連載:IFRS対応ITシステムの本質
最初に考えたい総勘定元帳の「松竹梅」
鈴木大仁
アクセンチュア株式会社
2009/7/30
IFRSは企業の会計ルールや業務プロセスなど経営要素全般に影響を及ぼすが、ITシステムでは総勘定元帳が影響を受ける。IFRS対応システムで最初に考えたいのは総勘定元帳の「松竹梅」だ(→記事要約<Page 3 >へ)
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まず経営の狙いを明確に
IFRSのシステム対応にはいくつかのアプローチがあります。IFRSベースの財務諸表を作るための最低限のシステム化をはじめ、IFRS適用で業務量が増える中で決算スピードを上げるためのシステム化、グループ経営管理の実現、高度化を図るためのシステム化などです。
安全安心・着実志向の傾向が強い日本企業はシステムを段階的に刷新するステップ論を好む面がありますが、一旦異なったアプローチで再構築してしまったシステムに対して、高度な設計思想を付け足すことは困難であり、結果的にシステムを作り直すことになります。なぜなら、総勘定元帳/勘定科目コードの持ち方や組織コードの持ち方といったシステムの骨格部分がまったく異なるからです。
これらのシステム化のアプローチや範囲を決定するためには、 IFRS対応をきっかけとして、「どのような経営モデルを目指すのか?」という狙いや着地点を明確にし、経営トップから財務・経理部門、IT部門などの関係者間で共有することが、まず最初のステップとして大切です。
目標移行日を早期に決める
IFRSへの移行日を早期に確定することも重要です。現在、日本ではIFRS強制適用は2015年3月期からという見通しが有力です。IFRSは過去1年の比較対象年度におけるIFRSベースの財務諸表の開示を求めておりますので、IFRSベースのBSは、その期首である2013年4月(2014年3月期)には記帳を開始することが望まれます。つまり、強制適用に間に合わせたシステム構築完了を狙う場合、その期日は2013年3月となり、いまから3年強ありますが、高度なシステムをグループ全体に導入することを考えると、長過ぎる期間ではありません。
また、2011年や2012年からの早期適用を目指すことは、グローバルにビジネスを展開する大手企業にとって株主などのキャピタル・プロバイダーに対応する上でも重要です。特に財務面の影響分析の結果、利益が上方修正されることが明確な企業の経営者は、早期適用を目指すでしょう。このような場合、早期適用をまずはIFRS完全移行までの過渡期と捉え、当初は大々的なシステムの改修や再構築はせずに最低限のシステム化に留め、制度対応を最優先に考えることが大切でしょう。
過渡期対応と本格対応を整理し、重複投資や事後対応による追加コスト(過去情報のIFRSの加工)の発生を避け、適切なタイミングで適切な戦略を採っていくためにも、IFRS導入の一貫したロードマップを描くことが重要となります。
システム化の選択肢は“松竹梅”
IFRS対応システムの選択肢として“松竹梅”の3コースが考えられます。必要最低限のIFRS対応は梅コース、グローバルで高収益を挙げる企業レベルの本格対応は松コース、その中間が竹コースです。中間の竹コースは、国内ビジネスを中心とする企業や、財務諸表や決算スピードに影響を与えるグループ内の各企業に優先順位が付けられる場合、もしくはERPのバージョンアップに合わせたIFRS対応を図る場合の実践的な選択肢となります。
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(アクセンチュア資料から作成) |