在宅勤務でコスト削減、CS向上を図るコツ日本アバイア、マルチメディア対応ソフトフォンを提供開始

» 2010年03月12日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本アバイアは3月12日、コンタクトセンターのオペレータ向けマルチメディア対応ソフトフォン「Avaya one-X Agent」を提供すると発表した。IP-PBXとの連携により、コンタクトセンターの電話受付をPCで可能にする製品で、オペレータの在宅勤務の効率化や、管理者側の管理上の不安を払拭する機能を確保したという。

管理者側の“見えない不安”を払拭

 コスト削減やワークライフバランス、パンデミック時のBCP対策といった観点から、在宅勤務が企業の関心を集めている。特にコンタクトセンター業務は、技術面では社内のセンターと同等の勤務環境を用意できることから、在宅勤務制度を導入しやすいといわれている。しかし、国内で導入を検討している企業はごく一部にとどまっているのが現状だ。

 日本アバイア シニアシステムエンジニアの橋本健氏は、「リックテレコムの2009年の調査では、在宅勤務を検討しているセンターは全体の10%しかなかった。弊社の顧客企業でも2000席未満となっている。しかし在宅勤務に対する企業の関心は高い。それでも導入に踏み切れない背景には、在宅オペレータがいま何をしているのか分からないという管理者側の“見えない不安”がある。これが情報セキュリティやスタッフの管理・監督上の問題に影を落としている」と指摘した。そこで、今回発表するAvaya one-X Agentでは、「在宅オペレータの“見える化”を実現する各種機能を確保した」という。

写真 日本アバイア システムエンジニアリング部 シニア システムエンジニア 橋本健氏

 1つはプレゼンス/インスタントメッセージング(以下、IM)機能だ。スーパーバイザーなどの管理者やセンター内のオペレータ、また在宅オペレータが、関係する各メンバーの在席情報を操作画面上で確認したり、IMで会話したりすることができる。センターにいるスーパーバイザーやオペレータと在宅オペレータが対面で会話できるビデオ通話機能も装備した。

 また、スーパーバイザーなどとWeb画面を共有できる画面共有機能を持ち、IMを使った顧客対応など、在宅オペレータがWeb画面を使って案内している様子を、管理者側は常にチェックできる。これらの機能により、「在宅オペレータがいまどんな状況にあるのか、プレゼンス情報で随時確認できるほか、画面を同期させて顧客対応の内容をチェックすることもできる。必要があればIMやビデオ機能により、社内にいるのと同様の感覚で、随時ストレスなくコミュニケーションが図れる。これは管理者側だけではなく、1人で対応するためストレスを抱え込みがちなオペレータ側にとってもメリットが大きい」(橋本氏)。

写真 IMは業界標準のXMPPプロトコルを採用しているため、専用のゲートウェイを介して、Microsoft Office Communicatorなどとも連携できる。顧客対応に必要なアプリケーションをオペレータが指定しておけば、入電時に自動的にポップアップする機能も持つ

 また、音声のほか、IMや画面共有の履歴もログサーバに残るほか、利用できる機能を管理者側で制限することもできるため、対応品質やセキュリティを担保するうえでも有効だという。

 もちろん、現在もスタッフ間のやりとりにIMを使っているセンターは多いが、IMにはコンタクトセンターシステムとは別の製品を使っているケースが多い。その場合、仮にログを取っても「どの顧客に、どう対応し、どんな問題があったために、IMで会話していたのか」という、そのときの状況とのひも付けが困難であり、ログとして活用しにくいという課題があった。

 その点、「Avaya one-X Agentが電話、IM、ビデオというマルチメディアに対応したメリットの1つは、使い勝手だけではなく、こうした統合的な管理ができる点にもある」(橋本氏)という。

在宅勤務のメリットを引き出せるか否かは、運用で決まる

 なお、テレビ通販の最大手、ジュピターショップチャンネルと、OCNのテクニカルサポートを行っているNTT Comチェオはすでに本製品を導入し、高い効果を上げているという。前者は深夜の0〜2時にコール数がピークを迎える傾向が強く、この時間帯の応答率を高めることで、販売機会損失を低減することが課題となっていた。そこで在宅オペレータを深夜のピーク時にパートタイムで配備することで、人件費、オフィス設備のコスト削減と受注率向上の両立に成功した。

 後者の場合は、テクニカルサポートの一次受付に在宅オペレータを活用するとともに、Avaya one-X Agentの転送機能を生かし、顧客を待たせず、電話の掛け直しをさせることもなく、センターの最適な担当者に速やかにエスカレーションできる体制を整えて顧客満足度を向上させたという。

 また、「ITを活用して自宅で働くテレワーカーの育成」をコンセプトとした実証実験から事業を開始した、いわきテレワークセンターも本製品を採用しており、優れた効用を確認しているという。

写真 在宅勤務制度の豊富な経験・実績を基に、いわきテレワークセンターが整理したテレワークのメリットとデメリット

 東京統括プロデューサー 三浦拓馬氏は、「在宅勤務は、顧客やスタッフ同士でコミュニケーションを図る環境、セキュリティ対策、働く人のサポート体制の3つが成功のポイントとなる。その点、通話品質や各種ログの確実な管理、リアルとバーチャルを組み合わせた管理が求められるが、技術的な要件はすべてクリアしているといえる。あとは運用上の工夫次第で、コスト削減、顧客満足度向上をはじめとする在宅勤務の数々のメリットを十分に引き出せるはずだ」と解説した。

 Avaya one-X Agentの価格は一席当たり約2万円(付加機能により若干変動)。橋本氏は、「ジュピターショップチャンネルのような少数精鋭・ピンポイント(勤務)型、NTT Comチェオのような大規模・常勤型という2つのタイプで、今後利用が進むと思われる。当面は在宅勤務のメリットに対する理解を浸透させつつ、数百席への導入を目指す」と話している。

 

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