クラウド化の不安を払拭、「収益向上に向けて“決断”を」日本HP、「クラウド時代のIT運用管理」について説明会

» 2010年04月23日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は4月23日、「クラウド時代のIT運用管理」の支援体制について説明会を行った。クラウドコンピューティングに対する関心が高まっている中、同社では「クラウド戦略の策定支援」「クラウド環境の運用管理を支援する各種ソフトウェア」「クラウドサービスを活用したシステムを安全に導入・活用するための検証サービス」という3つのサービス体系を用意。これらを通じて「クラウド化のライフサイクル全体を包括的に支援し、エンドユーザーの満足度、企業の収益向上を後押しする」とアピールした。

クラウドに対する関心はあるが、導入には踏み切れない……

 クラウドコンピューティングに対する関心が高まっている半面、国内企業の多くは、まだ現実的な検討段階に入りつつあるといった段階だ。例えば、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が4月9日に発表した「企業IT動向調査2010」によると、「SaaSまたはパブリッククラウドに対する見解」として、「利用している」と答えた企業は全体の10%。30%は「検討中」、52%は「利用予定なし」と回答している(一部上場企業1026社のIT部門長、953社の経営企画部門に調査)。懸念事項として、コスト削減の実現可能性や、システムのセキュリティ、可用性などを挙げる声が目立ったが、クラウドサービスの調達・運用保守の手間とコスト削減に対する期待は強く、“関心を持ちながらも、すぐには踏み切れない”状況が見て取れた。

写真 米ヒューレット・パッカード カンパニー アジアパシフィック&ジャパンの HP Software&Solutions Head of Strategic Marketing ブライアン・スプリング(Brian Spring)氏

 多くの企業がこうした状況にある中で、米ヒューレット・パッカード カンパニー アジアパシフィック&ジャパンのブライアン・スプリング(Brian Spring)氏は、クラウド化実現の第一歩として「まずは現状把握が不可欠だ」と解説した。

 「現在、企業のIT部門は、ユーザー部門に必要なサービスを提供する“サービスプロバイダ”に変わりつつある。よって、CIOはビジネス上の目標と予算を見据えて、パブリック/プライベートクラウド、あるいはホスティングサービスをどのサービスに適用するのか、どんなシステム構成にすれば予算内で確実に成果につなげられるのか、“最適なサービスポートフォリオ”を考えなければならない。そのためには、現在、社内にはどんなIT資産があり、どう使われているのか――まずIT資産の棚卸しを行うことが前提条件となる」

 そのうえでビジネスゴールをにらみながら、既存資産の現状維持・合理化・廃棄のいずれかを選んで整理するとともに、どんなクラウドサービスを活用するか検討するといった「“現状とゴールの両方を見据えたアプローチ”が重要だ」という。

 コスト管理についても、「コストとビジネスの要件に応じてクラウドサービスをどのタイミングで導入するのか――そもそも利用しない、利用していても元に戻すといった選択肢も含めて、常にコストとサービスレベルを秤に掛けながら、最適なクラウド活用の在り方を考えるべきだ」と解説した。

クラウド化を包括的に支援

 一方、先のJUASの調査ではクラウド化の懸念事項として、システムの可用性、コスト削減の実現性、セキュリティなどを懸念する声が目立ったが、HPでも欧米でのクラウド先行企業の導入事例を通じて、それらの課題にフォーカスしているという。

 具体的には、クラウド活用のポイントを、ビジネスに最適なサービスを迅速かつ安定的に供給するシステムの「弾力性」確保、予算の範囲内で流動的なビジネスニーズに確実に対応する「コスト管理」、クラウドサービスのセキュリティ対策や作業ミス防止などに配慮する「リスク低減」の3つに整理、これらの実現を支援する3つのサービスを用意しているという。

写真 2010年3月24日、システム構成の可視化、運用自動化などを行う運用管理製品群を拡充した

 1つは運用管理を支援するソフトウェア製品群だ。例えば、物理/仮想の混在した複雑なシステム構成を可視化し、一元管理を可能とする「HP Operations Manager software」、仮想サーバのプロビジョニングなど定型作業を自動化する“ランブック・オートメーション機能”を持つ「HP Operations Orchestration software 7.60」、仮想サーバの配備や移動を行っても自動的に構成情報を更新できる構成管理データベース「HP universal CMDB software」など、クラウド環境を効率的に支える各種運用管理製品群を提供している。

写真 クラウドコンピューティングという言葉の定義を学ぶレベルから、戦略立案、実装・運用に向けたロードマップまで、一連の計画策定を支援するコンサルティングサービスも開始した

 クラウドサービスの安全性、稼働状況、パフォーマンスなどを確認し、「安全に使える状態か否か」を検証するSaaS型サービス「HP Cloud Assure」も2009年4月に発表。2010年2月にはクラウド化のためのコンサルティングサービスの提供を開始し、「クラウドコンピューティング」という言葉の定義の確認から、クラウド化の実現に向けたインフラ設計/構築計画の策定まで、包括的に支援する6つのメニューを用意した。

 スプリング氏はこれらを指して、「弊社ではクラウド化のためのロードマップ策定や財務戦略から、クラウドサービスの機能・パフォーマンス検証サービス、そして実稼働を担うソフトウェア製品群まで、クラウド活用のライフサイクル全体を網羅的に支援している。この点が弊社サービスの大きな特徴であり、(ソフトウェア製品にはライバルも存在するが)、他社との差別化ポイントでもある」と指摘。特に、ユーザー部門あるいは最終顧客という「“エンドユーザーの視点”でパフォーマンスやサービスレベルを担保し、コストに配慮しながらビジネスの成果につなげる“ビジネスの観点”を軸としている点が最大の特徴だ」と解説した。

 日本において、多くの企業が関心を持ちながらなかなか導入に踏み切れない状況についても、「通信、金融、行政をはじめ、まずはさまざまな業態にクラウドのメリット、可能性を紹介していきたい」とコメント。そのうえで「収益や顧客満足度の向上に向けて“決断”を下せるよう、ユーザー企業のニーズに合わせてあらゆる角度から支援していく」と述べた。

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