ハイテクや一般消費財分野などをさらに強化する方針:ハイテクや一般消費財分野などをさらに強化する方針

» 2008年01月18日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 度重なる企業買収で事業拡大を図る米オラクル。2007年5月には、米Agile Softwareを買収し、PLM市場に参入。日本においても、2007年12月にPLM市場への本格参入を発表した。今回は、米オラクルのPLM/PIM製品戦略担当バイスプレジデントであるハルディープ・グラティ(Hardeep Gulati)氏に同社がPLM市場に参入した背景などを聞いた。

 Agile Softwareは、PLMアプリケーションである「Agile Product Lifecycle Management」(以下、Agile PLM)を中核製品として展開しており、開発プロセス管理や統合BOM(部品表)管理などの分野で現在1300社以上の顧客を持つ。日本では、パナソニックや日立、シャープ、NECなど、家電・ハイテクメーカー大手に数多く採用されている実績がある。

 米オラクルは、2007年5月に米Agile Softwareを4億9500万ドルで買収。日本オラクルもAgile Softwareの日本支社の吸収合併を10月に完了し、現在日本オラクルの営業部隊にAgile製品のトレーニングなどを行っている段階だという。

グラティ氏写真 米オラクル PLM/PIM製品戦略担当バイスプレジデント ハルディープ・グラティ氏

 グラティ氏は、オラクルがAgile Softwareを買収した理由を「PLMはオラクルとオラクルの顧客にとって、戦略的注力領域であることが大きい。中でも最大の理由は、現在のPLMは製品ライフサイクルを企業全体の視野で部門を超えて統制するものに進化してきており、当社が買収したシーベルのCRMから始まり、SCM、ERPを統制できるようになった。従って、これらの製品ライフサイクルを統制するために、エンタープライズPLMソリューションが必要だった点だ」と説明した。

 オラクルの顧客がPLMを必要としている主な理由については、「コモディティ化やグローバル競争の加速により、新製品開発期間の大幅な短縮プレッシャーが強まっている」「製品開発の多くの部分をアウトソーシングに頼るようになり、コラボレーションの必要性が増加している」「DFX(Design For X:Xに配慮した設計)戦略」「製品のコストや品質への影響力の高さが増大している」の4点を挙げた。ちなみにXに配慮した設計とは、設計当初からコンプライアンスに配慮して設計することや、環境に配慮して設計することなどを指す。

 グラティ氏は、さらに「例えば、ボーイングは従来の旅客機は内製部品の比率が90%だったのに対し、次期主力旅客機であるボーイング787では90%を外部委託部品で構成しており、それらの部品を3日で組み立てている。また、EUでは環境規制が強化されてきており、ソニーはRoHS指令の影響で190億円損失したという。こういったコンプライアンスへの対応や新製品設計は必須になっている」という例を挙げ、PLM買収の根拠を示した。

 Agile PLMは、ライフサイエンス、産業機器、ハイテク、自動車、航空産業、一般消費財の6つの分野に強みを持つPLM製品で、中でもライフサイエンス、ハイテク、一般消費財の分野ではリーダーだという。

 今後のAgile PLMの製品戦略についてグラティ氏は、まず「既存のロードマップとサポートの維持」を挙げた。特に、Agile PLMの特徴である“オープン性”については、今後も継続していくとした。具体的には、今後もあらゆるCAD環境、ERP環境にも対応していくという。

 「既存のAgile PLMユーザーの40%は、SAPインストール環境で利用している。もちろん、当社ERP製品との連携も強化していくが、SAPなど他社製品サポートも今後も維持することをコミットメントする。これは、CAD製品に関しても同様だ」(同氏)と強調。そのほか、オラクルのSOAフレームワークである「Oracle Application Integration Architecture」(AIA)との連携や、Fusionテクノロジの取り込みを、今後実現していく。

 今後の開発計画では、シーベルのCRMとの連携として、「製造」や「仕入先との関係」「サプライチェーン計画」「需要計画」において接続することを計画しているという。また、「需要主導計画」や「顧客要件のトレーサビリティ」「SOA」「Web 2.0/Enterprise 2.0」などの機能実装も計画中だ。

 グラティ氏は、日本における戦略について「日本にはパナソニックや日立など、大手メーカーでの採用実績がある。また、Agile Softwareはハイテクに強いなど、日本のメーカーに合っている部分も多い。日本はカスタムアプリケーションを多く利用しているため、そことの連携をいかに実現するかが重要になってくる。その点、Agile Softwareの強みはオープンな点なので、レガシーやカスタム環境で強みを発揮できるはずだ」と説明。「具体的な目標を明らかにするわけにはいかないが、過去オラクルが買収した企業は、買収のシナジー効果によって、4〜10倍の売り上げを達成している。今回のAgile Softwareでも、同様の効果を期待したい」とコメントした。

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