SAPとビジネスオブシェクツ、中堅・中小にもBIをアピール2009年にはOLAPツール「Pioneer」も共同開発

» 2008年09月25日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 SAPジャパンは9月25日、プレスセミナーを開催し、独SAPが2007年10月に買収したビジネスオブシェクツ(以下、BO)とのBI製品の住み分けについて発表した。SAPのダッシュボード製品「Web App Designer」、レポーティング製品「Report Designer」を、それぞれBOの「Xcelsius」「Crystal Reports」に順次置き換えるほか、SAPのOLAP分析ツール「BEx Analyzer」とBOの「Voyager」を融合して、新製品「Pioneer」を開発し、2009年半ばをメドにリリースするという。

 これまでBIはアナリストをはじめ、企業の中でも限られた人材にしか使われてこなかった。また、データを有効活用するためには、複数システムのデータを1つに統合し、整合性のとれた状態でデータを提供する必要があった。これを受けてSAPは、ERPなど各種システムのデータをデータウェアハウス「SAP BW」にいったん統合し、BI製品「NetWeaver BIA」につなぐ、といったSAP BWにフォーカスしたアプローチを取ってきた。

 しかし近年は企業間競争がますます激化し、アナリストに限らず、経営層や現業部門など、社内の誰もが扱えるBI製品が求められるようになった。また、他社製のデータウェアハウスをすでに持っている企業の場合、SAPのBIを導入するために、データウェアハウスを複数持つことになる例も少なくなかった。SAPでは、以前からこれらの点を課題と考えていたという。

写真 SAPジャパン カスタマーイノベーションセンター マネージャーの加藤慶一氏

 SAPジャパン カスタマーイノベーションセンター マネージャーの加藤慶一氏は、「企業内のあらゆるユーザー層のBI活用促進と、各種システムのデータ統合・シングルビューでのデータ提供を合理的に実現すること──BOを買収したのは、これら2つの課題を早急に解決するためだった」と解説した。

 具体的には、経営層が使う経営管理製品から、現業部門向けのレポーティングツール、アナリストが高度な分析を行うためのOLAPツールまで、BOがBI関連製品を幅広くラインナップしていたことと、プラットフォームに依存しないオープン性を備えていたことが買収の決め手となったという。

 「データウェアハウスに限らず、企業システムにはベンダ各社の製品が混在している。その点、あらゆるシステムと柔軟に接続・連携できるBO製品は、既存システムの有効活用や、BI関連システムの乱立を防ぐうえで大きな強みとなる。また、BOの幅広いラインナップにより、BIについてはSAPがワンストップで提供できる体制も整った」(加藤氏)

 ただ、SAPとBOの製品は一部が機能的にオーバーラップしている。これについては「当面は並列販売するが、今後はSAPの経営管理製品『Web App Designer』、レポーティング製品『Report Designer』を、それぞれBOの『Xcelsius』『Crystal Reports』に順次置き換える。また、SAPのOLAP分析ツール『BEx Analyzer』とBOの『Voyager』を融合して新製品『Pioneer』を開発し、2009年半ばをメドに発売する」(加藤氏)という。

写真 BOの経営管理製品のUI。現業部門のユーザーでも直感的に扱える操作性を備えている

 なお、Web App DesignerとReport Designerは、2013年まで通常の保守・サポートを継続し、要望によって最長2016年までサポート契約を延長可能とした。「その後は買い換えることになるが、2016年までにはXcelsius、Crystal Reportsへの移行をサポートするマイグレーション方針を発表する」。SAP NetWeaver BWと、SAP NetWeaver BIAについては、今後も継続的にラインナップし、機能を強化していくという。

 新しいラインナップの価格体系は非公開だが、従来同様、ユーザー・CPUライセンス制で提供する。加藤氏は「BOは4万7000社の顧客企業と7万5000人のユーザーを持ち、BIベンダの中でもトップシェアを堅持している。また、最低280万円からのBI『Edge Series』をラインナップするなど、大企業だけではなく、中小・中堅企業をターゲットとしている点も1つの特徴だ。BOはSAPの子会社という位置付けだが、今後も独立した別の会社として両者の強みを生かし、中小・中堅クラスにもSAPユーザーを拡大していきたい」と話している。

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