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» 2020年02月10日 05時00分 公開

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(74):退職するなら、2000万円払ってね (3/3)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]
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もしものときには、毅然(きぜん)とした態度を

 本件は、誰もが会社の言い分に無理があるとの判断に至るだろう。

 なのにあえてこの事件を取り上げたのは、冒頭申し上げた通り「もしもこうしたことが他でも起こっているのなら、重大な問題だ」と考えたからだ。

 IT業界には、必ずしも財務的に安定していない中小規模の会社が多い。1つのプロジェクトの赤字が即経営を揺るがす問題となり、それを知りながら退職をする社員がいないとはいえないだろう。

 企業からすれば、社員の稚拙なプロジェクト管理や技術不足、あるいは周囲に不快感を与える態度が経営に影を落とすなら、まして、その社員が会社を去るのなら、何らかの責任を問いたい気持ちはあるだろう。会社に残った社員たちの生活に影響することでもある。

 しかし、そもそもその退職社員を雇用したのも、教育したのも、そして仕事を任せたのも、会社だ。

 判決文にもある通り、社員のスキルや経験の不足は、会社が「リスク」と考えて、経営に折り込んでいなければならないものだ。それができないなら、IT企業を経営すること自体が無理なのだ。

 会社員である読者諸氏に申し上げたいのは、もし企業から損害の賠償を求められても、ほとんどの場合、それを受け入れる必要はないということだ。

 故意や重過失がない限り、賠償をする必要はない。これをしっかりと覚えておき、もしものときには毅然とした態度で対応していただきたい。無論、道義的な責任からさまざまな作業を強いられるかもしれない。引き継ぎ資料の作成や残った人間の教育、あるいは客先および関係各所への謝罪などはあるかもしれない。ときには嫌みの一つも言われるかもしれない。しかし、個人がその責任においてお金を払う必要はない。

 もし退職時に損害賠償を会社から求められたら、すぐにでも弁護士などの専門家に相談することを、お勧めする。

編集部注:事件の裁判所名に誤りがありましたので、修正いたしました(2020年2月17日)

細川義洋

細川義洋

政府CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員

NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。

独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。

2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる

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