 〜戦略的情報化に向けて〜(共著)」(同友館)。
■要約■
常に不足がちなPM(プロジェクトマネージャ)とコンサルタント。PMの育成に比べて、コンサルタント育成には苦労している企業が多いのは、“育ちの違い”にあった。この違いを認識し、コンサルタント育成のポイントを検討する。

あるアンケート結果によると、PM/コンサルタントともに需要も希望者も多いが、PMはある程度の人数を育成することに成功したが、コンサルタントは十分に育成できていないというのが現状のようだ。

PMとコンサルタントの熟達プロセスを調べると、1年目〜5年目はどちらもSEやプロジェクトサブリーダーに従事している。しかし6年目から12年目の中期になると、コンサルタントが概念スキルを獲得しているのに対し、PMは中小〜大規模プロジェクトを担当する中で集団管理スキルを身に付けている。つまり、コンサルタントは「概念スキル」が、PMは「集団管理スキル」が中核的スキルであるという相違点が、育成方法にも大きく影響しているようだ。

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