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» 2016年03月16日 05時00分 公開

特集:アジャイル時代のSIビジネス(3):「ウオーターフォールかアジャイルか」ではなく「目的に最適かどうか」、“本質を見極める視点”が勝負を分ける――グロースエクスパートナーズ (3/3)

[斎藤公二/構成:編集部/@IT]
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求めるエンジニアとこれからのSIerとは

 現在、同社には70〜80名のエンジニアが在籍している。このうちコーディング担当は30〜40名で、残りは顧客とのコミュニケーションやマネジメント、仕様書などの作成、テストなどを行うメンバーで構成されている。Javaや.NET、AWS、Azure、Salesforceなどエンタープライズで求められる技術を幅広く取り扱い、ウオーターフォール開発の経験が豊富なスタッフがいる一方で、アジャイル開発だけに取り組んできたスタッフもいる。組織作りにおいては、特定の技術や考え方を持つスタッフだけに偏らないように心掛けているという。

 「技術は役に立ってなんぼです。技術を突き詰めても、自己満足で終わってしまっては意味がありません。弊社が求めているのは、顧客が求めているのものを理解してどんなITが最適かを考えられる人、そして常にそういう姿勢でいてくれる人です。エンジニアならエンジニア、テスターならテスター、マネジャーならマネジャー、それぞれの視点や取り組みがあります。1人1人が自分の立場からどうすべきかを考えることで、顧客企業全体を良い方向に持って行く、という感覚を持ってほしいと考えています」

 従って、「先進的な技術を突き詰めたい」という“だけ”のエンジニアにとっては厳しい環境になる。実際、そうした志望動機の場合は採用試験の際に断るケースもあるという。鈴木氏は「SIerは顧客に信頼され評価されることに価値があります。換言すれば、先進技術であるかどうかではなく、顧客にとって役立つ技術を選び、使いこなせるか否かでSIerの価値が決まります」と強調する。

 逆に採用で重視しているのは、「常に疑問を持って考え続けることができる人」だという。特にエンタープライズの世界では、技術知識を持たないユーザーのシステム要求が、エンジニアにとっては効率が悪かったり、ムダに思えたりすることが往々にしてある。技術力があればあるほど、そうしたユーザーの要求が面倒に感じてしまう。だが、ユーザーの立場に立って考えると、ビジネスとして理にかなった要求であることが多い。

 「自分の正しさを優先して他人の考えを認めないのは、若いころにありがちな傾向かもしれません。ただ相手の立場で考えてみるとそれが合理的だったり、古く非効率なやり方でも以前は技術的に正しかったり、ということも少なくありません。顧客の要求や意見を自分の知識・経験だけで切り捨てるのでなく、顧客企業のIT担当者の考えに対し、尊敬の念を持つことが大事です。『なぜそうなって今に至ったか』を理解し、きちんと相手の要望をくみ取る。その上で、何を採るかを決めることが、エンジニアとしてフェアな態度だと思います

 以上のような“思考停止からの脱却”が大切なのは、エンジニア個々人に限った話ではないという。鈴木氏は、「これからのSIerの態度としても、過去の成功体験に縛られて思考停止に陥るのではなく、常に最適なものを考えながら取り組んでいく必要があります」と指摘する。

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 「今、多くのSIer経営者の方々は、危機感を持ってさまざまな取り組みを進めていらっしゃいます。そうした中では、必ずしも新しい技術に取り組むことだけが正解ではないと思います。いかに顧客企業にとって役立つものを作るかがSIの本質ですから、そこにフォーカスして付き合いを深めていくことが大事だと思います。そもそも新しい技術でも、業務要件にフィットしなくなった瞬間に終わりです。そして技術は終わっても、ビジネスや会社は変わり続けていきます。従って、そのときどきで最適なものは何かを考え抜き、最も合理的なアプローチで実現する――時間はかかるかもしれませんが、多くのSIerがそうした視点を持つことで、業界全体の流れも必然的に変わっていくのではないでしょうか」

特集:アジャイル時代のSIビジネス

クラウドの浸透などを背景に、「SIビジネスが崩壊する」と言われて久しい。だが顕在化しない“崩壊”に、かえって有効な手立てを打てず不安だけを募らせているSIerも少なくないようだ。そこで本特集ではSIビジネスの地殻変動を直視し、有効なアクションに変えたSIerにインタビュー。SI本来の在り方と行く末を占う。



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