データセンターとネットワークの最適解間違いだらけのデータセンター選択(2)(1/2 ページ)

データセンターをうまく活用することによって、ネットワーク設計を最適化し、企業のITインフラを効率化することができる。これを実現する際に基本となる考え方を解説する。

» 2006年09月06日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]

 前回は第1回目として、データセンター利用への決断に影響を与えるポイントについてお話ししました。今回は、これを踏まえ、データセンター利用とネットワークの最適化について詳しく考察していきたいと思います。

 前回も触れたように、ネットワークのレスポンスはその上でどのようなアプリケーションが利用されているかによって異なります。データセンターを利用する際には、アプリケーションがどのような形態で利用されているかを適切に把握することで、ネットワーク全体から見てどのようにサーバを配置し、ネットワークを構成するかを決定することができます。

ネットワーク利用状況を5W1Hで把握する

 通常、ネットワークの利用形態を把握する場合、「5W1H」で見ることが基本となります。

WHO(誰が)?

 誰がネットワークを利用しているかを把握します。例えば、財務系アプリケーションは、全社的に利用するというよりも、特定の部署が集中的に利用することが考えられます。トラフィックやアクセス頻度との見合いで、アプリケーションを稼働するサーバをネットワークのどこに配置するかを決定することができます。

WHAT(何を)?

 通常、それぞれのサーバには複数のサーバソフトウェアが稼働しており、こうしたソフトウェアがネットワークからアクセスされて使われています。また、アプリケーションによっては、1つのアプリケーションを分散配置可能なように複数のサービスに分けて構成しているものもあります。WHATでは、このようなサービス単位で、ユーザーが「何の」サービスを利用しているかを把握する必要があります。

WHERE(どこから)?

 WHOにつながることですが、ネットワークのどこからアクセスされているかを把握することを意味しています。特に、事業所が各地に展開されているような場合は、WHOで説明した部署と併せて、どこの事業所という物理的位置も把握するとよいでしょう。データセンターを利用するに当たっては、それら事業所からの回線を収容しやすいところを選択するなど、地理的な情報が必要になる場合があります。

WHEN(いつ)?

 時間的にいつのタイミングでアクセスが集中するかを把握します。月間や年間など一定の周期でどのようなアクセス・トラフィックパターンがあるかを把握するのも重要です。例えば、勘定系は月末にアクセスが集中します。アクセスの集中頻度、そしてトラフィックボリュームを適切に把握することで、サーバなどの配置に合わせた回線容量やネットワーク構成の計画を立てることが可能になります。

WHY(なぜ)?

 上記4つに関連して、ユーザーがなぜアクセスしているのかを把握します。たとえば、あるアプリケーションのデータを、ほかのデータやアプリケーションで利用したりするケースがあります。このような場合、アプリケーションを1台あるいは一群のサーバに統合することで、ネットワーク全体のトラフィックを減らしたり、分散しているトラフィックを一部に集めるようなことも可能になります。特に、ユーザーに依存しないバッチ処理によるトラフィックは、時間やトラフィックの面でネットワークに一定の負荷を与えるため、地理的に同じ場所に配置することで、効率を向上できるだけでなく、回線料金を低減することも可能になります。

HOW(どのように)?

 最後に、各アプリケーションがどのように利用されているかを把握しましょう。例えば、アクセス数は多いがトラフィックは少ない(1回のアクセスに対する通信トラフィック量が少ない)などです。Webアプリケーションを利用しているような場合は、このようなケースが多く見られます。逆に、ビデオ会議通信やデータ共有をはじめ、1回のアクセスで大量のトラフィックを発生するアプリケーションもあります。トラフィックが少なく、アクセスが多いものについては、ネットワークの負荷は小さくても、サーバは処理効率が高いものが望まれますので、高速なサーバをデータセンターに配置して処理するということも考えられます。

 上記のように、5W1Hで見ることにより、現在のネットワークがどのような状態で稼働しているかを把握することができ、問題が起こった場合でもその原因を特定することが容易になります。

 ネットワーク利用状況把握のベースとなる管理情報は、通信回線、アプリケーション、サーバといった個別の情報ですが、これらを部署別、事業所別に分けて把握します。また、企業の情報活動の場合、その情報は、勘定系、販売系、業務系に大きく分類されますが、この系ごとにトラフィックやアクセスの形態を把握しておくことも重要です。

 ネットワークのステータス情報は、さまざまなソフトウエアを利用して収集することができ、多くはオープンソースのソフトウェアで実現できます。例えば、トラフィック管理であればRRDToolMRTGです。RRDToolやMRTGは、簡単なPerlなどのスクリプトと合わせることで、アクセス数管理やメールの送受信数管理などにも応用が可能です。Webアプリケーションであれば、Webアクセスの状態を管理するWebalizerなども利用できます。

 パッケージの管理ソフトウェアを利用している場合でも、ネットワークのアクセス状態はログファイルなどで管理できますし、ソフトウェア自体が解析機能を持っているものもありますので、これらの情報は有効活用し、常に情報を取得しておくことが重要になります。

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