スピードこそ、新しい貨幣だ〜ジュニパーCEOエンタープライズ市場へキャリアグレードの信頼性を提供

» 2008年01月31日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 米ジュニパーネットワークス(以下、ジュニパー)は1月29日(現地時間)にエンタープライズ向けスイッチ市場に本格的に参入すると発表した。従来、キャリア向けハイエンドルータなどを中心に展開してきた同社がエンタープライズ市場に参入する理由などを、米ジュニパー 会長兼CEOのスコット・クレンズ(Scott Kriens)氏が説明した。

インターネット上の情報が個人・企業にとって重要になってきている

 クレンズ氏は、まず同社の戦略について「最も重要なことは『何を重視していくかということ』だ」と説明。「インターネットユーザーが1秒間に3人増えており、現在12億6200万人に達している。また、myspace.comやfacebookの利用者も1億2200万ユーザーに、Youtubeの利用者も17億3000万に達している」(同氏)とSNSや動画共有サイトなどの次世代Webサービスの利用者が急激に伸びているという。

ジュニパー写真 増え続けるインターネットユーザーに対応するは信頼できるネットワークが重要だという

 さらにクレンズ氏は、これらインターネットユーザーの多くが、インターネット上の情報を重視するようになってきている点を指摘。例えば、米国民の生活において重要なポイントとなる3つの項目について、「主要な病気や死について」では1200万人がインターネットで情報を収集し700万人が「重要な情報を得た」と回答。「転職」では同1400万人中800万人が、「キャリアトレーニング」では同3500万人中2100万人が重要な情報をインターネットで得たという。この点から同氏は「米国民の多くがインターネット上の情報を重要視してきている。つまり、ネットワークインフラの重要性や求められる可用性も非常に高まっているのだ」と語り、インターネットのインフラとしての重要性が高まっていると強調した。

 そして、現在のジュニパーは、売上高が30億ドル、キャッシュが20億ドル、従業員数が5800名強、研究開発費も年間6億ドルと順調に規模を拡大しており、「業界で、かなり良いポジションになってきている。少なくともキャリア向け市場では、確固たる地位を築いている」(クレンズ氏)と語り、エンタープライズ市場参入への機が熟したことを説明した。

 また、クレンズ氏は「スピードこそが新しい貨幣だ」と強調する。ビジネス変化の早い現代においては、ビジネス展開やネットワーク、すべてにおいてスピードが重要であり、スピードが早いことがビジネス拡大に直結するとした。また、ビジネスにレスポンスよく対応できる「ダイナミックビジネスモデル」もキーワードに挙げた。さらに、「ネットワーキングがビジネスサクセスに重要だ」と繰り返し強調し、前述の国民がインターネット上の情報を重視するのと同様に、企業にとっても品質の良いネットワークインフラが非常に重要になってきており、それを実現するのが“早く、信頼できて、セキュア”なハイパフォーマンスネットワーキングなのだという。

エンタープライズ市場向け戦略のカギはハイパフォーマンスDNA

クレンズ氏写真 米ジュニパー 会長兼CEOのスコット・クレンズ氏

 このハイパフォーマンスネットワーキングこそが、ジュニパーがこれまでキャリア向け製品などで培ってきた技術や信頼性であり、そのキャリアグレードの信頼性や技術をエンタープライズ市場に投入する。

 そして、クレンズ氏は「もはや、エンタープライズにとってもネットワークインフラはミッションクリティカルなインフラになっている。キャリアグレードの品質が必要になってきている」と前置きした上で、同社のエンタープライズ市場参入への4つの戦略を示した。

 1つ目は、「ベストインクラスのテクノロジを提供すること」。キャリア向け製品で培った技術を元に競合他社よりも高度なテクノロジを提供する。2つ目は「オープンネットワークス」。企業内では、ネットワーク機器が一社の製品で統一されていることはなかなかないため、他社製品とも連携できることが重要だという。3つ目が「スーペリアーパートナーシップ」。ジュニパーはIBM、マイクロソフト、オラクルなどとパートナーシップを締結しており、今後もこのパートナーシップを強化していく。4つ目が冒頭で同氏が強調した「フォーカス」だ。クレンズ氏は「当社はあくまでもネットワークインフラに今後も注力し、フォーカスしていく」とした。

 このように、エンタープライズ市場へ参入するジュニパーだが、今後簡単にシェア拡大ができると楽観視しているわけではない。クレンズ氏は、「エンタープライズ向けスイッチ市場へ参入したのは、高品質な製品を求めるユーザーの声が強かったからだ。従って、われわれはエンタープライズ市場へ参入するわけではなく、『ハイパフォーマンスネットワーキング市場』というものを新たに作っていくつもりだ。ハイパフォーマンス市場で当社が培ったDNAをエンタープライズユーザーにも提供したい。ただし、新たに市場を作るので売り上げを上げていくにはかなりの時間がかかるだろう。パートナーシップやオープンプラットフォームもシェア獲得の重要なカギになってくる。オープンネットワークという定義をはっきりさせるために、また新たな発表をする予定だ」と語り、今後の方向性を示した。

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